腱反射が正常なら神経根症ではない?反射検査の見方を整理する
セラピスト向け
腱反射は「ない時」より「ある時」をどう読むか
神経根症の評価で、腱反射は大事な所見です。ただし、反射が保たれているから安心、とは言い切れません。反射検査は、除外よりも特定寄りに使う場面が多い検査です。
腱反射の減弱・消失があれば、神経根症の可能性を上げる材料になります。一方で、反射が正常でも神経根症を否定する材料としては弱いことがあります。
腰や首の痛みに、腕や脚のしびれが加わっている。
力が入りにくい。
感覚が鈍い。
こういう時、神経根症の関与を考える場面があります。
その評価で使われるもののひとつが、腱反射です。
膝蓋腱反射、アキレス腱反射、上腕二頭筋反射、腕橈骨筋反射、上腕三頭筋反射。
学校でも習いますし、臨床でもよく使われます。
ただ、ここで大事なのは、腱反射が正常だから神経根症ではない、と短絡しないことです。


まなぶ先生

瀬谷崎
腱反射は、神経の通り道をざっくり見る検査
腱反射は、筋肉や腱に刺激を入れた時に起こる反射を見ます。
反射の経路には、末梢神経、神経根、脊髄、筋肉などが関係します。
たとえば下肢では、膝蓋腱反射は主にL4、アキレス腱反射は主にS1の評価として扱われることが多いです。
上肢では、上腕二頭筋反射、腕橈骨筋反射、上腕三頭筋反射などが、頚椎由来の神経根症を考える材料になります。
もちろん、反射は個人差があります。
もともと出にくい人もいますし、緊張や姿勢、叩き方、左右差の見方でも印象が変わります。
だから、反射検査は単独で「これで確定」と使うものではありません。
腱反射は、神経根症を考える時の重要な材料です。ただし、正常でも否定しきれず、異常でも他の所見と合わせて読む必要があります。
感度は低め、特異度は高めという読み方
神経根症に対する腱反射は、多くの場合、感度は高くありません。
感度が低いということは、その疾患があっても検査で拾いきれない人がいる、ということです。
つまり、神経根症があっても、腱反射が保たれているケースがあります。
反射が正常だったからといって、「神経根症ではない」とまでは言えません。
一方で、腱反射の減弱や消失が明らかにある場合、特異度が比較的高い所見として、神経根症の可能性を上げる材料になります。
腱反射が正常でも神経根症を除外しきれない。けれど、明らかな減弱や消失があれば、神経根症の関与を疑う材料として重みが出ます。
ここは感度と特異度の話です。
感度の高い検査は、陰性の時に除外へ使いやすい。
特異度の高い検査は、陽性の時に特定へ使いやすい。
腱反射は、どちらかというと「反射が落ちている時に意味が強くなる」検査として考えた方が、臨床では扱いやすいです。
反射が正常でも、神経根症を除外しない
たとえば、腰椎の神経根症を疑う患者さんがいるとします。
下肢痛がある。
しびれがある。
感覚の左右差がある。
特定の筋力が落ちている。
でも、膝蓋腱反射やアキレス腱反射は左右差なく出ている。
この時に、「反射が正常だから神経根症ではない」と決めるのは危険です。
反射は落ちていないけれど、他の神経学的所見や問診から神経根症を疑う材料がそろうことはあります。
| 所見 | どう読みたいか | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 腱反射が正常 | 神経根症の可能性を大きく下げるとは限らない | 感度が低い検査では、偽陰性が起こりうる |
| 腱反射の減弱・消失 | 神経根症の可能性を上げる材料になる | 左右差、年齢、末梢神経障害なども確認する |
| 筋力低下 | 神経根の関与を疑う材料になる | 痛みで力が入らないケースと分けて見る |
| 感覚低下・しびれ | 分布や再現性を見る | デルマトームだけに当てはめすぎない |
大切なのは、反射だけで決めないことです。
腱反射は、問診、感覚、筋力、神経伸張テスト、痛みの出方と合わせて読むことで意味が出ます。
陽性所見がある時は、重みを持って扱う
反射の減弱や消失が明らかにある時は、軽く流さない方がいいです。
とくに、左右差がはっきりしている場合や、感覚低下・筋力低下と同じ神経根レベルで説明しやすい場合は、神経根症の可能性が高まります。
たとえば、S1領域の症状があり、アキレス腱反射が明らかに低下している。
L4領域の症状があり、膝蓋腱反射が落ちている。
こうした所見は、他の評価と合わせてかなり重要な材料になります。
反射は左右差を見ます。片側だけを見て「出た」「出ない」と判断するより、健側との比較、症状の分布、筋力や感覚の所見と合わせて読む方が安全です。
ただし、反射が落ちているから必ず神経根症、とも言い切れません。
末梢神経障害、加齢、既往、全身状態など、別の要因も関与します。
だから「可能性を高める材料」として扱うのが、ちょうどいい温度感です。

まなぶ先生

瀬谷崎
反射だけでなく、神経学的所見を束で見る
神経根症の評価では、反射だけを見ても不十分です。
感覚、筋力、反射、痛みの分布、症状の誘発、神経伸張テスト。
それぞれの所見が、同じ神経根レベルを指しているのかを見ます。
反射は正常だけれど、筋力低下や感覚低下がある。
反射は落ちているけれど、症状の分布が合わない。
こうしたズレがある時は、見立てを修正する必要があります。
少し辛口に言うと、反射検査をやっているだけで「神経学的評価をした気になっている」ケースはあります。
反射は大事です。でも、反射だけでは足りません。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、しびれや脱力がある場合、反射だけで判断しないようにしています。
症状の出方を聞く。
感覚の左右差を見る。
筋力を確認する。
反射を見る。
必要に応じて、医療機関での確認が必要な可能性も考えます。
その中で、腱反射の減弱や消失があれば、神経根症を疑う材料として重く見ます。
反射が正常だから安心、ではなく、反射が落ちているなら慎重に見る。神経学的所見は、単独ではなく束で評価します。
こんな症状は一度ご相談ください
- 腰や首の痛みに加えて、腕や脚にしびれがある
- 力が入りにくい、つまずきやすい、物を落としやすい
- 感覚が鈍い、左右で触られた感覚が違う
- 反射が落ちていると言われたが、説明がよく分からない
- 神経症状があるのか、筋肉や関節の問題なのか整理したい
脱力が進行している、歩行が不安定、両手足に症状がある、排尿・排便の異常がある、強いしびれや麻痺が急に出た場合などは、早めに医療機関で確認してください。
反射は、正常より異常の意味を丁寧に読む
腱反射は、神経根症の評価で役に立つ検査です。
ただし、正常だから除外、という使い方には向いていないことがあります。
感度が低ければ、神経根症があっても反射が保たれる人がいます。
一方で、減弱や消失がはっきりしていれば、神経根症の可能性を上げる材料になります。
反射を見たら終わりではなく、感覚、筋力、症状の分布、問診と合わせて考える。
検査結果を「ある・ない」で終わらせず、確率をどう動かすかで読む。
それが、神経学的評価では大切です。

瀬谷崎
参考
- Tawa N, Rhoda A, Diener I. Accuracy of clinical neurological examination in diagnosing lumbo-sacral radiculopathy: a systematic literature review. BMC Musculoskeletal Disorders. 2017.
PMC - Accuracy of clinical neurological examination in diagnosing lumbo-sacral radiculopathy. PubMed.
PubMed - Neurological examination of the peripheral nervous system to diagnose lumbar spinal disc herniation with suspected radiculopathy: a systematic review and meta-analysis.
ScienceDirect - Butler DS, et al. Components of the neurological examination for cervical radiculopathy: a scoping review. BMC Musculoskeletal Disorders. 2025.
BMC Musculoskeletal Disorders













