院内で患者さんが急に倒れたら。整骨院で確認したい初動と危険サイン
瀬谷崎コラム
倒れた瞬間に、迷わないための準備
整骨院で患者さんが急に倒れる場面は、頻繁にあるものではありません。でも、もし起きた時に何を確認し、何を優先するかを決めておくことは、とても大切です。
院内で患者さんが倒れた時は、まず反応・呼吸・119番・AEDです。拍動や眼瞼結膜などの観察は重要ですが、救命処置や救急要請を遅らせないことが大前提です。
患者さんが院内で急に倒れた。
この場面に出くわす機会は、決して多くありません。
でも、少ないからこそ、起きた時に頭が真っ白になりやすい場面です。
整骨院は病院ではありません。
だからこそ、できることと、すぐに医療へつなぐべきことを分けておく必要があります。

まなぶ先生

瀬谷崎
最初に見るのは、反応と呼吸
患者さんが急に倒れた時、最初に確認するのは反応です。
声をかける。
肩を軽くたたく。
反応がない、または判断に迷う場合は、すぐに周囲へ助けを求めます。
次に、普段どおりの呼吸があるかを確認します。
呼吸がない、普段どおりではない、判断に迷う場合は、心停止の可能性を考えて胸骨圧迫とAEDの準備を優先します。
周囲に危険がないかを確認し、倒れた患者さんとスタッフの安全を確保します。
呼びかけと軽い刺激で反応を確認します。反応がない、または迷う場合はすぐに助けを呼びます。
スタッフが複数いる場合は、119番通報、AED手配、患者対応を分担します。
普段どおりの呼吸があるかを確認します。迷う場合は胸骨圧迫を開始します。
倒れた状況、症状、既往歴、服薬、観察した変化を救急隊へ伝えます。
拍動や眼瞼結膜の確認は重要な観察ですが、反応がない、呼吸が普段どおりでない場合に、119番通報、AED、胸骨圧迫を遅らせてまで行うものではありません。
拍動を見るなら、橈骨動脈と総頚動脈を分けて考える
倒れた患者さんを観察する時、拍動の確認はひとつの情報になります。
橈骨動脈の拍動が触れるか。
総頚動脈の拍動が触れるか。
この違いから、末梢循環や循環状態を考えるきっかけになります。
ただし、拍動の確認には慣れが必要です。
慌てている状況では、触れているのか分からないこともあります。
そのため、拍動の確認に時間をかけすぎて、救命処置や119番通報が遅れるのは避けるべきです。
拍動は「状態を推測するための観察項目」です。救命判断そのものは、反応、呼吸、AEDの指示、救急隊への引き継ぎを優先します。
眼瞼結膜は、全身状態を見る入口になる
眼瞼結膜、つまり下まぶたの裏側の色も、全身状態を見る入口になります。
貧血傾向が強い時は、白っぽく見えることがあります。
一方で、充血が目立つ場合や、血圧低下、強い頭痛、意識障害、嘔吐などがある場合は、出血性の病態や脳卒中などを含めて慎重に見る必要があります。
もちろん、眼瞼結膜だけで何かを診断することはできません。
ただ、救急隊に伝える観察情報としては有用です。
頭を下げればいい、とは限らない
立ちくらみや迷走神経反射のように、一時的な血圧低下や脳血流低下が疑われる場合、横になって安静にすることで回復することがあります。
貧血や失神を疑う時に、頭部を低くしたくなる場面もあります。
ただし、すべての「倒れた人」に同じ対応をしてよいわけではありません。
たとえば、脳出血やくも膜下出血などが疑われる状況で、安易に頭部を下げることが良いとは限りません。
突然の激しい頭痛、ろれつが回らない、片側の手足が動きにくい、顔のゆがみ、嘔吐、強い意識障害がある場合は、脳卒中を疑ってすぐに119番通報します。
「貧血っぽいから頭を下げる」と決め打ちしないことが大切です。原因が分からない時は、無理に動かさず、呼吸が保ちやすい姿勢を確保し、119番で指示を受ける判断が安全です。
脳卒中を疑うサインは見逃さない
院内で急に倒れた場合、脳卒中の可能性も頭に入れておく必要があります。
特に次のようなサインがあれば、ためらわずに119番通報します。
- 顔の片側が下がる、表情が左右で違う
- 片側の腕や脚に力が入りにくい
- ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 突然の激しい頭痛がある
- 嘔吐や強いめまいを伴う
- 急に意識が悪くなった
整骨院では診断はできません。
だからこそ、「これは危ないかもしれない」と判断した時点で、医療につなぐことが重要です。
救急隊に伝える情報を集める
救急要請をした後は、救急隊に渡す情報を整理します。
その場でできる範囲で、次の情報を集めておくと引き継ぎがスムーズです。
- 倒れた時刻、倒れる直前の様子
- 施術中か、待合中か、立位・座位・仰臥位のどこで倒れたか
- 反応の有無、呼吸の状態
- 橈骨動脈・総頚動脈の拍動を確認したか
- 顔色、冷汗、眼瞼結膜、嘔吐、けいれんの有無
- 既往歴、服薬、アレルギー、糖尿病や心疾患、脳血管疾患の有無
- 転倒時に頭を打った可能性
この情報は、救急隊や医療機関にとって重要です。
スタッフが複数いるなら、ひとりは患者対応、ひとりは119番、ひとりは情報整理と役割を分けたいところです。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、施術の技術だけでなく、危険な場面にどう対応するかも大切にしています。
整骨院でできることには限界があります。
だからこそ、救急対応の初動、医療機関へつなぐ判断、スタッフ間の役割分担は普段から確認しておく必要があります。
患者さんが倒れた時に、慌てないこと。
迷ったら医療につなぐこと。
救命処置を遅らせないこと。
ここは、整骨院として最低限持っておきたい姿勢だと思っています。
まれな場面ほど、準備がものを言う
院内で患者さんが急に倒れる場面は、毎日起きるものではありません。
でも、起きた時に適切に動けるかどうかは、普段の準備で決まります。
反応と呼吸を見る。
119番とAEDを手配する。
必要なら胸骨圧迫を始める。
拍動、眼瞼結膜、顔色、冷汗、神経症状などを観察する。
脳卒中や出血リスクを疑う所見があれば、安易に頭部を下げたり、様子を見たりしない。
そして、救急隊へ必要な情報を引き継ぐ。
出くわす機会が少ないからこそ、その時に迷わない準備をしておきたいと思っています。

瀬谷崎
参考
- 日本医師会. 心肺蘇生法の手順.
日本医師会 - 日本救急医学会. 市民のための心肺蘇生.
日本救急医学会 - 日本赤十字社. AED(自動体外式除細動器)を用いた電気ショック.
日本赤十字社 - 日本赤十字社. 脳卒中.
日本赤十字社 - 国立循環器病研究センター. 脳卒中.
国立循環器病研究センター












