特異度とは?「陽性だから確定」と言い切らないための検査の見方
瀬谷崎コラム
「特異度」を知ると、陽性結果を少し冷静に見られる
検査が陽性だったから、その疾患で確定。そう言いたくなる場面はあります。でも、特異度を知ると、陽性結果にも誤りが混ざることが見えてきます。
特異度は、疾患がない人を正しく陰性にできる割合です。特異度が低い検査では、疾患がない人にも陽性が出ることがあります。
徒手検査を学ぶ時、感度と特異度という言葉が出てきます。
どちらも大事ですが、最初はかなり混乱しやすい言葉です。
感度は、疾患がある人をどれくらい拾えるか。
特異度は、疾患がない人をどれくらい正しく陰性にできるか。
今回は、このうち特異度について考えます。
特異度を理解すると、「陽性だから確定」とすぐに言い切る危うさが見えてきます。

まなぶ先生

瀬谷崎
特異度は「ない人をない」と言える力
特異度は、ある疾患を持っていない人のうち、検査が正しく陰性になる人の割合です。
つまり、病気ではない人を、病気ではないと判断できる力です。
ここで大事なのは、特異度は「疾患がない人」を対象にして考えるということです。
疾患がない人に検査をした時、本当に陰性になってくれるか。
これを見る指標です。
ある疾患を有しない人のうち、検査結果が陰性になる人の割合。言い換えると、疾患がない人を誤って陽性にしにくい力です。
特異度が高い検査では、疾患がない人が陽性になりにくくなります。
そのため、特異度が高い検査で陽性が出た場合、「これはその疾患である可能性が高そうだ」と考えやすくなります。
英語では、SpPinという覚え方をすることがあります。
Specificityが高い検査でPositiveなら、その疾患をrule inしやすい、という意味です。
SLRテストで考える特異度
例として、腰椎椎間板ヘルニアに対するSLRテストを考えます。
ここでは、SLRテストの特異度が52%だったとします。
この場合、ヘルニアではない人100人にSLRテストを行うと、52人は正しく陰性になります。
これを真陰性と呼びます。
一方で、残りの48人はヘルニアではないのに陽性になってしまいます。
これを偽陽性と呼びます。
| 対象 | 検査結果 | 意味 |
|---|---|---|
| ヘルニアではない100人 | 52人が陰性 | 正しく陰性になった。真陰性。 |
| ヘルニアではない100人 | 48人が陽性 | 疾患がないのに陽性になった。偽陽性。 |
この数字を見ると、SLRテストが陽性だったからといって、すぐにヘルニアと確定できないことが分かります。
ヘルニアではない人にも、かなりの割合で陽性が出るからです。
特異度が低い検査の陽性は、「疑う材料」にはなっても、「確定の材料」としては弱いことがあります。
偽陽性を考えると、陽性結果を鵜呑みにしにくくなる
臨床では、検査が陽性になると少し安心したくなります。
「やっぱりこれだ」と思いやすいからです。
でも、特異度が低い検査では、疾患がない人にも陽性が出ます。
つまり、陽性結果の中には、間違いが混ざります。
この間違いが、偽陽性です。
陽性が出た時ほど、「この検査は特異度が高いのか」「偽陽性はどれくらい起こるのか」を考える必要があります。
偽陽性を考えないと、患者さんに必要以上の不安を与えることがあります。
たとえば、検査が陽性だっただけで「ヘルニアです」と強く言ってしまう。
本当は別の要因かもしれないのに、患者さんは「自分はヘルニアなんだ」と思い込んでしまう。
これは、説明としてかなり危ないです。
特異度が高い検査は、陽性の意味が強くなる
一方で、特異度が高い検査で陽性が出た場合は、その疾患である可能性を強く考えやすくなります。
なぜなら、疾患がない人には陽性が出にくいからです。
疾患がない人にほとんど陽性が出ない検査で陽性が出たなら、「これはその疾患っぽい」と考えやすい。
これが、特異度を臨床で使う時の大事なポイントです。

まなぶ先生

瀬谷崎
特異度は、陽性結果をどう見るかに関わります。
ただし、万能ではありません。
検査のやり方、患者さんの状態、検査前にどれくらいその疾患を疑っていたかによって、結果の意味は変わります。
感度と特異度を混ぜない
感度と特異度は、似ているようで役割が違います。
感度が高い検査は、疾患がある人を拾いやすい検査です。
そのため、陰性だった時に「その疾患はなさそう」と考えやすくなります。
特異度が高い検査は、疾患がない人を正しく陰性にしやすい検査です。
そのため、陽性だった時に「その疾患っぽい」と考えやすくなります。
| 指標 | 見ているもの | 臨床で使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 感度 | 疾患がある人を陽性にできるか | 陰性なら除外しやすい |
| 特異度 | 疾患がない人を陰性にできるか | 陽性なら特定しやすい |
この2つを混ぜると、検査結果の解釈がズレます。
感度が高い検査で陽性だから確定、とは言いにくい。
特異度が高い検査で陰性だから除外、というのも少し違います。
それぞれの得意な使い方を分けて考えることが大切です。
検査結果は、単独で答えを出すものではない
特異度を知ると、検査の陽性結果を少し冷静に見られるようになります。
陽性だからすぐ確定ではない。
その検査は、疾患がない人にも陽性が出やすいのか。
それとも、疾患がない人にはほとんど陽性が出ないのか。
ここで、陽性結果の重みが変わります。
- 特異度は、疾患がない人を陰性にできる割合
- 特異度が低い検査では、偽陽性が起こりやすい
- 特異度が高い検査で陽性なら、疾患を特定しやすい
- 陽性結果だけで、すぐに病名を決めつけない
- 問診や他の検査と合わせて総合的に判断する
徒手検査は便利です。
でも、検査は答えを出す魔法ではありません。
検査結果をどう解釈するかまで含めて、臨床推論です。
陽性の中にも、間違いは混ざる
特異度を学ぶ意味は、陽性結果を疑うためだけではありません。
陽性結果を、適切な重さで扱うためです。
特異度が高い検査なら、陽性結果は強い材料になります。
特異度が低い検査なら、陽性結果だけで決めつけるのは危険です。
この違いを知っているだけで、患者さんへの説明も変わります。
「この検査が陽性なので、可能性が高くなります」
「ただ、これだけで確定ではないので、他の所見と合わせて見ます」
こういう説明ができると、検査は患者さんを不安にさせる道具ではなく、状態を整理するための材料になります。

瀬谷崎












