腱症に有効なのは運動療法か受動的介入か。研究が支持する治療の軸

動かして治す腱症。
運動療法を軸に、受動的介入を組み合わせる

腱症(けんしょう)の介入では、物理療法などの受動的な手段が選ばれがちですが、研究は運動療法を治療の軸に据える考え方を支持しています。研究の要点と、アキレス腱症での運動療法の組み立て、痛みが強いときの注意を整理します。

この記事について

腱症は、腱に繰り返し負担がかかって組織が変性する状態です。この記事では、腱症に対して物理療法などの受動的介入と運動療法のどちらが有効かを、系統的レビューなどの研究をもとに整理します。あわせて、アキレス腱症での運動療法の組み立て方、そして炎症や痛みが強いときの注意点をまとめています。

著者アイコン 伊藤聡史

腱症では、物理療法などの受動的な介入が選ばれがちですが、運動療法の併用が大切です。アキレス腱症なら、物理療法に低速度のカーフレイズを合わせるイメージです。ただし、炎症や痛みが強いときは、無理な運動は避けます。

結論:腱症では、受動的介入だけで完結させるより、運動療法を治療の軸に据える考え方が支持されています。そのうえで、腱の状態に合わせて他の保存療法も組み合わせます。

腱の痛みが続くとき、電気やマッサージ、ストレッチといった、受けているだけの介入だけで様子を見てしまうことがあります。もちろんそれらにも役割はありますが、腱症の研究が示しているのは、運動療法を治療の中心に置く考え方の重要性です。

腱症とは:腱の変性と「動かして治す」考え方

腱症は、腱に負担が繰り返しかかることで、腱の組織が変性していく状態です。単純な炎症とは違い、腱そのものの質が変わっていくため、腱の炎症を意味する腱炎とは分けて考えられます。

変性した腱は、適切な負荷をかけることで、少しずつ作り直されていくと考えられています。だからこそ、休ませて受動的な介入だけを続けるより、腱に段階的な負荷をかける運動療法が、回復の土台になります。エキセントリック運動(筋肉が伸びながら力を出す運動)や、ゆっくり負荷をかける運動が、その代表です。

研究は何を示しているか

腱症に対する運動療法と受動的介入を比べた研究を並べると、次のようになります。

Karanasiosら(2021)
外側上顆腱症・30 RCT・n=2,123
運動療法は受動的介入より良好でしたが、効果は小さく、確実性は低いと報告されています。
Maetzら(2023)
中部アキレス腱症・12 RCT・n=543
運動療法が常に上回るとは言えず、評価項目によって差があると報告されています。
アキレス腱診療ガイドライン(2024) 一部の比較では、エキセントリック運動が受動的介入よりVISA-A(アキレス腱症の症状スコア)を改善したとされます。
Cooperら(2023)
腱症全般・204 studies
運動療法は安全で有益であり、必要に応じて他の保存療法の併用も検討するとまとめられています。
研究の読み方

腱症では、受動的介入だけで完結させるより、運動療法を治療の軸に据える考え方が支持されます。ただし、すべての腱症・すべての評価項目で運動療法が一貫して優れるわけではなく、効果が小さい、確実性が低いという報告もあります。過大にも過小にも受け取らず、軸として置くのが実際的です。

出典

Karanasios S, et al. Br J Sports Med. 2021 / Maetz R, et al. Orthop J Sports Med. 2023 / Chimenti RL, et al. J Orthop Sports Phys Ther. 2024 / Cooper K, et al. Health Technol Assess. 2023

運動療法を軸に、受動的介入を組み合わせる

運動療法を軸にするとは、受動的介入を否定することではありません。物理療法などで痛みを和らげながら、その上に運動療法を重ねていく、という組み立てです。

たとえばアキレス腱症では、物理療法などの受動的介入と合わせて、低速度のカーフレイズ(ふくらはぎのかかと上げをゆっくり行う運動)を行うイメージです。段差を使ってかかとを下げるところから始め、腱にかかる負荷を少しずつ調整していきます。

段差の上でカーフレイズを行い、施術者がアキレス腱の状態を確認している様子
アキレス腱症では、段差を使った低速度のカーフレイズを、腱の状態を見ながら少しずつ進めます。

腱の部位や状態によって、適した運動は変わります。外側上顆腱症(テニス肘)や膝蓋腱症など、部位ごとに負荷のかけ方は異なりますが、運動療法を軸に据える考え方は共通しています。腱症の病態そのものについては、腱付着部の炎か症かの記事もあわせてご覧ください。

炎症や痛みが強いときは慎重に進める

運動療法が軸になるとはいえ、どんな状態でも負荷をかけてよいわけではありません。炎症の徴候が強いときや、痛みが強いときに、無理に運動療法を進めるのは避けます。

動かしたときに痛みが強く出る、腫れや熱っぽさがある、といった場合は、まず負荷を落とし、痛みの様子を見ながら段階的に戻していきます。運動療法を軸にすることと、今の状態に合わせて量を調整することは、両立させたい考え方です。

重要

安静にしていても強く痛む、腫れや熱感が続く、力が入らない、急に強い痛みが出て歩けない・動かせないといった場合は、腱症以外の問題も考え、まず医療機関での確認が必要になることがあります。

関連症状:こんな訴えと合わせてみる

  • アキレス腱やかかとの後ろが、動き出しに痛む
  • 肘の外側や内側が、物を持つと痛む
  • 膝のお皿の下が、ジャンプや階段で痛む
  • 安静では楽だが、動かすと決まった場所が痛む
  • 受動的な施術だけでは、なかなか変わらない腱の痛みがある

腱症は、運動療法を軸に組み立てる

腱症は、腱の変性に対して、適切な負荷で腱を作り直していく考え方が土台になります。研究も、受動的介入だけで完結させるより、運動療法を治療の軸に据える方向を支持しています。

そのうえで、効果は腱の部位や評価項目によって幅があり、炎症や痛みの強さに応じた調整も欠かせません。運動療法を軸にしつつ、必要に応じて他の保存療法も組み合わせ、総合的に進めていくのが実際的です。

とんとん整骨院では、腱の部位や痛みの強さ、続けやすさを踏まえて運動療法を組み立て、必要な場合は医療機関での確認につなげることを大切にしています。

著者アイコン 伊藤聡史

受動的な介入は、痛みを和らげる助けにはなりますが、それだけで腱症を仕上げようとすると、遠回りになりがちです。運動療法を軸に置き、状態に合わせて量を調整する。地味ですが、この組み立てが結果につながりやすいと感じています。

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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