症状が軽くなってきた患者さんを病院に送るとき。紹介の判断と受診の後押し
セラピスト向け
良くなってきたからこそ迷う医療機関への紹介、二つの検討例
施術の対象になっている症状は、たしかに軽くなってきている。それでも医療機関に送るべき場面があります。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで続けて検討された二つの例をもとに、紹介の判断と、受診をどう後押しするかを考えます。
一つ目は20歳女性の例です。施術対象の症状そのものは軽減してきていました。ただ、原因の説明がつかない炎症所見があり、体重減少も伴っています。
検討の結論は明快でした。症状が軽くなっていても、原因不明の炎症所見がある以上は医療機関に紹介する。症状の経過と、説明のつかない所見は、別の問題として扱うという判断です。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎症状の軽快と、原因不明の所見は別の問題として扱う
背景には、検討の場で共有された臨床印象があります。悪性の病気のなかには、良くなったり悪くなったりを繰り返し、経過が読みにくいものがあるという見方です。
そうだとすれば、いま軽快していることは除外の材料になりません。施術の手応えと、危険なものの除外は切り分けて考える必要があります。
症状の軽快は施術方針の材料にはなるが、原因不明の所見を打ち消す根拠にはならない。除外は医療機関の検査の領分で、こちらで完結できない部分は紹介で埋める。
伝えるのは診断名ではなく、確かめたい所見
紹介を決めたあとの課題は伝え方です。がんの可能性といった具体的な病名を口にすれば、確定もできないまま不安だけが患者さんに残ります。検討で挙がった伝え方は、次のような組み立てでした。
- 事実の水準で伝える「うちでは分からない部分があるので、念のため確かめてもらえると安心です」という程度に留め、具体的な鑑別の病名は挙げない。
- 同伴受診も選択肢に持つ一人で行くのが不安そうな患者さんなら、ご家族などと一緒に受診してもらう形も考えられる。
- 病院では聞かれたことに答える診察の場では、質問された内容に答えるのが基本。こちらの推測や不要な情報は足さない。
まなぶ先生
瀬谷崎二つ目の例。軽快が受診の説得力を下げてしまう
二つ目は小児の例で、JIA(若年性特発性関節炎)の疑いを残したまま経過を見ているケースです。かつて使われた若年性関節リウマチという呼び名は、現在は用いられていないそうです。
担当者は年末に保護者と時間を取り、ほかの疾患が背景にある可能性も含めて説明していました。保護者の受け止めは「病院までは」というものでした。その後、学校が休みの期間に安静が保てたこともあり、症状はかなり収まっています。転倒でいったん痛みが増えたものの、以前より軽い水準まで戻りました。
受診が進まない事情も検討で共有されました。以前に通っていた接骨院や整形外科では変わらなかった症状が、いまの施術では変わっている。だからこそ院への信頼と期待がこちらに向いていて、症状が収まっていること自体が、病院に踏み切れない要因になっているという見立てです。
- 症状が収まっているため、受診を勧める根拠が保護者に伝わりにくい
- いまの施術で変化が出ており、期待が院のほうに向いている
- 以前の医療機関で変化がなかった経験が、受診への期待を下げている
検討の結論は経過観察でした。可能性が低いと見ているなら、過度に神経質になることはない。一方で、再び痛みが強まる場面があれば、それは受診を勧めやすい機会になります。実際、もう一度増悪すれば受診してもらえそうだ、という感触も共有されていました。
教子先生
瀬谷崎受診の後押しに使える工夫
検討で挙がった工夫の一つが、信頼できる情報源の記事を印刷して「ご参考までに」と渡すことです。口頭の説明とちがって手元に残り、家庭で読み返してもらえます。それだけでも後押しになるかもしれない、という位置づけでした。
伝え方にも型があります。放っておくと良くない可能性がある、という心配だけを伝えると脅しに寄ってしまう。早く見つかれば予後が良いとされている、というメリットとセットで伝える。そして、何もなければそれはそれで安心が得られる、と添える組み立てです。
放置した場合の心配と、早期に見つかった場合の予後の良さをセットで伝える。何もなければ安心が残る、まで添えると、受診がどちらに転んでも損にならない提案になる。
受診先については、膠原病(こうげんびょう)内科やリウマチの専門医の名前が挙がりました。指定難病は原因不明であることや寛解の難しさが指定の理由であって、鑑別に大掛かりな検査が要るとは限らないため、必ずしも大きな病院でなくても対応できる場合があるのでは、という見方も出ています。
軽快したかどうかと、除外できたかどうかは別の問い
二つの例に共通するのは、症状の経過と除外の判断を切り分ける視点です。良くなってきたという事実は施術の手応えとしては大事ですが、原因不明の所見を消してはくれません。
そして送る理由は、診断名ではなく確かめたい所見で語る。この型に落とすと、患者さんを余計に不安にさせずに済み、紹介の判断そのものもぶれにくくなります。
瀬谷崎





