腰椎椎間板ヘルニアの評価で大切なこと。SLRテストだけで決めつけない見方
セラピスト向け
SLRテストだけで、ヘルニアを決めつけない
腰椎椎間板ヘルニアの評価では、徒手検査がよく使われます。ただ、検査が陽性だったからヘルニア、陰性だったから違う、というほど臨床は単純ではありません。
評価で大切なのは、問診、神経学的所見、下肢伸展挙上テスト(SLR)、クロスドSLRテスト、画像所見を分けて見ながら、総合的に可能性を見積もることです。
腰椎椎間板ヘルニアが疑われる時、下肢伸展挙上テスト(SLR)はかなり有名です。
仰向けで脚を上げる。痛みやしびれが出る。ヘルニアかもしれない。
学校でも現場でも、よく出てくる検査です。
でも、ここで止まると危ないです。
下肢伸展挙上テスト(SLR)が陽性だからヘルニア。下肢伸展挙上テスト(SLR)が陰性だからヘルニアではない。そういう二択で扱う検査ではありません。
少し辛口に言うと、検査名を知っていることと、検査を臨床で使えていることは別です。

まなぶ先生

瀬谷崎
まずは問診で、どれくらい疑うかを見積もる
ヘルニアの評価で、いきなり徒手検査に入るのはもったいないです。
問診でかなり大事な情報が取れます。
下肢への放散痛があるのか。しびれはどこに出ているのか。咳やくしゃみで悪化するのか。腰を曲げる、座る、歩くなどでどう変わるのか。
こうした情報は、検査前の見積もりを作る材料になります。
つまり、検査をする前に「そもそもどれくらいヘルニアっぽいのか」を考えるわけです。
下肢痛の範囲、しびれ、感覚の変化、筋力低下、咳やくしゃみでの悪化、楽になる姿勢、発症の経過、生活で困っている動作などを確認します。
検査の精度だけを勉強しても、問診が雑だと臨床判断は雑になります。
検査は、問診で作った仮説を少し修正するために使うものです。
画像検査も、絶対の答えではない
ヘルニアの確認では、磁気共鳴画像検査(MRI)などの画像検査が使われます。
画像は重要です。整骨院だけで抱え込まず、必要な時に医療機関で確認することは大切です。
ただし、画像も万能ではありません。
画像でヘルニアが見つかっても、それが今の症状の主な原因とは限りません。
逆に、症状があるのに画像所見がはっきりしないこともあります。
画像所見、問診、神経学的所見、徒手検査。それぞれを合わせて見ていく必要があります。
画像を軽く見るのも違いますし、画像だけで全部を説明するのも違います。強い情報ほど、扱い方が大事です。
下肢伸展挙上テスト(SLR)は、見逃しを減らす方向で使う
下肢伸展挙上テスト(SLR)は、腰椎椎間板ヘルニアや神経根症状の評価でよく使われます。
一般的には、感度が高めで、特異度は低めとされることが多い検査です。
つまり、下肢伸展挙上テスト(SLR)が陰性なら、ヘルニアの可能性を低く見積もる材料になります。
一方で、陽性だったからといって、それだけでヘルニアの関与を強く特定できるわけではありません。
| 検査 | よく言われる傾向 | 臨床での使い方 |
|---|---|---|
| 下肢伸展挙上テスト(SLR) | 感度が高め、特異度は低め | 陰性なら可能性を低く見積もる材料。陽性だけで決めつけない |
| クロスドSLRテスト | 感度は低め、特異度が高め | 陽性ならヘルニアの関与を疑う材料として重みがある |
| 徒手筋力検査(MMT)・深部腱反射 | 単独ではばらつきがある | 左右差や他の所見と合わせて総合的に見る |
下肢伸展挙上テスト(SLR)で症状が出る角度や、出る症状の場所も大事です。
太ももの裏がつっぱるだけなのか、いつもの下肢痛やしびれが再現されるのか。腰だけが痛いのか。足首の背屈や頸部の動きで変化するのか。
「上げたら痛い」だけでは情報が足りません。
クロスドSLRテストは、陽性の重みが違う
クロスドSLRテストは、症状のない側、または軽い側の脚を上げた時に、反対側の症状が誘発されるかを見る検査です。
SLRに比べると、陽性になる人は多くありません。
ただ、陽性になった場合は、腰椎椎間板ヘルニアの関与を疑う材料として重みがあります。
感度が低めで特異度が高め、という方向の検査だからです。
ここで大事なのは、「陰性だから安心」ではありません。
陽性だった時に意味が強い検査、という捉え方です。
下肢伸展挙上テスト(SLR)は陰性の時に可能性を低く見積もる材料として、クロスドSLRテストは陽性の時に関与を疑う材料として使いやすい。検査ごとに見るべき方向が違います。
神経学的所見は、単独で決めない
ヘルニアの評価では、感覚、筋力、反射を確認します。
どの神経根が関わっていそうかを考える上で、デルマトーム、ミオトーム、深部腱反射は大切です。
ただし、教科書通りにきれいに出るとは限りません。
神経の支配には個人差や重なりがあります。
反射も、もともとの出やすさに差があります。
だから、健側との比較や、複数所見の一致を見ることが大切です。
L4の目安
筋力:大腿四頭筋などを確認します。
反射:膝蓋腱反射が参考になります。
注意:膝そのものの問題など、他の要因も合わせて見ます。
L5の目安
筋力:前脛骨筋、長母趾伸筋などを確認します。
反射:代表的な深部腱反射ははっきりしません。
注意:筋力、感覚、症状の分布を組み合わせて見ます。
S1の目安
筋力:下腿三頭筋、ハムストリングスなどを確認します。
反射:アキレス腱反射が参考になります。
注意:左右差と経過を見ながら判断します。
徒手筋力検査(MMT)や反射だけで話を終わらせるのではなく、問診や下肢伸展挙上テスト(SLR)、症状の分布と合わせて見ます。
神経学的所見は強い情報ですが、単独で万能ではありません。

まなぶ先生

瀬谷崎
評価は、ひとつずつ確率を動かす作業
ヘルニアの評価は、ひとつの検査で決めるものではありません。
問診で疑う。下肢伸展挙上テスト(SLR)で可能性を低く見積もれるかを見る。クロスドSLRテストで関与を疑う材料を探す。筋力、感覚、反射を見る。必要なら医療機関で画像や専門的な確認を受ける。
情報を足しながら、少しずつ見立てを更新していく作業です。
これをすっ飛ばして「SLR陽性だからヘルニアです」と言うと、患者さんは不安になります。
逆に、「画像でヘルニアがあるけど関係ありません」と軽く言い切るのも危ないです。
強く言い切るより、どの所見から何を疑っているのかを説明できる方が、臨床としては誠実です。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、腰椎椎間板ヘルニアが疑われる方に対して、まず問診を丁寧に行います。
痛みやしびれの範囲、力の入りにくさ、症状が強くなる動作、楽になる姿勢、生活で困っていることを確認します。
その上で、必要な検査を行い、神経症状の有無や生活への影響を見ます。
整骨院で対応できる範囲なのか、医療機関での確認が必要な可能性があるのかも考えます。
検査結果を単独で強く言いすぎない。問診、動き、神経所見、画像所見を合わせて、その人に必要な説明と対応を考えます。
こんな症状は医療機関での確認も考えます
- 足に力が入りにくくなっている
- しびれや感覚の低下が強い、または広がっている
- 排尿・排便の異常がある
- 安静にしていても強い痛みが続く
- 発熱、外傷、がんや感染を疑う背景がある
- 痛みが急激に悪化して生活に大きな支障が出ている
不安をあおるためではありません。
必要な時に必要な場所へつなぐために、こうしたサインを見ます。
検査は、患者さんを見るためにある
下肢伸展挙上テスト(SLR)も、クロスドSLRテストも、徒手筋力検査(MMT)も、反射も大事です。
ただ、それらは患者さんを分類するためのスタンプではありません。
痛みの出方を聞き、しびれの範囲を見て、筋力や反射を確認し、必要な時は医療機関へつなぐ。
その中で、検査は見立てを助ける道具です。
ヘルニアかどうかを言い当てることだけが目的ではありません。
その人が今どんな状態で、どこまで動かしてよくて、何に気をつけるべきかを考えるために使います。

瀬谷崎
参考
- van der Windt DA, et al. Physical examination for lumbar radiculopathy due to disc herniation in patients with low-back pain. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2010.
Cochrane - Scaia V, Baxter D, Cook C. The pain provocation-based straight leg raise test for diagnosis of lumbar disc herniation, lumbar radiculopathy, and/or sciatica. 2012.
PubMed - Xu R, et al. Value of imaging examinations in diagnosing lumbar disc herniation: A systematic review and meta-analysis. 2022.
PMC - MSD Manual Professional Edition. Lumbar Disc Herniation.
MSD Manual













