良くなっては戻る肩をどこまで施術で追うか。リウマチを疑う条件と内科紹介の作法
セラピスト向け
単関節だけの肩痛と、内科に送る分岐点
施術をすると可動域が大きく戻るのに、数日でまた元に戻る。そんな波のある肩を、施術を続けながらどの時点で内科疾患の除外に回すか。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に挙がった相談をもとに、リウマチ(関節リウマチ)を疑う条件と紹介の作法を検討します。
相談を持ち込んだのは参加院の先生です。40代の患者さんの左肩で、初回来院時は別の主訴でしたが、確認していくと腕を内側にひねって挙げる動きの可動域が下がっていることが分かり、そこへの施術を週1回続けて経過は良好でした。
ところが通院間隔が空いた後、夏になって症状が急に増え、外転も挙上も90度までしか行かなくなります。肩甲骨まわりのアライメント(骨の配列)に働きかける施術をするとその場で150度から160度まで上がるのに、2、3日後にはまた元に戻る。
この往復を続けていたところ、直近ではこれまでにないほど症状が強く、施術しても変わらなくなった。ここで先生が挙げたのが「肩そのものの問題に加えて、内科的な問題も考えられるのか」という問いでした。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎施術直後に自動運動で上がる。この所見が消してくれる候補
検討の起点になったのは、施術をするとその場で自動運動の挙上が大きく改善するという所見でした。肩甲骨の代償ではなく、腕そのものが上がるようになる。これは腱板断裂の典型像とは一致しにくい所見です。この所見と経過から、候補は次のように動きます。
- 施術で可動域が変わることから、四十肩・五十肩(凍結肩)の疑いは薄められる。相談した先生自身の見方で、検討でも同じ見方になった
- 年齢も40代で、変性による断裂を強く疑う年代より若い
- 明確な受傷のきっかけがなく徐々に悪化してきた経過と、夜間痛や熱感がないことから、肩峰下滑液包炎のような病態は候補に残る
凍結肩や滑液包炎そのものの見分け方は、癒着性肩峰下滑液包炎と凍結肩の鑑別と凍結肩の3タイプ分類で詳しく扱っているので、ここでは深追いしません。この記事の主題は、そうした筋骨格系の候補を検討しながら、並行して内科疾患の可能性をどう扱うかです。
単関節だけなら、リウマチの優先順位は一般的に低い
内科的な問題として最初に名前が挙がったのはリウマチでした。回答はシンプルで、リウマチはある程度複数の関節に症状が出るものなので、単関節、つまり一つの関節だけの症状では、一般的に選択肢として前に出てこないというものです。
このケースでは症状は左肩だけで、指も他の関節も問題なく、朝のこわばりもない。熱感もなく、寝返りで痛むことはあっても痛みで目が覚めるほどの夜間痛はない。現時点でリウマチらしさを支える所見はほぼ無い、というのがその場の結論でした。
ただしこの結論には続きがあります。もしこの先、膝も痛い、反対の肩も痛い、股関節も痛い、指がこわばるといった変化が出てきたら、リウマチの可能性は急に上がる。
肩以外の関節に痛みが広がっていないか。朝のこわばりが出ていないか。どちらかが出たら、リウマチを含む内科疾患の優先順位が一段上がったと考えて対応を切り替えます。
つまり「今は低い」は固定された評価ではなく、他関節への拡大と朝のこわばりという2つの変化が出た瞬間に書き換わる、暫定の評価だということです。だからこそ、施術を続けながら毎回の問診でこの2点を確認し続けることが、内科除外に回す時機を計る実務になります。
内科疾患を疑ったら、紹介状の宛先は内科
もう一つ実務的な論点が、紹介先です。肩の症状だとつい整形外科に送りたくなりますが、リウマチのような内科疾患を疑って評価を求めるのであれば、紹介状の宛先は整形外科ではなく内科が適切です。
何を除外してほしいのかによって、送り先が変わる。このケースでは、患者さんに肩とは別に皮膚の症状があって免疫系の内服治療が始まっていた背景もあり、全身の状態も含めて内科側で診てもらう意味がありました。
私たちにできるのは診断ではなく、疑いの根拠を添えて適切な科につなぐことまでです。紹介を要する所見の見つけ方は実例で学ぶレッドフラッグ(危険信号)でも扱っています。
- 施術直後に自動運動で挙上が大きく改善する所見は、腱板断裂の典型像と一致しにくい
- 明確な受傷起点がなく徐々に悪化、夜間痛・熱感なしなら滑液包炎も候補に残す
- 単関節だけの症状なら、リウマチの可能性は一般的に低い
- 他関節への拡大と朝のこわばりが出たら、リウマチの可能性は急に上がる
- この2点は初診で終わりにせず、毎回の問診で確認し続ける
- 内科疾患の除外を求める紹介状は、整形外科ではなく内科宛にする
「今は低い」を毎回の問診で更新し続ける
波のある肩の難しさは、施術で良くなる実感が続くほど、鑑別の再検討が後回しになりやすいところにあります。今回の検討が示した軸は、施術を続けること自体は否定せず、その間ずっと「リウマチらしさを上げる変化が出ていないか」を問診で追い続けること。そして疑いが立ったら、除外してほしい内容に合わせて内科へ送ることでした。
単関節だから低い、という評価は問診1回ごとに更新される仮のものです。仮のまま持ち続ける胆力と、書き換わった瞬間に動く速さの両方が要ります。
別の回では、原因が分からない肩を病院に送る判断も話題になりました。挙がった目安は、紹介が生きるのは「腱板断裂などの疑いを検査で除外しきれないとき」と「見立てが全く立たないとき」の2つ。
凍結肩でほぼ説明がつくのに念のためで送るのは、患者に検査の負担だけが残りやすいという見解です。
症状と関係のない偶発所見が見つかって話が複雑になることもあるため、送るなら「何を確かめてほしいのか」を決めてから、という判断の順序が共有されました。
瀬谷崎




