陽性的中率・陰性的中率とは?検査結果を「当たり」と決めつけないための見方
瀬谷崎コラム
検査が「当たる」とは、どういうことか
検査が陽性だった。検査が陰性だった。そこで終わらず、その結果がどれくらい本当なのかを見るのが、陽性的中率と陰性的中率です。
陽性的中率は「陽性の人の中で本当に疾患がある割合」、陰性的中率は「陰性の人の中で本当に疾患がない割合」です。検査結果を患者さんに説明する時ほど大事になる考え方です。
感度や特異度は、検査そのものの性格を見るための指標です。
一方で、陽性的中率と陰性的中率は、検査結果が出た後に、その結果をどう解釈するかに関わります。
つまり、目の前の患者さんに検査をして、陽性または陰性という結果が出た後の話です。
ここを混同すると、検査結果を強く言いすぎたり、逆に見落としのリスクを軽く見たりしてしまいます。

まなぶ先生

瀬谷崎
陽性的中率は「陽性の中で、本当に疾患がある割合」
陽性的中率は、検査で陽性になった人の中で、本当に疾患がある人の割合です。
英語ではPPVと呼ばれます。
たとえば、ある検査で真陽性が85人、偽陽性が48人だったとします。
真陽性は、本当に疾患があり、検査でも陽性になった人です。
偽陽性は、本当は疾患がないのに、検査で陽性になってしまった人です。
陽性的中率は、真陽性を「陽性になった人全体」で割って計算します。
陽性になった人全体は、真陽性85人と偽陽性48人を合わせた133人です。
その中で、本当に疾患がある人は85人です。
つまり、85 ÷ 133 × 100 で、陽性的中率は約64%になります。
この場合、検査で陽性になっても、本当に疾患がある確率は約64%ということです。
陰性的中率は「陰性の中で、本当に疾患がない割合」
陰性的中率は、検査で陰性になった人の中で、本当に疾患がない人の割合です。
英語ではNPVと呼ばれます。
たとえば、ある検査で真陰性が52人、偽陰性が15人だったとします。
真陰性は、本当に疾患がなく、検査でも陰性になった人です。
偽陰性は、本当は疾患があるのに、検査で陰性になってしまった人です。
陰性的中率は、真陰性を「陰性になった人全体」で割って計算します。陰性という結果が、どれくらい信用できるかを見る指標です。
陰性になった人全体は、真陰性52人と偽陰性15人を合わせた67人です。
その中で、本当に疾患がない人は52人です。
つまり、52 ÷ 67 × 100 で、陰性的中率は約78%になります。
この場合、検査で陰性になっても、本当に疾患がない確率は約78%ということです。
的中率は、検査結果を基準にして考える
ここで混乱しやすいのが、感度や特異度との違いです。
感度や特異度は、疾患がある人、疾患がない人を基準にして考えます。
一方で、陽性的中率と陰性的中率は、検査結果を基準にして考えます。
この向きの違いが大事です。
| 指標 | 何を基準に見るか | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 感度 | 疾患がある人 | 疾患がある人を陽性にできる割合 |
| 特異度 | 疾患がない人 | 疾患がない人を陰性にできる割合 |
| 陽性的中率 | 検査で陽性になった人 | 陽性の中で、本当に疾患がある割合 |
| 陰性的中率 | 検査で陰性になった人 | 陰性の中で、本当に疾患がない割合 |
感度と陽性的中率は、言葉だけ見ると似ています。
でも、見ている方向はまったく違います。
「疾患がある人が陽性になる割合」と「陽性の人が疾患を持っている割合」は、同じではありません。
陽性でも、確定とは限らない
今回の例では、陽性的中率は約64%です。
これは、検査で陽性になった人のうち、約64%は本当に疾患があるという意味です。
逆に言えば、約36%は疾患がないのに陽性になっている可能性があります。
つまり、陽性という結果だけで、すぐに病名を確定するのは危険です。

まなぶ先生

瀬谷崎
陽性結果は、もちろん大事な情報です。
ただし、陽性結果の中には偽陽性が混ざります。
その割合を数字として見られるのが、陽性的中率です。
陰性でも、見逃しがゼロとは限らない
陰性的中率も同じです。
今回の例では、陰性的中率は約78%です。
これは、検査で陰性になった人のうち、約78%は本当に疾患がないという意味です。
逆に言えば、約22%は本当は疾患があるのに、陰性になっている可能性があります。
陰性だから完全に安心、とは言い切れません。
陰性的中率が高いほど、陰性結果は安心材料になります。ただし、100%でない限り、問診や経過、他の所見と合わせて判断する必要があります。
特に、見逃してはいけない疾患が疑われる場合は、陰性結果だけで安心しすぎないことが大切です。
検査は、確率を動かす材料であって、ひとつで答えを出すものではありません。
患者さんへの説明も変わる
的中率を知っていると、患者さんへの説明も変わります。
「この検査が陽性なので、この疾患です」と言い切るのではなく、
「この検査が陽性なので、その可能性は高まります。ただし、これだけで確定ではありません」
と説明できます。
陰性の場合も同じです。
「陰性なので絶対に違います」ではなく、
「この検査では可能性は下がりますが、他の情報も合わせて見ます」
と伝えられます。
- 陽性的中率は、陽性結果がどれくらい本当かを見る
- 陰性的中率は、陰性結果がどれくらい本当かを見る
- 感度・特異度とは計算の向きが違う
- 陽性でも偽陽性は混ざる
- 陰性でも偽陰性は混ざる
- 検査結果は、問診や他の所見と合わせて判断する
こういう説明ができると、検査は患者さんを決めつける道具ではなく、状態を整理するための材料になります。
不確実性を隠さず、でも必要以上に不安をあおらない。
そのバランスが、臨床ではとても大事です。
検査結果は、確定ではなく確率を動かす材料
陽性的中率と陰性的中率を学ぶ意味は、検査を疑うためだけではありません。
検査結果を、適切な重さで扱うためです。
陽性なら、どれくらい本当に疾患がありそうなのか。
陰性なら、どれくらい本当に疾患がなさそうなのか。
そこを数字で考えると、検査結果への向き合い方が変わります。
検査は大切です。
でも、検査だけで人の身体をすべて言い切ることはできません。
問診、経過、他の所見、リスクの高さを合わせて、総合的に判断する。
そのための入口として、的中率はとても大切な考え方です。

瀬谷崎












