中高年の肩痛を凍結肩だけで見ない。腱板断裂・石灰性腱炎・肩甲胸郭の動きから考える

肩が痛い理由を、ひとつに決めすぎない

中高年の肩痛では、凍結肩、腱板断裂、石灰性腱炎などが似た症状を出すことがあります。さらに凍結肩らしく見えても、肩甲骨や肋骨の動きが大きく関わるタイプもあります。

この記事の結論

肩が痛い、夜に痛い、腕が上がらない。それだけで凍結肩と決めるのは早いです。

疾患の入口を分けたうえで、肩甲胸郭の動きとGH関節の求心性まで見ていく必要があります。

中高年の肩関節痛では、似たような症状が重なります。

安静時痛がある。夜間痛がある。腕を上げると痛い。可動域が落ちている。

このあたりは、凍結肩でも、腱板断裂でも、石灰性腱炎でも見られることがあります。

だからこそ、「五十肩っぽい」「腱板っぽい」と雰囲気だけで決めるのは危険です。

まずは、発症の仕方、痛みの部位、受傷機転、可動域制限の出方を分けて見ます。

まなぶ先生
まなぶ先生

中高年の肩痛って、夜間痛があるとすぐ凍結肩っぽく見えてしまいます。

瀬谷崎
瀬谷崎

夜間痛だけでは決まりません。腱板断裂、石灰性腱炎、凍結肩は似た臨床症状を出すので、発症の仕方や痛みの場所も見たいですね。

中高年の肩痛で最初に分けたいこと

まず見たいのは、外傷性か、急性発症か、徐々に悪くなったのかです。

外傷性の腱板断裂なら、転倒や引っ張られた、重いものを持ったなどの受傷機転が手がかりになります。

石灰性腱炎は、明らかな機転がないまま急に強い痛みとして出ることがあります。

凍結肩では、肩全体の痛みや、他動運動も含めた可動域制限が目立つことがあります。

腱板断裂

外傷性であれば受傷機転を確認します。上腕外側の痛みや挙上困難、筋力低下も手がかりになります。

石灰性腱炎

明らかな機転がなく、急に強い痛みが出ることがあります。画像での確認が必要になる場面もあります。

凍結肩

肩全体の痛み、強い夜間痛、他動可動域制限、外旋制限などを総合的に見ます。

これらはあくまで入口です。

症状だけで確定するのではなく、問診、可動域、抵抗運動、圧痛、必要に応じた医療機関での画像評価を合わせて考えます。

凍結肩でも、肩甲骨と肋骨を見るタイプがある

凍結肩では、GH関節、つまり肩甲上腕関節の可動域制限に目が向きやすくなります。

もちろんそれは重要です。

ただ、臨床では肩甲骨や肋骨、胸椎側の動きが強く関わっているように見えるタイプもあります。

投稿では「肩甲骨・肋骨(後方)タイプ」として整理されています。

このタイプでは、肩そのものだけでなく、肩甲胸郭の動きや胸椎周囲の圧痛を合わせて見る必要があります。

  • 胸椎棘突起に圧痛がある
  • 肩甲骨の下制が制限される
  • 肩甲骨の下方回旋が制限される
  • 肩甲骨の内転が制限される
  • 肩甲骨の後傾が制限される
  • 肩甲下筋や小円筋に圧痛・硬結がある

こうした所見がある場合、肩甲骨のROM低下によって、GH関節の求心位を維持しにくくなる可能性があります。

その結果、肩関節周囲に余計なストレスがかかり、炎症や疼痛が続きやすくなると考えられます。

このようなタイプは、単にGH関節を動かすだけでは反応が悪いことがあります。

臨床での見方

凍結肩らしい可動域制限があっても、肩甲骨と胸郭の動きが強く制限されている場合は、肩甲胸郭の評価と介入を組み込む必要があります。

肩甲骨の動きが落ちると、GH関節は安定しにくい

肩関節の動きは、GH関節だけで完結しません。

肩甲骨、鎖骨、胸郭、肋骨の動きが組み合わさって、腕の挙上や回旋が成立します。

肩甲骨の後傾、上方回旋、外旋などがうまく出ないと、上腕骨頭と関節窩の位置関係が崩れやすくなります。

結果として、ローテーターカフが求心性を維持しにくくなったり、関節包や滑液包周囲にストレスが増えたりすることがあります。

  1. 肩甲骨の動きが落ちる胸椎や肋骨、肩甲骨周囲筋の影響で、肩甲胸郭の可動性が低下します。
  2. 関節窩の向きが変わりにくい腕を上げる時に、肩甲骨が上腕骨頭を受ける位置へ動きにくくなります。
  3. GH関節の求心性が落ちる上腕骨頭を関節窩の中心に保ちにくくなり、周囲組織への負荷が増えます。
  4. 痛みと防御が続く痛み、筋緊張、防御的な動きが続き、さらに可動域が落ちることがあります。

肩甲骨の動きは、原因にも結果にもなり得ます。

だから「肩甲骨が悪い」と単純化するのではなく、GH関節、肩甲胸郭、胸椎、肋骨のどこが主に制限しているのかを見ます。

肩関節の滑り運動は、凹凸の法則だけでは扱いにくい

肩関節の滑り運動を考える時、凹凸の法則だけで処理したくなることがあります。

しかし肩関節は、周囲の筋、靱帯、関節包、肩甲骨の位置の影響を強く受けます。

そのため、教科書的な凹凸の法則だけで「この方向へ滑らせればいい」と決めるのは慎重でありたいところです。

投稿では、肩関節の滑り運動として以下のような整理がされています。

  • 屈曲:後方滑り
  • 伸展:後方滑り
  • 外転:前方滑り
  • 内転:上方滑り
  • 外旋:後方滑り
  • 内旋:前方滑り
  • 水平屈曲:後方滑り
  • 水平伸展:前方滑り

ここで重要なのは、丸暗記ではありません。

肩関節では、動作中に上腕骨頭が関節窩内でどのように位置を保つか、つまりObligate translationをイメージすることが大切です。

関節包や靱帯の張力、ローテーターカフの収縮、肩甲骨の位置によって、同じ挙上でも必要な滑りや制御は変わります。

まなぶ先生
まなぶ先生

凹凸の法則だけで、肩の滑りを決めるのは雑なんですね。

瀬谷崎
瀬谷崎

肩は特にそうですね。筋や靱帯、肩甲骨の影響が大きいので、関節の滑りだけを単独で考えるより、求心位をどう保つかまで見たいです。

介入は、肩だけで完結させない

中高年の肩痛では、まず疾患の入口を分ける。

凍結肩らしいなら、病期と痛みの強さを確認する。

さらに、肩甲骨や肋骨、胸椎の動きを見る。

GH関節の滑りや求心性を確認する。

この順番で考えると、介入は「肩を動かす」「肩を揉む」だけではなくなります。

  • 急性発症か、外傷性か、徐々に悪化したかを分ける
  • 肩全体の痛みか、上腕外側痛か、局所痛かを見る
  • 自動運動と他動運動の両方で可動域を確認する
  • 肩甲骨の下制、内転、後傾、回旋を確認する
  • 胸椎・肋骨後方の圧痛や動きを確認する
  • GH関節の求心位を保てるかを見る

凍結肩の中にも、GH関節を中心に見た方がよいケースと、肩甲胸郭から入った方がよいケースがあります。

同じ「肩が上がらない」でも、どこで止まっているのかは違います。

そこを見分けることが、リハビリの反応を左右します。

肩の痛みは、肩関節だけで見ない

中高年の肩痛では、腱板断裂、凍結肩、石灰性腱炎などをまず頭に置きます。

安静時痛や夜間痛が似ていても、発症の仕方や痛みの部位、可動域制限の出方で見え方は変わります。

さらに凍結肩らしく見える場合でも、肩甲骨や肋骨、胸椎の動きが大きく関わるタイプがあります。

GH関節だけを動かす。

肩だけを揉む。

凹凸の法則だけで滑りを決める。

そうした単純化だけでは、見落とすものがあります。

肩の痛みを見るなら、疾患の鑑別、肩甲胸郭の動き、GH関節の求心性を合わせて見る。

その方が、肩の臨床はかなり丁寧になります。

瀬谷崎
瀬谷崎

肩が痛いから肩だけを見る、凍結肩っぽいから可動域だけを見る。それだと足りないことがあります。肩甲骨、肋骨、胸椎、GH関節の求心性まで見て、ようやく介入の方向が見えてきます。

参考資料

読みもの

瀬谷崎コラム

施術・検査の解説

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