上肢の腱反射検査とは?上腕二頭筋・腕橈骨筋・上腕三頭筋反射の見方

首から腕の反射で何を見るか。
左右差と神経根、そして亢進のサイン

上肢の腱反射は、首から腕の神経学的所見を整理するための基本の検査です。C5からC7の情報をみる上腕二頭筋反射・腕橈骨筋反射・上腕三頭筋反射について、見方と実施手順、亢進していたときの考え方を整理します。

この記事について

上肢の深部腱反射は、上腕二頭筋反射がC5からC6、腕橈骨筋反射がC6、上腕三頭筋反射がC7を中心とした神経レベルの情報を得るために用いられる検査です。ここでは、上肢腱反射の目的、3つの反射と対応する神経根、実施の手順、反射が亢進していたときに考えたいこと、筋力・感覚・スパーリング(Spurling)テストなど他の所見とのつなげ方をまとめています。

著者アイコン 伊藤聡史

上肢の腱反射は、減弱だけでなく亢進の有無も見る検査です。首から腕の症状が神経根のレベルなのか、それとも脊髄のレベルなのかを考える手がかりになります。

結論:上肢の腱反射は、単独で原因を決める検査ではなく、筋力・感覚・誘発テストと組み合わせて、症状が神経根レベルか脊髄レベルかを整理するための検査として扱うのが実用的です。

上肢の深部腱反射では、上腕二頭筋反射・腕橈骨筋反射・上腕三頭筋反射がよく使われます。それぞれC5からC7を中心とした神経レベルの情報を得るための検査で、下肢の腱反射と同じように左右差と整合性を見ていきます。

上肢の腱反射で何を見るのか?

深部腱反射は、腱を軽く叩いたときに筋肉が反射的に収縮する反応を確認する検査です。上肢では、反射が弱い・左右差がある・逆に亢進しているといった反応を、首から腕の神経学的所見の一つとして整理します。

上腕二頭筋反射 主にC5からC6神経レベルを確認します。
肘窩の上腕二頭筋腱を叩き、上腕二頭筋の収縮と肘の屈曲反応を見ます。
腕橈骨筋反射 主にC6神経レベルを確認します。
前腕の橈骨遠位を叩き、腕橈骨筋の収縮と肘の屈曲や前腕の反応を見ます。
上腕三頭筋反射 主にC7神経レベルを確認します。
肘の後方で上腕三頭筋腱を叩き、上腕三頭筋の収縮と肘の伸展反応を見ます。
見るべきポイント 反射があるかないかだけでなく、健側との左右差、反応の強さ、再現性、他の神経学的所見との整合性を確認します。

上肢の腱反射も「叩けば分かる」ように見えますが、腕の力が抜けているか、腱を適切にとらえられているか、左右を同じ肢位で比べられているかで結果が変わります。

減弱と亢進で意味が変わる

上肢の腱反射で大切なのは、反応の向きです。反射が弱い・消えている場合と、反射が強くなっている場合とでは、考える方向が変わります。

反射が減弱・消失している その反射に対応する神経根やその末梢側の問題を疑う材料になります。
たとえば上腕二頭筋反射の減弱はC5からC6、上腕三頭筋反射の減弱はC7の所見と照らし合わせます。
反射が亢進している 叩いた反射のレベルより上、つまり脊髄側の関与を考える手がかりになります。
頚椎症性脊髄症のように、脊髄が圧迫されている状態では反射が亢進することがあります。
左右差をどう見るか 片側だけ弱い、片側だけ強いといった左右差は、同じ肢位・同じ力の抜き方で比べて初めて意味を持ちます。
両側とも強い・弱い場合は、緊張や個人差の影響も含めて慎重に考えます。
整理

上肢の腱反射は、単独で何かを決める検査というより、症状分布・筋力・感覚・スパーリング(Spurling)テストなどと合わせて、症状が神経根レベルか脊髄レベルかを整理するための検査です。

3つの反射のやり方

上肢の腱反射は、いずれも腕の力を抜いた状態で、腱を軽く叩いて反応を確認します。前腕を軽く支え、同じ肢位で左右を比べるのが基本です。

上腕二頭筋反射(C5からC6)

  1. 肘を軽く曲げて支える患者さんの前腕を検者の腕にのせるように支え、肘を軽く曲げてリラックスしてもらいます。
  2. 上腕二頭筋腱に母指を当てる肘窩にある上腕二頭筋腱の上に、検者の母指を当てます。
  3. 母指の上から叩く母指の上を打腱器で叩き、上腕二頭筋の収縮と肘の屈曲反応を確認します。左右で同じ条件になるように比較します。

腕橈骨筋反射(C6)

  1. 前腕を中間位で支える前腕を手のひらが内側を向く中間位にして、軽く支えます。
  2. 橈骨遠位を狙う手首の少し上、橈骨の遠位部を叩く位置として確認します。
  3. 軽く叩く橈骨遠位を軽く叩き、腕橈骨筋の収縮と肘の屈曲や前腕の反応を確認します。

上腕三頭筋反射(C7)

  1. 肘を曲げて前腕を垂らす前腕を支え、肘を約90度に曲げて力を抜いてもらいます。
  2. 肘頭の上の腱を確認する肘の後方、肘頭のすぐ上にある上腕三頭筋腱を狙います。
  3. 腱を直接叩く上腕三頭筋腱を打腱器で叩き、上腕三頭筋の収縮と肘の伸展反応を確認します。

反射が誘発されにくい場合は、下肢と同じように歯を軽く噛みしめてもらうなどの増強法を使うことがあります。増強して出た場合は「通常では出にくいが、増強すると出る」という情報として記録します。

亢進していたら何を考えるか

上肢の腱反射が亢進しているときは、叩いたレベルより上、つまり脊髄側の関与を考えます。首から腕の症状で反射の亢進を見つけたら、次の所見も合わせて確認します。

  • ホフマン反射が出ないか(中指をはじいて母指が内転するか)
  • 手の巧緻運動が落ちていないか(ボタンのかけ外し、箸の使いにくさ)
  • 歩きにくさやふらつきなど、下肢や体幹の症状を伴っていないか
  • 両手にまたがる症状か、片側の一部の神経根に沿った症状か
整理

反射の亢進とホフマン反射、巧緻運動の低下がそろってくる場合は、頚椎症性脊髄症のように脊髄のレベルで起きている可能性を含めて考えます。神経根レベルの減弱とは向きが逆の所見です。

反射だけで決めない

上肢の腱反射は、それ単独で原因を決める検査ではありません。反応の減弱・亢進・左右差を、他の所見と同じ方向を向いているかどうかで読んでいきます。

  • 上腕二頭筋反射・腕橈骨筋反射の減弱は、C5からC6の筋力・感覚の所見と照らし合わせる
  • 上腕三頭筋反射の減弱は、C7の筋力・感覚の所見と照らし合わせる
  • スパーリング(Spurling)テストなどの誘発所見と矛盾しないかを見る
  • 反射が亢進している場合は、脊髄レベルの関与も含めて慎重に考える
  • 反射が保たれていても、それだけで神経根の問題を十分に否定できるわけではない

上肢の腱反射は、「弱いからこの神経根」と一つの所見で決める検査ではなく、他の所見と矛盾しないかを見る検査です。減弱と亢進の向き、左右差、整合性を丁寧に確認することが大切です。

関連症状:こんな訴えと合わせて見る

  • 首から肩、腕、手にかけて痛みやしびれがある
  • 腕や手に力が入りにくい、細かい動作がしにくい
  • 左右で反射の出方が明らかに違う
  • 手の感覚や筋力と合わせて神経学的所見を整理したい
  • ボタンのかけ外しや箸が使いにくいなど、巧緻運動の低下を感じる
重要

両手や両脚に広がるしびれ、歩きにくさやふらつき、手の細かい動作の急な低下、排尿・排便の異常、発熱や外傷を伴う強い痛みがある場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。

上肢の腱反射は「向きと整合性」を見る検査

上腕二頭筋反射はC5からC6、腕橈骨筋反射はC6、上腕三頭筋反射はC7の情報を得るために使われます。ただし、反射検査だけで原因を決めることはできません。

大切なのは、反射が減弱しているのか亢進しているのか、左右差があるか、筋力や感覚、スパーリング(Spurling)テストなどの所見と同じ方向を向いているかを確認することです。

とんとん整骨院では、症状の場所だけでなく、反射、筋力、感覚、動作での変化を合わせて確認し、身体の状態を多角的に見極めることを大切にしています。

著者アイコン 伊藤聡史

上肢の反射は、減弱だけでなく亢進も見ることで、神経根レベルと脊髄レベルを分けて考える手がかりになります。ホフマン反射や巧緻運動の所見と合わせて、矛盾なくつながるかを見ていきます。

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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