前かがみで腰が痛いのに、施術はアキレス腱から?屈曲型腰痛への3つのアプローチ
症状コラム
前屈の腰痛に、腰から離れた3つのアプローチ
顔を洗うとき、靴下をはくとき、床の物を拾うとき。前かがみになった瞬間に腰が痛む。このタイプの腰痛(屈曲型腰痛、くっきょくがたようつう)に対して、とんとんでは腰そのものを揉む前に、アキレス腱・お尻の筋肉・股関節の動きから手をつけることがあります。なぜ腰から離れた場所なのか、実演動画とあわせて説明します。
前にかがむと腰が痛い。この訴えは、施術の現場でとてもよく出会います。そして意外に思われるのですが、こうした腰痛では、腰から離れた場所への施術で前屈のしやすさが変わることが少なくありません。今回は、とんとんで実際に使っている代表的な3つのアプローチを取り上げます。
前屈で痛む腰痛への3つのアプローチの実演(施術者向け)。ご自身では無理に行わないでください。
前屈で痛む腰痛(屈曲型腰痛)とは?
腰痛は、どの動きで痛むかによって大きくタイプが分かれます。前に曲げると痛むのが屈曲型、後ろに反らすと痛むのが伸展型(しんてんがた)。同じ「腰痛」でも、タイプが違えば合うアプローチも変わります。
そして前屈という動きは、腰だけの動きではありません。腰の骨(腰椎、ようつい)が丸くなるのと同時に、骨盤が前に倒れ、股関節が曲がり、太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)やふくらはぎが伸ばされます。足首から腰までがひとつながりに働いて、はじめて指先が床へ向かいます。どこかの動きが硬いと、そのぶんを他の場所、多くは腰が余計に引き受けることになります。腰痛のタイプをどう見分けるかは、骨盤誘導テストの記事で詳しく説明しています。
「腰が痛いんだから、腰を揉んでほしい」の前に
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎アプローチ1。アキレス腱まわりをしっかりほぐす
ひとつ目は、アキレス腱へのアプローチです。前屈では体の後ろ側、ふくらはぎ・太ももの裏・背中がまとめて伸ばされます。この後ろ側のつながりのいちばん下にあるのがアキレス腱です。ここが硬いと、前屈のたびに後ろ側全体が突っ張り、腰にも負担が回ってきます。
施術では、うつ伏せで足首を少し反らせた姿勢を作り、アキレス腱を指で挟んで、「少し痛いかな」と感じるくらいのしっかりした圧で、かかとの付け根あたりまで動かしながらほぐします。皮膚を軽く撫でる程度では変化が出にくく、数分のアプローチで前屈のしやすさが変わる方もいます。
まなぶ先生
瀬谷崎アプローチ2。お尻の筋肉に力を入れてもらう運動
ふたつ目は、お尻の大きな筋肉(大殿筋、だいでんきん)と、背骨を支える深い筋肉(多裂筋、たれつきん)に、ねらって力を入れてもらう運動です。手順には工夫があります。
- うつ伏せで膝を曲げます。太ももの裏の筋肉が縮んだ状態になり、この運動で余計に働かないようにするための下準備です。
- 足の向きを少し外側にひねります。大殿筋は少しねじれて付いている筋肉なので、その走行に合わせるためです。
- その姿勢から、足をゆっくり上へ持ち上げてもらいます。施術者が手を添えて、持ち上げを補助します。
- ゆっくり上げてゆっくり下ろす。これを左右10回ずつほど繰り返します。
お尻と背骨まわりの筋肉がしっかり働くと、患部のまわりの血流や筋肉の活動が促され、痛みがやわらぐことが期待できます。運動というと「家でやる宿題」のイメージがありますが、この運動はその場で前屈が変わることもあり、施術の柱のひとつになります。
ひとつ注意があります。この運動には腰を反らす動きが入るため、反らすと痛む伸展型の腰痛の方には向きません。前屈で痛むタイプなら、腰が多少反っても問題になりにくいのです。同じ運動でも、タイプの見極めが先に来る理由がここにあります。
アプローチ3。骨盤の動きを手伝いながら、実際に前屈してもらう
みっつ目は、股関節の動きが硬く、その代わりに腰を丸めすぎて痛みが出ているタイプへのアプローチです。マリガンコンセプトという徒手療法の考え方をもとにしています。
立った姿勢で前屈してもらいながら、施術者が後ろから骨盤に手を添え、骨盤が前に倒れる動き(前傾、ぜんけい)を手伝います。骨盤がきちんと前に倒れると、腰を丸めすぎずに前屈できるため、痛みが減った状態、あるいは痛みのない状態で前かがみになれることがあります。痛みのない範囲で5回ほど繰り返し、届く深さを少しずつ広げていきます。途中で痛みが出るときは無理をせず、いける所で止めて戻します。
このアプローチの良いところは、施術を受けるだけでなく、患者さん自身が動くことです。「さっきまで怖かった前屈が、意外とできた」という体験は、痛みへの不安をやわらげ、日常の動きへの安心感につながります。肩の痛みでも同じ考え方を使うことがあり、肩のマリガンコンセプトの記事で紹介しています。
ひとつ施術するたびに、前屈を確かめる理由
教子先生
瀬谷崎今回の3つのアプローチは、いずれも強い力で関節を動かすものではなく、体への負担が少ない方法です。それでも、合う合わないは必ずあります。だからこそ、一手ごとに動きを確かめながら進めます。
自分でできること・気をつけること
家では、無理のない範囲で次のことを意識してみてください。
- 痛みが出る前かがみを、我慢して何度も繰り返さない
- 動画の手技(アキレス腱への強い圧や骨盤の誘導)を、自分や家族に見よう見まねで行わない
- ふくらはぎや足首を、痛みのない範囲で軽く動かしておく
- 長時間の座りっぱなしを避け、こまめに立ち上がる
セルフケアは「痛みが増えない範囲」が目安です。痛みが強まるなら中止してください。これらで必ず良くなると約束するものではなく、合わない場合もあります。
こんなときは医療機関へ
・脚のしびれや、力の入りにくさを伴う
・安静にしていてもズキズキ痛む、夜間に痛みで目が覚める
・転倒や強くぶつけたあとに急に出た痛み
・発熱や、思い当たらない体重減少を伴う
・排尿や排便の感覚がいつもと違う
こうしたサインがあるときは、自己判断せず、整形外科などの医療機関にご相談ください。骨や神経、内科的な問題が隠れていることもあります。
瀬谷崎





