整骨院の入口で見落とさない。Red flagと医療機関へつなぐ判断
瀬谷崎コラム
医師の診断がない入口に立つ、という責任
整骨院や鍼灸院には、医療機関を受診する前の患者さんが来ることがあります。だからこそ、見立てより先に「見落とさない」ための最低限が必要です。
柔道整復師や鍼灸師は、理学療法士とは少し立ち位置が違います。
医師の診断を受けた後の患者さんだけを担当するわけではありません。
医療機関を受診する前に、痛みやしびれを訴えて来院される患者さんもいます。
つまり、整骨院や鍼灸院が入口になる場面があります。
だからこそ、Red flagの知識は本当に大事です。
すべての疾患に詳しくなる必要はありません。
でも、患者さんの命に関わるかもしれない最低限の危険サインくらいは、頭に入れておきたいところです。
症状がなかなか改善しない患者さんがいる。
自分の知識や経験では、鑑別しきれない患者さんがいる。
そんな時、整骨院側がやるべきことは、無理に答えを出すことではありません。
必要なら、迷わずドクターの判断を仰ぐ。
医療機関へつなぐ。
これは、臨床家として逃げることではありません。
むしろ、患者さんに不利益を出さないための大切な判断です。

まなぶ先生

瀬谷崎
遭遇しにくいからこそ、知識が抜けやすい
Red flagに関わるような患者さんは、日常的に何人も来るわけではありません。
遭遇する機会が少ない。
経験する機会も少ない。
学ぶ機会も少ない。
その結果、「なんとなく怖い疾患があるのは知っているけど、何を見ればいいかは曖昧」という状態になりやすいです。
ただ、遭遇頻度が少ないことと、知らなくていいことは別です。
頻度は低くても、見逃した時の不利益が大きいものがあります。
だから、詳しく診断名を当てにいく必要はなくても、「これは自分たちだけで抱えるべきではない」と気づける知識は必要です。
Red flagの知識は、疾患名を当てるためではなく、患者さんを安全な場所へつなぐためにあります。詳しくなくても、違和感に気づける最低限は持っておきたいところです。
抱え込んだ分だけ、不利益は患者さんに向かう
症状が改善しないのに、同じ説明と同じ介入を続ける。
「もう少し通えば変わるかもしれません」と言い続ける。
検査や評価で違和感があるのに、見なかったことにする。
こういう状態で一番不利益を受けるのは、患者さんです。
時間を使います。
お金も使います。
不安も長引きます。
そして、最悪の場合、必要な医療機関での確認が遅れることもあります。
「様子を見ましょう」が便利な言葉になっていないか
臨床では、経過を見ることが必要な場面もあります。
ただし、「様子を見ましょう」という言葉は便利です。
便利だからこそ、使い方を間違えると危険です。
経過を見る理由があるのか。
何を基準に再評価するのか。
どの時点で医療機関へつなぐのか。
そこが曖昧なまま「様子を見ましょう」と言っているなら、それは臨床判断ではなく先延ばしです。
- 数回の介入で変化が乏しい
- 症状の経過が説明と合わない
- 痛みやしびれが増悪している
- 日常生活への支障が強くなっている
- 問診や検査で自分の知識では判断しきれない
- 患者さん自身が強い不安を抱えている
こういう時は、抱え込むよりも先に、医療機関での確認を提案した方がいい場面があります。
ドクターに任せることは、負けではない
治療院の現場では、なぜか「自分たちで何とかできること」が価値のように見られることがあります。
もちろん、整骨院でできることはあります。
評価、説明、運動指導、生活の調整、痛みへの教育、外傷への対応。
でも、すべてを自分たちだけで完結させる必要はありません。
画像検査や血液検査、薬の調整、専門的な診断が必要な場面はあります。
そこを無理に自分たちで抱え込むことは、患者さんのためではありません。
ドクターに任せるべきところを任せる。
その上で、整骨院としてできることをやる。
この分担ができる方が、よほど誠実です。
医療機関へつなぐことは、負けではありません。患者さんの安全を優先できないプライドの方が、よほど危ないです。
紹介の判断は、患者さんへの説明まで含めて臨床
医療機関へ行ってください、とだけ伝えると、患者さんは不安になります。
だから、なぜ確認が必要なのかを説明する必要があります。
「こちらで断定できないことがある」
「一度画像や医師の判断を挟んだ方が安全」
「その結果を踏まえて、整骨院でできることを改めて考えたい」
このように伝えるだけでも、患者さんの受け取り方は変わります。
医療機関へつなぐことは、患者さんを手放すことではありません。
安全のために、判断材料を増やすことです。
整骨院の価値は、抱え込むことではなく見極めることにもある
整骨院の価値は、すべての症状を自院で改善することだけではありません。
対応できるものを丁寧に見る。
対応できない可能性があるものを見逃さない。
必要な時に医療機関へつなぐ。
その後、医療機関で大きな問題がないと確認されたら、改めて運動器の問題として支援する。
この流れも、十分に価値のある臨床です。
患者さんにとって大事なのは、整骨院が最後まで抱え込むことではありません。
適切なタイミングで、適切な場所につながることです。

瀬谷崎












