腰痛・坐骨神経痛を見極める評価法

SLRテストの落とし穴と最新エビデンス
腰痛・坐骨神経痛をどう見極めるか

SLRテストは、陽性だからといって「ヘルニア確定」とは言えません。この動画の内容をもとに、検査精度、正しい手順、構造的分化、評価で本当に見るべきポイントを整理します。

この記事について

この記事は、当院YouTubeチャンネルで公開している解説動画を、臨床評価の参考資料として整理したものです。SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)は、医師による画像診断や神経学的検査とあわせて用いる徒手的な評価検査の一つであり、本記事の内容は施術前の状態把握や評価精度向上を目的とした情報共有を意図しています。確定診断は医療機関で行われます。

結論:SLRテストは、陽性だけで原因を断定する検査ではなく、陰性であれば神経根症状の可能性を低く見積もる材料として使いやすい検査です。

SLRテストは、腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症状(L5・S1領域、腰椎から下肢に伸びる神経の根元が刺激されることで起きる痛みやしびれ)を評価する代表的な検査です。ただし、検査結果は「角度」だけで判断せず、患者さんが普段感じている症状の再現と、追加操作による症状変化を合わせて見る必要があります。

なぜ今、SLRテストを見直す必要があるのか?

SLRテストは臨床で広く使われている一方で、解釈を誤ると「神経症状なのか、筋肉の張りなのか」を見分けにくい検査でもあります。

特に重要なのは、感度(その状態の人で陽性となる確率)は高いが、特異度(その状態でない人で陰性となる確率)は低いという点です。陰性であれば腰椎椎間板ヘルニアの可能性を下げる材料になりやすい一方、陽性だけでヘルニアと断定するには不十分で、画像所見など他の情報と合わせた総合的な判断が必要になります。

SLRテストの検査精度

動画内では、2010年のコクランレビュー、2023年の第3相研究、さらに構造的分化を組み合わせた研究が紹介されています。

2010年
コクランレビュー
感度:92%
特異度:28%
陰性なら可能性を下げる材料にしやすい一方、陽性だけで断定するには弱い。
2023年
第3相研究
感度:89%
特異度:25%
日常臨床に近い患者群で検証しても、特異度は低い。
高齢者での報告 感度:33%まで低下する場合あり
特異度:状況により変動
高齢者では陰性でも他所見との総合判断が必要。
2021年
構造的分化の組み合わせ
感度:61%
特異度:75%
感度は下がるが、特異度が上がり、神経由来かどうかの見極めに役立つ。
ポイント

SLRテストは「ヘルニアを見つけるための単独検査」というより、まずは神経根症状の可能性を低く見積もれるかを確認し、そのうえで構造的分化や他の検査と組み合わせて評価精度を高めるための検査として位置づけると実用的です。

正しいSLRテストの手順と従来の判定

患者さんを仰向けにし、検者が足関節またはかかとを保持して、膝を伸ばしたままゆっくり脚を持ち上げます。

  1. 開始肢位を整える患者さんは仰向けになり、身体の力を抜いた状態を作ります。検査中に骨盤が過度に動くと、下肢挙上角度や症状の出方が変わるため、腰部・骨盤帯が大きく代償しないように確認します。
  2. 膝を伸ばしたまま下肢を挙上する検者は足関節または踵を保持し、膝関節が屈曲しないように注意しながら、下肢をゆっくり挙上します。急に持ち上げると防御性収縮や不必要な疼痛反応が入りやすいため、症状の変化を確認できる速度で行います。
  3. 症状の再現と角度を確認する従来は30〜70度の範囲で臀部から下肢への放散痛が誘発される場合に陽性と判断されてきました。ただし、角度そのものよりも、患者さんが普段訴えている症状が再現されるかを重視します。
注意点

脚を上げて痛みが出たとしても、それが神経由来なのか、ハムストリングスなど筋肉の張りなのかは、この時点ではまだ判断しきれません。

精度を高める「構造的分化」とは?

SLRテストで下肢後面の張りや痛みが出たとしても、それだけで神経系の問題とは判断できません。ハムストリングスの伸張痛、股関節周囲組織の制限、腰椎・骨盤帯の代償などでも、似たような反応が出るためです。

そこで重要になるのが構造的分化(症状が出ている姿勢を保ったまま、別の部位に追加操作を加えて症状が変化するかを確認する手法)です。神経系に張力が加わる操作で症状が明らかに変化するなら、単なる筋の伸張ではなく、神経系の関与を疑う材料になります。

臀部・太ももに症状がある場合

SLRで臀部から大腿後面に症状が出る場合は、下肢挙上位を保持したまま足関節を背屈させます。足関節背屈によって神経系への張力が増え、臀部や大腿部の症状が明らかに強まる場合は、神経系の関与を示唆する所見として扱えます。

膝下に症状がある場合

膝下、ふくらはぎ、足部に症状が出る場合は、股関節内旋を加えて症状変化を確認します。膝下のしびれや痛みが増減する場合、末梢まで連続する神経系の機械的感受性を評価するうえで有用です。

追加操作によって症状が3割以上強くなる、または明らかな変化がある場合は、神経系の関与を疑う所見として扱いやすくなります。変化がなければ、筋肉など他組織の影響も考えます。

角度よりも「症状の再現」を重視する

従来のSLRテストでは、30〜70度という角度が判定基準として使われてきました。しかし、2022年のレビューでは、検者間で測定角度に13〜20度の差が出ることが示され、角度だけを基準にすることの限界が指摘されています。

現在の推奨は、角度ではなく「いつもの症状が再現されるか」を見ること。

大切なのは、患者さんが普段感じている腰痛・臀部痛・足のしびれが、SLRテストで再現されるかどうかです。さらに、足関節背屈や股関節内旋などの構造的分化によって、その症状が変化するかを確認します。

こんな症状がある方はご相談ください

  • 腰からお尻、太もも、ふくらはぎにかけてしびれがある
  • 片側の足だけ痛みやしびれが強い
  • 長時間座ると足のしびれや痛みが増える
  • 前かがみ、立ち上がり、歩行で症状が強くなる
  • ストレッチをしても変わらない、または悪化する
  • 検査や説明を受けても、原因がよく分からないまま通院している
重要

医療機関の受診が必要な場合:足に力が入りにくい、排尿・排便の異常がある、強いしびれが急に出た、発熱や外傷を伴う強い痛みがある場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。

関連疾患の症例報告

SLRテストと関連しやすい症状の症例を見る

SLRテストは、腰から足にかけての痛み・しびれを評価する際に使われます。検査の考え方を理解したら、実際の症例報告で、どのような症状や生活上の困りごとがあるのかを確認してみてください。

※症例には個人差があります。症状の確認や施術方針は、問診・検査をもとに判断します。

SLRテストは「総合判断」の一部

SLRテストは、腰椎椎間板ヘルニアや坐骨神経痛の評価で役立つ検査です。しかし、陽性だけで原因を断定する検査ではありません。

重要なのは、感度・特異度の特徴を理解したうえで、患者さんのいつもの症状が再現されるか、追加操作で症状が変化するか、他の所見と矛盾しないかを確認することです。

とんとん整骨院では、痛みのある場所だけでなく、身体全体の状態や動きのクセを確認し、症状の背景を見極めることを大切にしています。

読みもの

瀬谷崎コラム

施術・検査の解説

とんとんブログ

電話
タップで電話がかかります
LINE
24時間予約受付中
東武練馬店
ときわ台店
下板橋店
南浦和店