凍結肩とよく似る癒着性肩峰下滑液包炎。痛みの経過と圧痛の範囲で見分ける
セラピスト向け
よく似た2つの肩を、経過と圧痛で分ける
凍結肩の拘縮期と、癒着性肩峰下滑液包炎(ゆちゃくせいけんぽうかかつえきほうえん)は、夜間痛も可動域制限もよく似た形で出てきます。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に出た「違いがいまいちわからない」という相談をもとに、経過・圧痛・誘発テスト・制限の方向という4つの視点で見分けます。
相談のもとになったのは、肩関節の可動域制限と夜間痛を訴える患者さんについて、凍結肩の拘縮期なのか、癒着性肩峰下滑液包炎なのか判断に迷う、という質問でした。どちらも特徴的な臨床所見がほとんど重なるため、症状の並びだけを見ていると、どちらとも言い切れない場面が出てきます。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎似ている理由|共通する臨床像
両者は初診時の症状だけを並べると見分けがつきにくい組み合わせです。共通しやすい所見は次のとおりです。
- 肩の可動域制限
- 夜間痛
- 安静時痛
特に凍結肩が炎症期から拘縮期へ移っていく時期は、癒着性肩峰下滑液包炎ともっとも紛らわしくなるタイミングとされています。
以前はかなり痛かったが今は落ち着いていて肩が上がらない、という経過であれば、むしろ典型的な凍結肩の所見として判断しやすいほうです。判断に迷うのは、痛みの強さが変わりきらないまま可動域制限が進んでいく途中経過のケースです。
鑑別点1|痛みの経過をステージで追う
凍結肩は炎症期でいったん痛みが強まり、拘縮期に入ると安静時痛がやわらいでいく経過をたどります。動かせば痛むものの、可動域の範囲内に戻せば楽になる、という状態です。一方、癒着性肩峰下滑液包炎は痛みが強い状態のまま拘縮していく傾向があり、安静時痛が引きにくいまま可動域制限が進みます。
「痛みが落ち着いてきたのに、肩が上がらなくなってきた」という経過は、凍結肩の拘縮期らしい変化です。
「ずっと痛いまま、動きも悪くなってきた」という経過は、癒着性肩峰下滑液包炎に近い変化です。
鑑別点2|圧痛の範囲で絞り込む
肩峰下に限局した圧痛があるかどうかも判断材料になります。癒着性肩峰下滑液包炎では肩峰下に圧痛が出やすいのに対し、凍結肩は肩峰下に限らず、肩関節周囲の広い範囲に圧痛が及びやすい傾向があります。圧痛だけで確定はできませんが、範囲の広さは経過・テストと合わせて見る材料になります。
鑑別点3|誘発テストで確認できるかどうか
ホーキンステスト・棘上筋テスト・ペインフルアークサインも参考になりますが、可動域制限が強い凍結肩ではそもそもテストの肢位まで動かせず、陽性か陰性かの判断がしづらくなります。
癒着性肩峰下滑液包炎は可動域制限がそこまで強くない場合、これらのテストを最後まで確認できることがあり、その分所見として使いやすくなります。
癒着性肩峰下滑液包炎でも可動域が途中までしか上がらないケースはあり、その場合はペインフルアークサインも確認しきれません。テストが最後まで確認できたかどうか自体が、1つの手がかりになります。
鑑別点4|制限の方向を見る
凍結肩は挙上・外転だけでなく、伸展や内転方向にも可動域制限が及びやすいのに対し、癒着性肩峰下滑液包炎はそこまで強い制限が出にくい印象があります。伸展方向の可動域を確認しておくと、判断材料がもう1つ増えます。
運動療法の進め方は、ここで大きく分かれます。癒着性肩峰下滑液包炎であれば可動域内での剥離操作を進めたほうが改善に向かいやすく、凍結肩の炎症期であれば避けたい介入です。
経過・圧痛・テスト・制限方向をそろえても判断がつかない場合は、どちらか近いほうに一旦仮決めして介入しつつ、経過で見極めていく進め方になります。
検査的介入と経過観察、患者さんへの事前説明
- 痛みの出方を確かめる動かしている最中は痛むものの、元の肢位に戻せば楽になる程度であれば、可動域内での剥離操作を進めても問題になりにくいとされています。
- 方向を選んで可動域を出す挙上・屈曲・外転方向の動作は控えめにし、伸展・内転方向から可動域を出していきます。
- 経過で見立てを確かめ直す並行して症状の変化を見ながら、どちらの病態に近いかを都度確かめ直していきます。
見立てが途中で変わる可能性があることは、患者さんにも先に伝えておくと安心材料になります。
「今のところこの見立てで施術を続けますが、こういう症状が出てきたら別の病態も考えて進め方を変えます」と、経過観察込みで説明しておくと、後から見立てが変わっても患者さんの不安は少なく済みます。凍結肩は経過が長くなりやすい病態なので、事前の説明はいっそう効いてきます。
- 夜間痛・可動域制限は共通、症状の並びだけで判断しない
- 安静時痛が経過とともにやわらぐか、痛みが持続したまま拘縮するかを見る
- 肩峰下の限局した圧痛か、周囲の広い範囲の圧痛かを確認する
- ホーキンステスト・棘上筋テスト・ペインフルアークサインが最後まで確認できるかを見る
- 伸展・内転方向の制限の強さを比較する
- 判断がつかない場合は近いほうに仮決めし、検査的介入をしながら経過で見極める
- 見立てが変わる可能性を、施術前に患者さんへ伝えておく
見分けにくさを前提に、経過で判断していく
凍結肩の拘縮期と癒着性肩峰下滑液包炎は、臨床所見が重なるからこそ、症状の並びだけで判断名を確定させようとすると迷いやすくなります。経過・圧痛・誘発テスト・制限の方向という複数の視点を重ねて近いほうに仮決めし、介入しながら経過で確かめていく。
見立てが変わる可能性も含めて患者さんに共有しておくことで、判断が動いても施術の一貫性は保てます。
瀬谷崎別の回では、こんな相談もありました。細身の女性で、右肩の石灰沈着性腱板炎の治療後2〜3週間で左肩にも違和感が出て、1〜2か月のうちに自動・他動とも挙上が90度ほどで止まる拘縮に進んだ例です。
夜間痛や急激な強い痛みがなく、石灰化に典型的な経過とは合わない。緩やかな進み方と、施術後に一時的に楽になる反応から、腱板や肩峰下滑液包の癒着が進んだ制限と考えて、癒着へのアプローチと温熱で反応を見る方針が示されました。
温熱や超音波で可動域が変わるかどうかも、癒着性かどうかを推し量る手がかりになります。




