アキレス腱症を評価する。中央部腱症と付着部症の違い、断裂の鑑別と漸進的負荷
セラピスト向け
アキレス腱の痛みを、部位と負荷で診る
アキレス腱症は、腱の退行性変化を主体とする痛みで、踵骨付着部から2〜6cm近位の中央部腱症と、踵骨付着部症に分かれます。ランニングや負荷の急増、下腿筋の硬さが関与します。完全断裂の鑑別を押さえ、安静一辺倒でなくエキセントリックを軸とした漸進的負荷で組み立てることが要点になります。
アキレス腱の痛みを「使いすぎ」で済ませず、臨床では病態を部位で分け、評価・鑑別・漸進的負荷に整理します。中央部か付着部かで対応が変わります。
病態:中央部腱症と付着部症
アキレス腱症は、炎症より腱の退行性変化(腱症)が主体です。踵骨付着部から2〜6cm近位に好発する中央部腱症と、踵骨付着部に生じる付着部症に分けられます。付着部症は骨棘や滑液包炎を伴うことがあり、ストレッチや背屈での圧迫が悪化要因になりやすい点が異なります。
運動の始めに痛み、ウォームアップで軽快し、運動後や翌朝にこわばる、という経過が典型です。ランニング距離・強度の急増、下腿三頭筋の硬さ、足部アライメント、加齢が関与します。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎疫学と自然経過(期待値の設定)
ランナーや中年に多く、負荷の急増が引き金になりやすい障害です。多くは漸進的負荷で改善しますが、改善まで数か月かかることもあり、付着部症は中央部より難治の傾向があります。
「腱症は安静で治るものでなく、適切な負荷を段階的にかけることで改善する。時間はかかり、付着部症はより根気がいる」という見通しを共有しておくと、過度な安静や焦りを避けられます。
評価:検査と経過を合わせて判断する
- 圧痛部位:付着部から2〜6cm近位(中央部)か、踵骨付着部か
- 腱の肥厚・結節、運動開始時痛と翌朝のこわばり
- 下腿三頭筋の柔軟性・筋力、ヒールレイズでの痛み
- 足部・下肢アライメント、トレーニング負荷の変化
- 断裂の鑑別:Thompson(トンプソン)テスト、つま先立ちの可否、陥凹
所見は組み合わせて解釈します。断裂を疑う所見があれば負荷を止めて医療機関へ。腱症は部位の見極めが介入設計につながります。
鑑別(外せないもの)
- アキレス腱断裂:受傷時の衝撃感、つま先立ち不能、Thompson(トンプソン)テスト陽性(最優先で除外)
- 付着部の滑液包炎・Haglund(ハグルンド)変形
- 下腿三頭筋の肉離れ(腓腹筋内側頭)
- 踵骨後部の障害、足底腱膜炎(痛みの部位が異なる)
- 血清反応陰性脊椎関節炎による付着部炎(若年・両側・他関節症状)
介入:漸進的負荷を設計する
- 漸進的負荷:エキセントリックを中核に、痛みの許容範囲で段階的に強化
- 付着部症の配慮:深い背屈での圧迫を避け、可動範囲を浅めに設定
- 負荷管理:走行距離・強度・路面の調整、急増を避ける
- 下腿・足部:柔軟性とアライメント、必要に応じてヒールの工夫
- 断裂や難治例は整形外科へ。物理療法は補助的
エキセントリックを中心とした漸進的負荷が中央部腱症で支持されており、安静一辺倒は推奨されません。付着部症は深い背屈で悪化しやすく、可動範囲の配慮が必要です。腱内へのステロイド注射は断裂リスクから避けるべきとされます。受傷時の衝撃感やつま先立ち不能があれば断裂を疑い、医療機関へつなぎます。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎「安静」でなく「部位に合った負荷」を
アキレス腱症は腱症として捉え、中央部か付着部かで負荷の出し方を変えます。断裂の鑑別を先に押さえ、エキセントリックを軸に漸進的負荷で組み立てます。













