腰椎椎間板ヘルニアと言われた時に、画像だけで不安になりすぎないために
症状コラム
ヘルニアは、名前だけで怖がらなくていい
腰椎椎間板ヘルニアと言われると、不安になる方は多いです。ただ、画像にヘルニアが写っていることと、今の痛みのすべてがそれで決まることは同じではありません。
大事なのは、画像だけで決めつけないことです。痛みの場所、しびれ、筋力、反射、生活で困っている動き、経過を合わせて見ていく必要があります。
「ヘルニアがありますね」と言われた瞬間に、身体の中に爆弾を抱えたような気持ちになる方がいます。
気持ちは分かります。腰椎椎間板ヘルニアという名前は、ちょっと強いです。痛そうですし、怖そうです。
ただ、ここで一度落ち着いて考えたいところがあります。
ヘルニアという画像所見があることと、今の痛みやしびれが全部それで説明できることは、必ずしも同じではありません。
少し辛口に言うと、「画像にヘルニアがあるから、それが原因です」とだけ説明して終わるのは、臨床としてかなり雑です。

まなぶ先生

瀬谷崎
「ヘルニア」という言葉が、痛みを大きくすることがある
患者さんにとって、病名はただの情報ではありません。
「ヘルニアです」と言われると、前にかがむのが怖くなる。歩くのが怖くなる。運動したら悪化する気がする。そうやって、身体の使い方が小さくなることがあります。
もちろん、痛みやしびれを軽く見ていいわけではありません。
ただ、不安を増やす説明は、回復の邪魔になることがあります。
ヘルニアを見つけることと、患者さんを安心して動ける方向へ導くことは別です。画像を見せるだけでは、説明したことにはなりません。
同業者向けに言うなら、病名を伝える時ほど言葉を選んだ方がいいです。
「飛び出しています」「神経を潰しています」「一生付き合うしかないです」みたいな表現は、患者さんの頭にかなり強く残ります。
必要なのは、怖がらせることではなく、今の状態を整理して、何を見ていけばいいのかを一緒に決めることです。
画像、痛み、神経所見はセットで見る
腰椎椎間板ヘルニアが疑われる時、画像検査は大事です。
ただ、画像だけで完結するわけではありません。画像は「構造」を見るものです。患者さんの痛み、不安、生活で困っていること、神経の働き方までは、それだけでは分かりません。
| 見るもの | 分かりやすいこと | 注意したいこと |
|---|---|---|
| 画像所見 | 椎間板の突出や神経との位置関係 | 写っているものが、今の症状の主因とは限らない |
| 痛み・しびれの範囲 | どの神経領域が関与していそうか | 痛みの感じ方には不安や警戒も関わる |
| 筋力・感覚・反射 | 神経の働きに変化があるか | 単発ではなく左右差や経過を合わせて見る |
| 日常動作 | 何で困っているか、何ならできるか | 痛みの強さだけで生活への影響は決まらない |
整骨院の現場では、医師のように診断をつけるわけではありません。
だからこそ、できることははっきりしています。症状の出方を聞く。神経の関与を疑う所見を確認する。医療機関での確認が必要なサインを見逃さない。画像や診断名がある場合も、それを患者さんの生活と照らし合わせて整理する。
このあたりを丁寧にやるだけで、患者さんの安心感はかなり変わります。
SLRだけで「分かった気」にならない
腰から脚にかけての症状では、SLRテストがよく使われます。
脚を上げた時に痛みやしびれが再現されるかを見る検査です。臨床ではとても有名ですし、参考になる場面もあります。
ただ、SLRだけでヘルニアの関与を断定するのは避けたいところです。
SLRの反応、しびれの範囲、筋力低下、感覚の左右差、反射、咳やくしゃみでの増悪、座位や前屈での変化などを、他の所見と合わせて総合的に見ます。
検査は増やせば良いわけではありません。
でも、ひとつの検査に頼りすぎると、見たいものだけを見てしまいます。
「SLRが陽性だからヘルニアです」「SLRが陰性だから違います」と単純化すると、患者さんの状態を取りこぼします。

まなぶ先生

瀬谷崎
ヘルニアは、自然に小さくなることもある
腰椎椎間板ヘルニアでは、突出した椎間板の一部が時間とともに小さくなる、あるいは吸収されることがあります。
これは、身体の免疫反応や血管新生、マクロファージなどの働きが関係すると考えられています。
特に、脱出型や遊離型と呼ばれるタイプでは、自然に縮小しやすい傾向が報告されています。
自然に小さくなることがあるから、何もしなくていいという話ではありません。痛みの強さ、神経症状、日常生活への影響、経過を見ながら、医療機関での確認や保存的な対応を考える必要があります。
この自然経過を知っておくと、患者さんへの説明が少し変わります。
「出ているから終わり」ではなく、「状態によっては時間とともに変化することもある」と伝えられる。
これは患者さんにとって、かなり大きいです。
炎症を、敵か味方かで単純に分けない
ヘルニアの痛みでは、炎症が関係することがあります。
だから、痛みを落ち着かせる目的で炎症を抑える対応が選ばれることもあります。
一方で、ヘルニアの自然吸収には免疫反応が関係していると考えられているため、「炎症は全部悪い」と単純に決めつけるのも違います。
炎症は痛みの原因にもなり得ますし、回復過程の一部にもなり得ます。だからこそ、何でも冷やす、何でも止める、何でも我慢する、のどれも雑です。
たとえば、強い痛みで日常生活が大きく崩れている時には、痛みを落ち着かせることが必要になる場合があります。
ただ、「痛みがあるから、とりあえず全部冷やす」「炎症を止めれば治る」といった考え方だけで進めると、患者さんの状態を見ていない対応になりやすいです。
ここは、医療機関での方針や薬の使い方も含めて、勝手に判断しない方がいいところです。
説明は、不安を増やすためではなく整理するためにある
ヘルニアの説明で大切なのは、患者さんの不安を増やさないことです。
痛みが強い方ほど、「このまま歩けなくなるのでは」「手術しないといけないのでは」と考えやすくなります。
そこに施術者が断定的な言葉を重ねると、患者さんはさらに動けなくなります。
画像にヘルニアが写っていることは大事な情報です。ただ、それだけで今の症状を全部決めるわけではありません。しびれの範囲、力の入り方、感覚、生活で困っている動きを合わせて見ながら、今できることを整理していきましょう。
このくらいの説明でも、患者さんの受け取り方はかなり変わります。
怖い名前を渡して終わりではなく、判断の材料と見通しを一緒に渡す。そこまで含めて説明です。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、腰や脚の症状を「ヘルニアかどうか」だけで見ないようにしています。
画像や診断名がある場合は、それを大事な情報として扱います。ただ、それだけで身体の状態を決めつけることはしません。
問診で経過を聞き、神経の関与を疑う所見を確認し、動作や生活で困っていることを整理します。そのうえで、整骨院で対応できる範囲なのか、医療機関での確認を優先した方がいいのかを考えます。
診断名ではなく、その人の状態を見る。怖がらせず、軽く見すぎず、今の身体に必要な選択肢を一緒に整理します。
医療機関での確認を優先したいサイン
腰や脚の症状は、整骨院で相談できるものもあります。
ただし、次のような場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。
- 足に力が入りにくい、つまずきやすい状態が強くなっている
- しびれや感覚の鈍さが広がっている、または急に強くなった
- 排尿や排便の異常、会陰部のしびれがある
- 安静にしていても強い痛みが続く
- 発熱、強い外傷、原因不明の体重減少などを伴う
上記に当てはまる場合や、症状の進行が気になる場合は、自己判断で様子を見続けず、医療機関で確認してください。整骨院では、必要に応じて受診の目安も一緒に整理します。
ヘルニアは、名前より経過を見る
腰椎椎間板ヘルニアという言葉は強いです。
でも、名前だけで身体の未来が決まるわけではありません。
画像に何が写っているか。症状がどこに出ているか。神経の働きに変化があるか。生活の中で何が困っているか。時間とともにどう変わっているか。
そこまで見て、ようやく今の状態が少しずつ見えてきます。
参考
- Japanese Orthopaedic Association clinical practice guidelines on the management of lumbar disc herniation, 2021: Diagnosis
The Essence of Clinical Practice Guidelines for Lumbar Disc Herniation, 2021: 3. Diagnosis - Chiu CC, et al. Clinical Rehabilitation, 2015
The probability of spontaneous regression of lumbar herniated disc: a systematic review - Yu P, et al. Arthritis Research & Therapy, 2022
Characteristics and mechanisms of resorption in lumbar disc herniation
腰や脚の痛み、しびれがあり、自分の場合は動かしてよいのか迷う方は、店舗ページからご相談ください。

瀬谷崎













