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脚を上げると痛い。坐骨神経痛の原因を見分けるSLR検査のひと工夫

その脚の痛み、本当にヘルニアが原因でしょうか

腰からお尻、太ももの裏へと広がる痛みやしびれ。仰向けで脚を持ち上げると、足のほうに症状が出る。こういうとき「坐骨神経痛だから、たぶんヘルニア」と考えてしまいがちです。でも、同じように脚を上げて痛む人でも、原因はヘルニアとは限りません。お尻の筋肉(梨状筋)や、裏ももの硬さが関わっていることもあります。だから整骨院では、脚を上げたあとにひと工夫を加えて、原因を切り分けていきます。

腰から脚にかけての痛みやしびれは、坐骨神経痛と呼ばれることがあります。

ただ、坐骨神経痛というのは症状の呼び名であって、原因の名前ではありません。脚を上げると痛むからといって、すぐにヘルニアと決まるわけではないのです。

この記事では、有名なSLRという検査の特徴と、その弱点を補って原因を見分ける検査の工夫について、整骨院の視点から見ていきます。

「脚を上げると痛い」だけでは、原因は決まらない

SLR(下肢伸展挙上テスト)は、仰向けで膝を伸ばしたまま脚を持ち上げ、足のほうに痛みやしびれが出るかを見る検査です。腰椎椎間板ヘルニアの検査としてよく知られています。

この検査には、見逃しは少ない一方で、陽性でも原因を一つに絞れないという性質があります。脚を上げて症状が出なければ、ヘルニアの可能性は低いと考えやすい。けれど症状が出たとしても、それだけでヘルニアと決めることはできません。お尻の奥の筋肉や、裏ももの硬さでも、同じように痛みが出るからです。

だからこそ、脚を上げて痛みが出たあとに、もうひと手間かけて原因を切り分けることが大切になります。

まなぶ先生 まなぶ先生

脚を上げると足に痛みやしびれが出る患者さん、つい「ヘルニアかな」と思ってしまいます。SLRが陽性なら、ヘルニアと考えていいんでしょうか?

教子先生 教子先生

脚を上げて坐骨神経痛が出れば、SLR陽性イコールヘルニアでいいんじゃない?有名な検査だし、それで十分でしょう。

瀬谷崎 瀬谷崎

そこは慎重にいきたいところなんです。SLRは感度が高くて、特異度が低い検査なので。つまり陰性ならヘルニアは考えにくいけれど、陽性だからヘルニアとは限らない。梨状筋やハムストリングスの緊張でも陽性になります。だから陽性が出たあとに、原因を切り分けるひと手間が要るんですよ。

原因を切り分ける、SLRのひと工夫

整骨院では、脚を上げて痛みが出たら、いったん痛みが消えるところまで脚を少し下ろします。そして、その位置から次の確認を続けて行います。狙いは、痛みの原因が、坐骨神経なのか、お尻の筋肉なのか、裏ももの硬さなのかを見分けることです。

  • 脚を少し下ろした位置から、股関節を内側にひねって寄せます(内旋・内転)。これは坐骨神経を引っ張らずに、お尻の奥の梨状筋だけを伸ばす姿勢です。ここで症状が出れば、梨状筋の関わりが疑われます。
  • そこで出なければ、脚の位置はそのままで、足首を反らせます(背屈)。今度は筋肉ではなく、坐骨神経だけに伸びる刺激が入ります。ここで症状が出れば、ヘルニアなど神経由来の可能性が高いと考えます。
  • どちらでも症状が出なければ、最初の痛みは神経のものではなく、裏もも(ハムストリングス)の硬さによるものだった、と考えられます。

同じ「脚を上げると痛い」でも、この一連の流れを続けて行うことで、原因をぐっと絞り込めます。実際の手順は、瀬谷崎の動画が分かりやすいので、あわせてご覧ください。

▲ 動画で見る:SLRのひと工夫(瀬谷崎将也/リアル治療家チャンネル)

まなぶ先生 まなぶ先生

脚を上げたあとに、内側にひねったり足首を反らせたりするのは、何を見ているんですか?

教子先生 教子先生

とりあえず痛みが出る角度をいくつか試してみて、いちばん痛いところを緩めればいいんじゃない?

瀬谷崎 瀬谷崎

やみくもに試しているわけではないんです。痛みが消える角度まで脚を下ろしてから、股関節を内旋・内転させると、坐骨神経を引っ張らずに梨状筋だけを伸ばせる。そこで出れば梨状筋の関わりを疑う。出なければ足首を背屈させて、今度は坐骨神経だけに伸長刺激を入れます。ブラガードテストと同じ原理ですね。どの組織を選んで伸ばしているかが決まっているから、原因を絞れるんです。

分けて考えたいこと

「脚を上げると痛い」と「ヘルニア」は、イコールではありません。同じ症状でも、坐骨神経・お尻の筋肉・裏ももの硬さでは、向き合い方が変わります。原因を切り分けてから対応を考えたいところです。

こんなときは早めに相談を

お尻や股のまわりのしびれ/尿や便が出にくい・もれる/脚に力が入らず進む/両脚にしびれが広がる。こうしたサインがあるときは、自己判断せず、できるだけ早く医療機関にご相談ください。また、痛みを確かめようとして、自分で繰り返し脚を上げたり強くひねったりするのは避けてください。

実際の検討例(スタッフのオンラインカンファレンス)

脚のしびれと痛みが強く、歩いても座っても症状が出るのに、自転車(クロスバイク)で長距離を走るときだけ楽という60代の方が検討されたことがあります。前かがみが一番痛いのに、前傾姿勢の自転車では楽という、教科書どおりでない組み合わせでした。

検討では、「楽」と言われた姿勢を会話だけで済ませず、ベッドの上で実際に再現して確かめること、腰だけを曲げた場合と股関節から曲げた場合で症状の出方を分けて確認することが挙がりました。レントゲンだけでは椎間板ヘルニアの否定は難しく、MRI(磁気共鳴画像)検査を受けていない点にも注意が向けられました。

脚を上げる検査ひとつでも、こうした例のように解釈の分かれる場合があります。気になる症状があるときは、どの姿勢で楽になるかも含めて、そのまま伝えていただくと手がかりになります。

同じ脚の痛みでも、原因はひとつではない

脚を上げると痛い、という同じ症状でも、その奥にある原因はいくつもあります。ヘルニアと決めつけて対応するのと、原因を切り分けてから対応するのとでは、向き合い方が変わってきます。

気になる脚の痛みやしびれがあるときは、どの動きで、どこに、どんなふうに出るのかを手がかりに、一度ご相談ください。

瀬谷崎 瀬谷崎

SLRは、陰性ならヘルニアを考えにくいという点で、とても役に立つ検査です。ただ、陽性のときに原因まで決めてくれるわけではない。だからこそ、内旋・内転や背屈をひと続きに加えて、坐骨神経・梨状筋・ハムストリングスのどれが関わっているのかを切り分ける。検査はやって終わりではなく、次の判断につなげるために行いたいんです。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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