腱付着部「炎」か「症」か。エンテソパチーを付着部症として捉え直す

「炎」と呼ぶ前に、付着部の病態を見直す

膝蓋腱や外側上顆に代表される腱付着部の障害は「炎」と呼ばれがちですが、病態の主役は炎症ではありません。命名と病態のずれを整理すると、介入の方向(消炎ではなく負荷の再設計)を選びやすくなります。部位ごとの詳細は各記事に送り、ここでは共通する病態の捉え方に絞ります。

腱付着部の障害を「炎」と「症」の違いから捉え直し、消炎より負荷の設計へ重心を移す考え方を整理します。

病態:炎症は発症の入口だけ

腱付着部症(エンテソパチー)では、炎症が関与するのは発症の初期過程に限られ、病態が進行する過程ではほとんど関与しないとされています。進行を支えるのは、機械的負荷による微細損傷とそれに続く変性(コラーゲン配列の乱れ、血管新生、細胞の変化)です。つまり発症要因は反復負荷による微細損傷や変性であり、腱付着部「炎」ではなく腱付着部「症」の方が病態に近い表現と言えます。

「炎」と呼ぶことのずれ

「炎」という言葉は、消炎(安静・冷却・抗炎症)を治療の中心に置きたくなる連想を生みます。しかし変性が主体の段階では、消炎だけでは腱の耐性は上がりません。むしろ適切な機械的負荷(漸進的負荷)が腱の再構築を促すという考え方が主流です。呼称を「症」に置き換えるだけでも、介入の重心が消炎から負荷の再設計へ移ります。

まなぶ先生まなぶ先生

「腱炎」と書かれていると、つい安静と消炎に寄ってしまいます。

教子先生教子先生

私は熱感が強い急性期だけ消炎を意識して、落ち着いたら負荷に切り替えています。

瀬谷崎瀬谷崎

その切り替えが要点ですね。発症初期に炎症的な反応が出ることはあるけれど、長引いている付着部の痛みはたいてい変性が主体です。だから「炎症を抑える」より「腱が耐えられる負荷に作り直す」方向に置くと、経過が動きやすい。呼び名を「症」に直すのは、その方針転換を自分に思い出させるスイッチでもあります。

部位ごとの付着部症(共通の構図)

  • 膝蓋腱症(ジャンパー膝):膝蓋骨下極の付着部。ジャンプ・着地の反復(膝蓋腱症の評価
  • アキレス腱付着部症:踵骨付着部。中央部腱症との区別が要点(アキレス腱症の評価
  • 足底腱膜症:踵骨内側結節の付着部。朝の第一歩痛(足底腱膜炎の評価
  • 外側上顆(テニス肘)・内側上顆(ゴルフ肘):手関節伸筋・屈筋の起始部

いずれも「反復負荷で付着部に微細損傷と変性が生じる」という同じ構図です。部位が違っても、病態の中心が変性であり、漸進的負荷が再構築を促すという原則は共通します。

評価と介入:消炎より負荷の設計

  • 病期の把握:急性の反応性か、長引く変性主体か
  • 誘発:付着部の圧痛、伸張と収縮での再現
  • 負荷管理:痛みを指標に、等尺性から漸進的に負荷を上げる
  • リスク因子:急な負荷増加、回復不足、アライメント
  • 画像の扱い:変性所見と症状は必ずしも一致しない
ポイント

「炎」という呼称は発症初期の反応を指すには使えても、長引く付着部痛の病態は説明しません。慢性化した付着部痛では、消炎で止めず、腱が耐えられる負荷へ段階的に作り直す視点に切り替えます。

まなぶ先生まなぶ先生

患者さんに「炎症ではない」と説明すると、かえって不安にさせないか心配です。

教子先生教子先生

私は「傷んだ組織を鍛え直す時期」と言い換えると、安静一辺倒から抜けてもらいやすいです。

瀬谷崎瀬谷崎

いい言い換えですね。「炎症を抑えて待つ」ではなく「負荷をかけて作り直す」と伝えると、患者さんの行動も変わります。呼称の話は専門家の中での整理だけれど、それが説明の言葉に下りてくると、安静の取りすぎを防げる。ここは「症」という捉え方が現場まで効いてくる部分だと思います。

「炎」ではなく「症」として組み立てる

腱付着部の障害は、炎症が関与するのは発症過程のみで、進行は変性が主体です。呼称を「症」に置き換えると、介入の重心が消炎から漸進的な負荷の再設計へ移ります。部位ごとの詳細は各記事へ送り、共通の原則として負荷管理を中心に据えます。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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