腰椎椎間板ヘルニアを画像だけで怖がらないために。基礎と自然経過の見方
症状コラム
腰椎椎間板ヘルニアは、画像だけで怖がらない
ヘルニアがあります、と言われると不安になります。ただ、画像に写った所見だけで、今の痛みやしびれの全部を説明できるとは限りません。まずは病態を落ち着いて見るところから始めたいです。
腰椎椎間板ヘルニアは、画像所見、神経症状、自然経過、生活背景を合わせて見る必要があります。「飛び出しているから終わり」ではなく、自然に変化する可能性も含めて考えることが大切です。
腰椎椎間板ヘルニアという言葉は、患者さんにとってかなり強い言葉です。
「ヘルニアがあります」と聞くと、腰の中で何かが飛び出して、神経を押して、もう戻らないようなイメージを持つ人もいます。
もちろん、強い症状が出ることはあります。下肢の痛みやしびれ、筋力低下など、慎重に見ないといけないケースもあります。
ただ、ヘルニアという言葉だけで、患者さんを必要以上に怖がらせるのは違います。
少し辛口に言うと、画像で見つかったものを、そのまま痛みの原因として説明して終わるのは、かなり雑です。

まなぶ先生

瀬谷崎
椎間板は、ただのクッションではない
椎間板は、背骨と背骨の間にある組織です。
中心にはゼリー状の髄核があり、その周囲を線維輪が囲んでいます。
よく「背骨のクッション」と説明されますが、椎間板はただ衝撃を吸収しているだけではありません。
圧力を受けたり、戻ったりしながら、栄養のやり取りにも関わっています。
ここを理解しないまま「負荷がかかるから悪い」「曲げると危険」とだけ説明すると、患者さんは身体を動かすこと自体が怖くなります。
椎間板に負荷がかかること自体が、すべて悪いわけではありません。問題は、どんな状態の人に、どの程度の負荷が、どのタイミングでかかっているかです。
「重い物を持ったからヘルニアになった」と考えたくなる場面もあります。
でも、実際には明確なきっかけがはっきりしないケースも少なくありません。
患者さんにとって分かりやすい原因を作りたくなる気持ちは分かりますが、分かりやすさのために不確かな説明を強くしすぎるのは避けたいところです。
ヘルニアにも、いくつかの形がある
ひと口にヘルニアと言っても、飛び出し方にはいくつかのタイプがあります。
椎間板が膨らんでいる状態、線維輪の外へ髄核が出てきている状態、さらに組織が遊離している状態など、形によって見え方も自然経過も変わります。
専門的には、突出、脱出、遊離などの分類で整理されることがあります。
| 見方 | ざっくりしたイメージ | 臨床での注意 |
|---|---|---|
| 膨隆・突出に近いもの | 椎間板が後方へ膨らんでいる状態 | 画像所見だけで痛みの原因と決めつけない |
| 脱出に近いもの | 髄核などが外へ出てきている状態 | 神経症状や経過と合わせて見る |
| 遊離に近いもの | 脱出した組織が本体から離れている状態 | 自然吸収が起こりやすいとされる報告もある |
この分類を患者さんに細かく説明しすぎる必要はありません。
ただ、施術者側は「ヘルニア」とひとまとめにせず、病態の幅を持って見ておきたいです。
画像に写る変化は、痛みと必ず一致しない
ここがかなり大事です。
画像で椎間板の変性や膨隆が見つかっても、それだけで今の痛みの原因とは言い切れません。
無症状の人にも、椎間板の変性や膨隆、突出が見つかることがあります。
年齢が上がるほど、こうした画像所見は増えやすくなります。
つまり、画像所見には「痛みの原因かもしれない情報」と「年齢とともに見られる変化」が混ざります。
画像に写ったものを見ないのも雑ですが、画像に写ったものだけで説明するのも雑です。
患者さんとしては、画像に異常があると言われると怖くなります。
でも、画像所見があることと、痛みの強さや生活の困りごとは、いつもきれいに比例するわけではありません。
だから、問診や神経学的な所見、痛みの出方、生活での困りごとを合わせて考える必要があります。

まなぶ先生

瀬谷崎
痛みは、圧迫だけで説明できないことがある
ヘルニアというと、「飛び出したものが神経を押して痛い」と考えられがちです。
もちろん、物理的な圧迫が関係することはあります。
ただ、それだけでは説明しきれないこともあります。
髄核が外へ出ることで、身体の免疫反応が起こり、炎症性の物質が関わると考えられています。
神経の周囲で炎症や浮腫が起これば、痛みやしびれ、過敏さにつながることがあります。
つまり、神経がどれくらい押されているかだけでなく、周囲で何が起きているかも見たいところです。
「神経が押されているから痛い」とだけ説明すると、患者さんは圧迫が取れない限り良くならないと思いやすくなります。炎症や自然経過も含めて説明した方が、不安を減らしやすいことがあります。
ヘルニアは、自然に小さくなることがある
腰椎椎間板ヘルニアでは、保存的な経過の中でヘルニアが自然に小さくなることがあります。
研究では、脱出や遊離に近いタイプほど自然吸収が起こりやすい傾向が報告されています。
これは、外へ出た組織に対して免疫細胞が関わり、少しずつ吸収が進む可能性があるためです。
もちろん、すべての人が同じように良くなるわけではありません。
強い痛み、進行する筋力低下、排尿・排便の異常などがあれば、医療機関での確認が必要です。
ただ、「ヘルニアがあるから絶対に手術しかない」と短絡的に怖がる必要はありません。
ヘルニアには自然経過があります。状態によっては、時間とともに変化していく可能性があります。だからこそ、症状の強さや神経所見、生活への影響を見ながら方針を考えることが大切です。
年齢、生活、心理社会的な要因も見ておく
ヘルニアは30〜50代に多いとされ、男性に多い傾向が報告されています。
BMI、喫煙、仕事の負荷、夜勤、心理的なストレスなどが関連する可能性も指摘されています。
こうした情報は、「これが原因です」と決めるためではありません。
その人の回復を邪魔している要因がないか、生活の中で調整できることがないかを見るための材料です。
- 足の痛みやしびれがどの範囲に出ているか
- 筋力低下や感覚の変化があるか
- 咳やくしゃみで症状が強くなるか
- 安静時や夜間の痛みが強すぎないか
- 仕事や生活で負荷が偏っていないか
- 不安や恐怖で動く範囲が小さくなっていないか
同業者向けに言うなら、ヘルニアを「椎間板の問題」だけに閉じ込めないことです。
病態は椎間板にあります。でも、回復は生活の中で起こります。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、腰椎椎間板ヘルニアが疑われる方に対して、まず状態を丁寧に確認します。
痛みの場所、しびれの範囲、筋力、動き方、生活で困っていることを見ます。
必要に応じて、医療機関での確認が必要な可能性もお伝えします。
その上で、施術や運動、セルフケア、生活での注意点を考えます。
大切なのは、画像所見で怖がらせすぎないこと。
同時に、危険なサインを軽く見ないこと。
「ヘルニアだからこう」と決めつけず、画像所見、症状、神経所見、自然経過、生活背景を合わせて総合的に見ます。
医療機関での確認が必要なこともある
腰椎椎間板ヘルニアは、自然経過を見ながら保存的に対応できることもあります。
ただし、すべてを整骨院だけで判断するものではありません。
強い痛みが急に出た、足に力が入りにくい、感覚が大きく鈍い、排尿・排便の異常がある、発熱や外傷を伴う、安静にしていても強い痛みが続く。
こうした場合は、医療機関での確認が必要になることがあります。
「怖がらせない」と「見逃さない」は、どちらも大切です。
ヘルニアを、ひとつの言葉で終わらせない
腰椎椎間板ヘルニアは、患者さんにとって不安になりやすい言葉です。
でも、画像で見つかった所見が、今の痛みのすべてを説明しているとは限りません。
椎間板の構造、ヘルニアのタイプ、炎症や免疫反応、自然吸収、生活背景。
いろいろな要素を合わせて見る必要があります。
「ヘルニアだから悪い」でもなく、「画像なんて関係ない」でもありません。
その間を、丁寧に見ていく。
ここが臨床では大切だと思っています。

瀬谷崎
参考
- Brinjikji W, et al. Systematic literature review of imaging features of spinal degeneration in asymptomatic populations. AJNR. 2015.
PubMed - Chiu CC, et al. The probability of spontaneous regression of lumbar herniated disc: a systematic review. Clinical Rehabilitation. 2015.
PubMed - Zhong M, et al. Incidence of spontaneous resorption of lumbar disc herniation: a meta-analysis. Pain Physician. 2017.
PubMed - Fardon DF, et al. Lumbar disc nomenclature: version 2.0. The Spine Journal. 2014.
PubMed - Wilke HJ, et al. New in vivo measurements of pressures in the intervertebral disc in daily life. Spine. 1999.
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