SLRテストとは?腰痛・足のしびれを見るときの基本と注意点

脚を上げて痛みが出たら、何を見る?
SLRテストの使い方を整理

SLRテストは、角度だけで判断する検査ではありません。いつもの症状が再現されるか、追加操作で症状が変わるかまで見ることで、評価の精度が変わります。

この記事について

SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)は、腰痛・坐骨神経痛・足のしびれなど、腰から下肢にかけての症状を評価する際に用いられる徒手検査です。ここでは、基本手順、検査精度、構造的分化、角度だけで判断しない理由、MMT・腱反射・知覚検査など他の神経学的所見とのつなげ方をまとめています。

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伊藤聡史

SLRテストは、腰椎椎間板ヘルニアや坐骨神経痛を疑う場面でよく使われる検査です。ただし、脚を上げて痛みが出たかどうかだけでは不十分です。いつもの症状の再現と、追加操作による変化まで合わせて評価します。

結論:SLRテストは、陽性だけで原因を決める検査ではなく、症状の再現と構造的分化を合わせて見る検査として扱うのが実用的です。

SLRテストは、腰椎椎間板ヘルニアや坐骨神経痛のような、腰から足にかけての症状を評価する場面でよく使われる検査です。仰向けで膝を伸ばしたまま脚を上げ、痛みやしびれが再現されるかを確認します。

ただ、脚を上げて痛みが出たからといって、それだけで神経由来と決めることはできません。ハムストリングスの張り、股関節周囲の硬さ、骨盤や腰部の代償でも似たような反応が出るためです。

SLRテストで何を見るのか?

SLRテストで見たいのは、単に「何度まで脚が上がるか」ではありません。大切なのは、患者さんが普段感じている腰痛、臀部痛、太ももやふくらはぎの痛み・しびれが、検査中に再現されるかどうかです。

主に見る症状 腰からお尻、太もも後面、ふくらはぎ、足部にかけての痛みやしびれ。
L5・S1領域の神経根症状を考える際に用いられます。
注意したい反応 下肢後面の張りだけでは、神経系の関与とは言い切れません。
ハムストリングスなど筋・筋膜由来の伸張感と区別して考えます。
見るべきポイント 角度、症状の部位、いつもの症状との一致、追加操作による変化、他の神経学的所見との整合性を確認します。

SLRテストは「脚が何度上がったか」より、「そのとき何が起きたか」を見る検査です。いつもの症状と違うただの張りなら、読み方は変わります。

検査精度とエビデンスの見方

動画内では、2010年のコクランレビュー、2023年の第3相研究、さらに構造的分化を組み合わせた研究が紹介されています。共通するポイントは、感度は高いが、特異度は低いということです。

2010年
コクランレビュー
感度:92%
特異度:28%
陰性であれば可能性を下げる材料になりやすい一方、陽性だけで原因を決めるには弱い数値です。
2023年
第3相研究
感度:89%
特異度:25%
日常臨床に近い患者群でも、同じように「感度は高く、特異度は低い」傾向が示されています。
高齢者での報告 感度:33%まで低下する場合あり
年齢や対象によって精度は変わります。陰性だからといって安心しすぎず、他の所見と合わせて見ます。
2021年
構造的分化の組み合わせ
感度:61%
特異度:75%
足関節背屈や股関節内旋などを組み合わせることで、神経系の関与を考える材料が増えます。
整理

SLRテストは、陰性であれば神経根症状の可能性を低く見積もる材料になりやすい検査です。一方で、陽性だけで原因を決めるには弱いため、構造的分化や他の神経学的所見と合わせて読みます。

SLRテストの基本手順

SLRテストは、患者さんを仰向けにして行います。検者は足関節または踵を保持し、膝を伸ばしたまま、ゆっくり下肢を挙上します。

  1. 開始肢位を整える患者さんは仰向けになり、身体の力を抜きます。検査中に骨盤や腰部が大きく動くと反応が変わるため、代償が入りすぎないように確認します。
  2. 膝を伸ばしたまま下肢を挙上する検者は足関節または踵を保持し、膝が曲がらないように注意しながら、ゆっくり脚を上げます。急に持ち上げると防御性の反応が入りやすくなります。
  3. 症状の部位と再現性を確認する従来は30〜70度で臀部から下肢への放散痛が出る場合に陽性とされてきました。ただし、今は角度そのものよりも、患者さんのいつもの症状が再現されるかを重視します。
注意点

下肢後面が張るだけなら、ハムストリングスなど筋肉の伸張感かもしれません。この時点では、神経由来か筋・関節由来かをまだ決めきれません。

構造的分化で症状の変化を見る

構造的分化とは、症状が出ている姿勢を保ったまま、別の部位に追加操作を加えて症状が変化するかを確認する方法です。神経系に張力が加わる操作で症状が明らかに変化するなら、単なる筋の張りではなく、神経系の関与を疑う材料になります。

臀部・太ももに症状がある場合

SLRで臀部から大腿後面に症状が出る場合は、下肢挙上位を保ったまま足関節を背屈させます。背屈によって症状が強まる、または明らかに変化する場合、神経系の機械的感受性を考える材料になります。

膝下に症状がある場合

膝下、ふくらはぎ、足部に症状が出る場合は、股関節内旋を加えて症状の変化を確認します。膝下のしびれや痛みが増減する場合、下肢全体に連続する神経系の反応として整理しやすくなります。

目安として、追加操作で症状が3割以上強くなる、または明らかな変化がある場合は、神経系の関与を疑う所見として扱いやすくなります。変化がなければ、筋肉など他組織の影響も考えます。

角度よりも「いつもの症状」を見る

従来のSLRテストでは、30〜70度という角度が判定基準として使われてきました。しかし、2022年のレビューでは、検者間で測定角度に13〜20度の差が出ることが示され、角度だけを基準にすることの限界が指摘されています。

SLRテストで大事なのは、角度そのものではなく「いつもの症状が再現されるか」と「追加操作で症状が変わるか」です。

同じ角度でも、出ている反応がハムストリングスの張りなのか、臀部から足への放散痛なのかで意味が変わります。だからこそ、角度、症状の場所、症状の質、構造的分化、他の神経学的所見をまとめて見ます。

関連症状:こんな訴えと合わせて見る

  • 腰からお尻、太もも、ふくらはぎにかけて痛みやしびれがある
  • 片側の足だけ痛みやしびれが強い
  • 長時間座ると足の症状が強くなる
  • 前かがみ、立ち上がり、歩行で症状が変化する
  • ストレッチをしても変わらない、または悪化する
  • MMT、腱反射、知覚検査と合わせて神経学的所見を整理したい
重要

足に力が入りにくい、排尿・排便の異常がある、急に強いしびれが出た、発熱や外傷を伴う強い痛みがある場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。

SLRテストは「症状の再現と変化」を見る検査

SLRテストは、腰から足にかけての痛みやしびれを評価するうえで役立つ検査です。ただし、陽性だけで原因を決める検査ではありません。

重要なのは、患者さんのいつもの症状が再現されるか、足関節背屈や股関節内旋などの追加操作で症状が変わるか、MMT・腱反射・知覚検査など他の所見と矛盾しないかを確認することです。

とんとん整骨院では、痛みのある場所だけでなく、症状の出方、感覚、筋力、反射、動作での変化を合わせて確認し、身体の状態を多角的に見極めることを大切にしています。

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伊藤聡史

SLRテストは、角度だけを見て終わる検査ではありません。症状の再現、構造的分化、他の神経学的所見との整合性まで確認することで、腰痛や足のしびれを評価する材料として活きてきます。

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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