座っているとお尻が痛い、動きでは変わらない痛みをどう考えるか。症例をスタッフで検討

座位で出るお尻の痛み、なぜ「太もも裏の付け根への刺激」に着目したのか

1つの症例を、担当した鈴木英二先生(とんとん整骨院 東武練馬店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。体を動かしても痛みは変わらないのに、座っている時間に応じて出てくるお尻の痛み。関節や筋肉の動きではなく、座面から受け続ける刺激に出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、半年前から右のお尻の痛みが続いていた20代の男性。30分から1時間座っていると痛みやしびれのような感覚が出て、椅子の種類によって出かたが変わっていた、という症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:座位で出るお尻の痛み、太もも裏の付け根への刺激に着目
今回検討する症例(担当:鈴木先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=30分〜1時間の座位で出てくる、右のお尻の痛み・しびれのような感覚(20代・男性)。背景=半年前から続き、椅子の種類によって症状が出るまでの時間に差があったが、だんだんどの椅子でも変わらなくなってきた。所見=動作による痛みの増減はなし。座面にあたる坐骨部への持続的な刺激と、太もも裏の筋肉(ハムストリングス)の付着部への負担。とらえ方=動きの問題ではなく、座位で坐骨部に集まり続ける刺激が、太もも裏の付着部に負担を集めていたと考えた。対応=ハムストリングス付着部への超音波治療、状態に合わせた段階的なストレッチ・モビライゼーション。経過=午前中は座っていられるようになり、症状の感じ方は半分以下に。11回目以降は痛みをほとんど感じなくなり、月1回程度の再発予防へ移行。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

動きで変わらない痛み、原因は座面からの刺激か

検査で動いてもらっても、痛みが増えも減りもしない。評価に迷いやすい所見ですが、鈴木先生はそこを手がかりにしました。その根拠を確かめます。

鈴木先生鈴木先生

動診では痛みの増減がありませんでした。ここで行き詰まるのでなく、逆に手がかりだと考えました。動きで変わらず、座っている時間と椅子の固さで変わる。つまり関節や筋肉の動きの問題ではなく、座面から受け続ける刺激の問題ではないか。座って体重がかかる坐骨のまわりには、太もも裏の筋肉の付け根があります。そこへの持続的な刺激と整理しました。

まなぶ先生まなぶ先生

動診で出ない痛みは評価に迷いますよね。お尻の痛みとしびれ感なら、梨状筋のような深いところの筋肉や、神経由来との見分けはどう付けたのですか。

鈴木先生鈴木先生

症状の場所が坐骨部、つまり座面にあたる部分に限られていて、脚へ広がる放散はありませんでした。神経の伸長で強く出る様子もなく、股関節を動かしても変わらない。一方で、座っている時間にきれいに比例して出てくる。この分布と出かたから、神経の圧迫や深い筋肉の問題より、付着部への持続刺激が最も所見と合うと考えました。

しびれのような感覚、確認しておくべきサイン

しびれという言葉が出てくる症例なので、確かめておくべきことがあります。そこを確認します。

教子先生教子先生

しびれのような感覚があったんですよね。しびれがお尻から脚へ広がっていく、力が入りにくい、安静にしていても強く痛む、夜間に目が覚める、排尿や排便のしにくさがある。こうした急いで医療機関で確かめるべきサインは外せていましたか。

鈴木先生鈴木先生

そこは確認しました。しびれのような感覚は座っている間だけで、場所も坐骨部に限られていました。脚への広がりや力の入りにくさ、安静時や夜間の痛みはありません。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめたうえで、刺激への対応に絞りました。

瀬谷崎瀬谷崎

圧迫を受けている場所だけに出る感覚と、神経の通り道に沿って広がっていく症状は、分けて見る必要がありますよね。広がる場合は腰や神経の評価が先になる。危険なものを外したうえで、座面からの刺激という一番シンプルな仮説に絞る。順序として妥当だと思います。

刺激に耐えられる状態へ、段階的に進めた介入

強く伸ばして早く変える、という進め方をあえてしなかったのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

超音波と、段階的なストレッチという組み合わせでしたね。最初から強く伸ばさなかったのはなぜですか。

鈴木先生鈴木先生

刺激に敏感になっている付着部を最初から強く伸ばすと、それ自体が新しい刺激になって、かえって症状が出やすいからです。超音波で組織の状態を整えながら、伸ばす強さを段階的に上げていきました。経過も、まず午前中は座れるようになり、感じ方が半分以下になり、来院の間隔を10日前後に空けても保てるようになって、11回目以降はほとんど感じなくなる、という順でした。

瀬谷崎瀬谷崎

座る時間はゼロにできないので、刺激を完全に避けるのではなく、組織が刺激に耐えられる量を段階的に上げていく、という発想なんですよね。こまめに立つ、座面を工夫するといった環境側の調整と組み合わせているのも現実的です。経過もその方向を支持しています。ただ経過には個人差があるので、戻りが出たときは段階を一つ戻す前提で見ていきたいところです。

考察:座面からの持続的な刺激としてとらえる、座位で出るお尻の痛み

所見という事実(動作による痛みの増減がないこと・坐骨部に限局した症状・座っている時間に応じた出現)と、経過という結果(座れる時間が伸び、症状の感じ方が半分以下になり、痛みをほとんど感じなくなったこと)。この両方が、「動きの問題でなく、座面から受け続ける刺激に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。動きで変わらない痛みは、評価の手がかりが少なく見えますが、いつ・どこで・どれくらいの時間で出るかという事実が方向を示してくれます。強く伸ばして早く変えようとせず、組織が刺激に耐えられる状態へ段階的に整える。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

読みもの

症例カンファレンス

症状コラム

施術・検査ガイド

とんとんブログ

電話
タップで電話がかかります
LINE
24時間予約受付中
東武練馬店
ときわ台店
下板橋店
南浦和店