病院で「指を鼻に」と言われたあの検査は、何を見ていたのか

反射神経のテストではありません。あの検査が確かめていること

ふらつきや手の震えで病院に行くと、指で自分の鼻と先生の指を交互に触ったり、まっすぐ一直線に歩いたりする検査をされることがあります。あれは反射神経のテストではなく、体を「狙ったとおりに正確に動かす働き」を見ています。何を確かめているのか、そしてどんなときに早めの受診が必要なのかを、やさしく整理します。

手が震える、まっすぐ歩けずふらつく、狙ったところに手がうまく届かない。こうした不安があって受診すると、先生が「指で鼻を触って、次に私の指を触って」と言ったり、「一本の線の上を歩いてみて」と促したりすることがあります。

やってみると簡単そうなのに、なぜこんな動きを見るのだろう、と不思議に思った方も多いかもしれません。

この記事では、こうした検査が体のどんな働きを見ているのか、ふらつきや手の震えはどんなときに気をつけたほうがよいのか、そして整骨院ではこうした症状とどう向き合うのかを整理します。

あの検査は「正確に動かす働き」を見ている

私たちが手を目標に伸ばしたり、まっすぐ歩いたりできるのは、力の強さだけでなく、動きの「正確さ」や「タイミング」を調整する働きがあるからです。この調整には、脳の後ろ側にある小脳(しょうのう)という部分が深く関わっています。

指で鼻と相手の指を交互に触る検査は、手を狙ったところへ正確に運べるかを見ています。一直線を歩く検査は、動きの中でバランスを保てるかを見ています。うまく調整できないと、目標を行き過ぎる、手前で止まる、動作の終わりに近づくほど手が震える、一直線からよろけてしまう、といった様子が出ることがあります。

つまりこれらは「反射神経のテスト」ではなく、体を思ったとおりに動かす仕組みが、うまく働いているかどうかの手がかりを見ているのです。

まなぶ先生 まなぶ先生

患者さんからよく「あれ、ただの反射神経ゲームだと思ってました」と言われます。簡単そうな動きなのに、何が分かるんですか?

教子先生 教子先生

手の震えって、疲れやカフェインの飲みすぎでしょう、と思っている方も多いですよね。わざわざ検査するほどのことなのかな、と感じる患者さんもいそうです。

瀬谷崎 瀬谷崎

震えにもいろいろあるんです。じっとしているときの震えと、何かに手を伸ばして目標に近づくほど強くなる震えとでは、意味が違うことがあります。だからこそ、こうした簡単な動きで「どんなときに」「どんなふうに」乱れるのかを見ています。簡単に見えて、体からのサインを拾うためのよく考えられた検査なんですよ。

ふらつきや手の震え、気をつけたいのはどんなとき?

ふらつきや手の震えには、疲れ、緊張、加齢による変化など、心配のいらないものもたくさんあります。一方で、急に強く出た場合や、他の症状を伴う場合は、早めに医療機関で確認したほうがよいことがあります。

とくに次のようなときは、様子を見すぎず、早めの受診をおすすめします。

  • 急に手の動きがぎこちなくなった、歩けないほどふらつくようになった
  • ろれつが回りにくい、飲み込みにくい
  • 片側の手足に力が入りにくい、しびれる
  • 強い頭痛や、これまでにないめまいを伴う
  • 片側だけにふらつきや震えが偏っている
重要

急に歩けないほどふらつく、ろれつが回らない、片側の手足の脱力やしびれ、強い頭痛やこれまでにないめまいを伴う場合は、迷わず医療機関を受診してください。時間が大切になることがあります。

まなぶ先生 まなぶ先生

「整骨院でも、その指を鼻に触る検査をしてもらえますか」と聞かれることがあります。どう答えるのがいいでしょう?

教子先生 教子先生

整骨院でこうした検査をするなら、その場で原因まで分かって治してもらえる、と思う患者さんもいますよね。そこは正直に伝えたいところです。

瀬谷崎 瀬谷崎

大事なのは、整骨院は診断をする場所ではない、とはっきりお伝えすることです。私たちがこうした確認をするのは、体の使い方や筋肉のつらさを診ていく前に、見逃してはいけないサインがないかを確かめるためです。気になる所見があれば、施術を優先せず医療機関の受診をおすすめします。原因を決めて治すのではなく、必要な人を必要な場所へつなぐ。その入口として確認しているんです。

整骨院では、こうした症状をどう見ているか

整骨院に来られる方の多くは、肩や腰、膝など、体の痛みやこりが主なお悩みです。ただ、その中に、ふらつきや手の震えといった症状が混ざっていることもあります。

とんとん整骨院では、こうした症状があるときに、まず「急に出たものか」「他に気になるサインがないか」を確認します。そのうえで、注意したほうがよいサインがあれば、施術を進める前に医療機関への受診をおすすめします。

体の使い方や筋肉のつらさが関わっている部分については、確認しながら丁寧に向き合いますが、原因を決めつけたり、神経の病気を治すと約束したりすることはありません。見分けて、必要な方を適切な場所へつなぐことを大切にしています。

こんなときは早めに相談を

急なふらつきや手の震えがある/ろれつが回りにくい/片側の手足に力が入りにくい・しびれる/強い頭痛やこれまでにないめまいを伴う。こうしたときは、自己判断で様子を見ず、まず医療機関にご相談ください。

検査そのものの手順や、専門家が何を見ているのかをもう少し詳しく知りたい方は、こちらの記事でくわしく整理しています。

鼻指鼻試験とは?小脳性運動失調を確認する検査の見方

簡単な検査が、大切なサインを拾っている

指で鼻を触る、まっすぐ歩く。どれも簡単そうに見える検査ですが、体を思ったとおりに動かす仕組みが働いているかを確かめる、大切な確認です。

ふらつきや手の震えの多くは心配のいらないものですが、急に出たときや他の症状を伴うときは、早めの受診が安心につながります。

瀬谷崎 瀬谷崎

気になる症状があるときは、どんな動作で・いつから・どんなふうに出るのかを覚えておくと、受診したときに伝わりやすくなります。体の痛みやこりのご相談の中で、こうした症状が気になるときも、遠慮なくお声がけください。必要なときは、適切な受診先へのご案内も含めてお手伝いします。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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