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リュックを背負うと肩がこる、荷物で強まる首肩こりをどう考えるか。症例をスタッフで検討

荷物で強まる首肩こり、なぜ「肩甲骨の下がり」に着目したのか

1つの症例を、担当した杉生真悟先生(とんとん整骨院 南浦和店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。リュックなどの荷物を持つ時間やデスクワークで強まった首肩のこり。こっている筋肉をもむのでなく、肩甲骨の下がった位置に出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、1ヶ月前から首肩のこりを強く感じるようになった20代の女性。リュックなどの荷物を長時間持っているときや、デスクワークの時間が長くなると症状が強まる状態でした。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:リュックや荷物で強まる首肩のこり、肩甲骨の下がりに着目
今回検討する症例(担当:杉生先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=リュックなどの荷物を長時間持つときや、デスクワークの時間が長くなると強まる首肩のこり(20代・女性)。背景=1ヶ月前から強く感じるように。所見=アライメント評価で肩甲骨の下制(通常より下がった位置)、僧帽筋上部の筋出力低下。とらえ方=荷物の重さで肩甲骨が下へ引き下げられ、首から肩甲骨を支える僧帽筋上部が引き伸ばされたまま働きにくくなり、首肩へ負担が集まっていたと考えた。対応=上腕二頭筋・広背筋への手技、僧帽筋上部の筋力強化。経過=初回の施術後に肩の張り感が軽くなり、6回目には強く感じていた張りが気にならない状態に。現在は姿勢づくりを目的に週1回のペースで継続来院。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

リュックで強まる肩こり、原因は肩甲骨の下がりか

主訴はリュックなどの荷物やデスクワークで強まる首肩のこり。けれど杉生先生は、こっている筋肉をもむことより、肩甲骨が下がった位置に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

杉生先生杉生先生

主訴はリュックなどの荷物を持つ時間や、デスクワークで強まる首肩のこりでした。アライメントを評価すると、肩甲骨が通常より下がった位置(下制)で止まっていました。リュックの重さは、肩ひもを通じて肩甲骨を下へ引き下げる方向にかかり続けます。首から肩甲骨をつなぐ僧帽筋上部が引き伸ばされたまま働きにくくなっていて、こっている筋肉そのものより、肩甲骨の下がった位置に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

リュックで肩がこる、という方はとても多いですよね。同じように荷物を持っていても、強く出る人とそうでない人がいるのはなぜですか。

杉生先生杉生先生

肩甲骨の位置と、支える筋肉の状態の差が大きいと考えています。この方は肩甲骨が下がった位置のまま、僧帽筋上部がうまく働けない状態でした。働けない筋肉が荷物の重さを受け続ければ、こりや張りとして残ります。デスクワークの時間が長い日にも強まるという訴えとも一致しました。

僧帽筋上部は、ゆるめるのか鍛えるのか

肩こりの筋肉として知られる僧帽筋を、今回はむしろ鍛えました。教子先生が、先に確認すべきサインとあわせて尋ねました。

教子先生教子先生

肩こりというと僧帽筋をもみほぐすイメージが強いですが、今回は鍛える判断でしたよね。その前に、手や腕のしびれ・力の入りにくさ、経験のない強い頭痛といった、先に医療機関で確かめたいサインは外せていましたか。

杉生先生杉生先生

そこは確認しました。しびれや力の入りにくさ、強い頭痛はなく、症状は荷物を持つ時間とデスクワークに伴って変わるこり・張りでした。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。そのうえで、この方の僧帽筋上部は「縮んで硬い」のではなく「引き伸ばされて働けない」状態だったので、もみほぐすのではなく、肩甲骨を引き下げる側の腕や背中の筋肉をゆるめて、僧帽筋上部は鍛える判断をしました。

瀬谷崎瀬谷崎

僧帽筋上部は肩こりの犯人のように扱われがちですが、肩甲骨が下がっている方では、引き伸ばされて悲鳴を上げている側のこともあるんですよね。同じ肩こりでも、ゆるめる対象と鍛える対象は評価で入れ替わる。型を当てはめず、所見から決めたのは妥当だと思います。

荷物のある毎日を続けながら、こりを軽くする介入と経過

通勤や通学でリュックを手放す、という選択肢は現実的ではありません。荷物のある生活を前提にした進め方を確かめました。

まなぶ先生まなぶ先生

リュックは手放せない方がほとんどですよね。荷物を持つ生活のまま、どう進めたんですか。

杉生先生杉生先生

荷物を持つときに働く上腕二頭筋と、肩甲骨を下へ引く広背筋をゆるめて、肩甲骨が引き下げられにくい状態をつくりながら、僧帽筋上部の筋力強化を進めました。初回のあとに肩の張り感が軽くなり、6回目には強く感じていた張りが気にならない状態になっています。いまは姿勢づくりを目的に、週1回のペースで続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

荷物という負担そのものは消せない以上、受け止める側を育てて分担を変えるのが現実的なんですよね。6回で張りが気にならない状態まで来た経過も、その方向を支持しています。肩ひもの長さを調整して体の近くで背負うといった工夫もあわせて、支える力を保っていきたいところです。

考察:肩甲骨の下がりからとらえる、荷物で強まる首肩こり

所見という事実(肩甲骨の下制・僧帽筋上部の筋出力低下)と、経過という結果(6回目には強く感じていた張りが気にならない状態になったこと)。この両方が、「こっている筋肉をもむのでなく、肩甲骨の下がった位置に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。荷物の重さは肩甲骨を下へ引き続け、引き伸ばされた筋肉は働きにくくなる。急いで受診すべきサインを外したうえで、ゆるめる対象と鍛える対象を評価で見分ける。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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