深部腱反射とは?亢進・減弱を左右差や病的反射と合わせて読む

反射が強い・弱いだけで決めない神経評価
左右差と病的反射まで合わせて読む

深部腱反射は、神経障害を確認する基本的な検査です。ただし、反射の亢進や減弱だけで障害を断定するのではなく、左右差、上下肢差、病的反射、他の神経学的所見と合わせて見ます。

この記事について

この記事は、神経障害の確認で用いられる深部腱反射の読み方を整理したものです。腱反射はメジャーな検査ですが、亢進や減弱は障害がなくても出ることがあります。本記事では、左右差、上下肢差、病的反射、MMTや知覚検査との整合性を含めた判断軸として解説します。

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髙原佑輔

腱反射はよく使う検査ですが、強い・弱いだけで決めると読み間違えます。左右差、上下肢差、病的反射まで合わせて、他の所見と同じ方向を向いているかを見ることが大切です。

結論:深部腱反射は、単独で神経障害を断定する検査ではなく、反射の左右差・上下肢差・病的反射・他所見との整合性で読む検査です。

深部腱反射は、打腱器で腱を叩いたときに起こる筋の反射的な収縮を確認する検査です。膝蓋腱反射、アキレス腱反射、上腕二頭筋反射、上腕三頭筋反射などが代表的で、神経学的評価の基本として使われます。

ただし、反射が強いから必ず中枢神経障害、弱いから必ず末梢神経障害、と単純に決めることはできません。体質、緊張、年齢、検査手技、リラックスの程度でも反応は変わるため、所見の並び方を見る必要があります。

深部腱反射の亢進や減弱を総合的に判断する説明図
深部腱反射は、亢進・減弱だけではなく、左右差、上下肢差、病的反射、他の神経学的所見と合わせて判断します。

深部腱反射とは?

深部腱反射は、筋が急に伸ばされたときに起こる反射を利用した検査です。腱を叩くことで筋が伸張され、その刺激が神経を通って脊髄へ入り、再び筋へ戻ることで反射的な収縮が起こります。

この反射の経路には、感覚神経、脊髄内の反射経路、運動神経、筋、さらに上位中枢からの調整が関わります。そのため、反射の変化は神経系のどこかに問題がある可能性を考える材料になります。

反射が成立する経路 腱を叩く刺激が感覚神経から脊髄へ入り、運動神経を介して筋が収縮します。反射弓のどこに問題があるかで、反応の出方が変わります。
よく見る反射 膝蓋腱反射、アキレス腱反射、上腕二頭筋反射、腕橈骨筋反射、上腕三頭筋反射などがあります。
臨床での役割 神経根障害、末梢神経障害、中枢神経障害などを疑う際に、MMTや知覚検査、病的反射と合わせて確認します。

深部腱反射は、単に「出る・出ない」を見る検査ではありません。どの反射が、どちら側で、どの程度変化しているのかを整理して読みます。

亢進・減弱だけで判断しない

腱反射の結果は、亢進、正常、減弱、消失などで表現されます。一般的には、亢進は上位運動ニューロン障害、減弱や消失は下位運動ニューロン障害や末梢神経障害を考える材料になります。

ただし、ここで注意したいのは、反射の強さには個人差があることです。もともと反射が強い人、全体的に反射が出にくい人、緊張で反応が強くなる人もいます。だからこそ、単発の「強い」「弱い」だけで判断しません。

反射亢進 上位運動ニューロン障害や中枢神経系の関与を疑う材料になります。
ただし、左右差がなく全体的に強い場合や、緊張が強い場合には、単独で病的とは判断しにくいことがあります。
反射減弱・消失 神経根障害、末梢神経障害、下位運動ニューロン障害などを疑う材料になります。
ただし、年齢、リラックス不足、叩打位置のずれ、手技の違いでも出にくくなるため、左右差や他所見と合わせます。
単独所見の限界 反射だけが強い、反射だけが弱い、という場合は判断を急ぎません。
筋力、感覚、病的反射、症状分布、経過と組み合わせて意味を持たせます。
整理

腱反射の亢進や減弱は、神経障害を疑う入口にはなります。ただし、障害がなくても出ることがあるため、所見の左右差や他の神経学的所見との一致を確認します。

まず見るのは左右差

深部腱反射で特に重要なのが左右差です。全体的に反射が強い、または全体的に出にくいだけでは、その人の個人差や検査条件の影響も考えます。一方で、片側だけ明らかに亢進している、片側だけ減弱している場合は、所見としての意味が強くなります。

  • 左右で叩く位置や強さがそろっているか
  • 片側だけ明らかに反射が弱い、または出にくいか
  • 片側だけ明らかに反射が強い、または広がる反応があるか
  • 症状がある側と反射の変化が一致しているか
  • 筋力低下や知覚異常も同じ側に出ているか

左右差は、個人差の影響を減らして所見を読みやすくする材料です。同じ条件で比べて、明らかな差があるかを見ます。

上下肢差でパターンを見る

腱反射は、左右差だけでなく上下肢差も確認します。上肢と下肢で反射の出方が大きく異なる場合、どのレベルの神経系に問題がありそうかを考える材料になります。

たとえば、下肢の反射が両側で亢進し、病的反射や歩行の変化を伴う場合は、中枢神経系や脊髄レベルの関与を考える必要があります。反対に、特定の神経根レベルに対応する反射だけが片側で低下している場合は、神経根や末梢神経の所見として整理しやすくなります。

全体的に強い 体質や緊張の影響も考えます。左右差、病的反射、筋緊張、歩行、筋力低下を合わせて確認します。
下肢だけ強い 脊髄レベルや中枢神経系の関与を考える材料になることがあります。クローヌスやバビンスキー反射なども確認します。
特定の反射だけ弱い 対応する神経根や末梢神経の障害を疑う材料になります。MMT、知覚検査、症状分布との一致を見ます。

病的反射と合わせて読む

深部腱反射の亢進がある場合、病的反射の有無も重要です。病的反射とは、本来は成人では出にくい反射が出現する所見で、中枢神経系の関与を疑う材料になります。

代表的には、バビンスキー反射、クローヌス、ホフマン反射などがあります。深部腱反射が強いだけでなく、病的反射や筋緊張の亢進、歩行障害、巧緻運動障害などが合わさる場合は、より慎重な判断が必要です。

深部腱反射が強い場合は、「強い」だけで終わらず、病的反射や中枢神経系を疑う所見がないかを確認します。

クローヌスは見逃したくない所見

反射が亢進しているだけでなく、反復するような反応がある場合は注意が必要です。特にクローヌスが疑われる場合は、中枢神経系の関与を考え、医療機関での確認が必要になることがあります。

病的反射がなくても総合判断する

病的反射が確認できないからといって、すべて安心とは限りません。症状の進行、筋力低下、感覚障害、歩行の変化、排尿・排便の異常などを合わせて確認します。

他の神経学的所見と一致するか

深部腱反射は、MMTや知覚検査と合わせることで意味が出ます。たとえば、S1領域のしびれがあり、下腿三頭筋の筋力低下があり、アキレス腱反射も片側で減弱しているなら、所見が同じ方向を向いていると考えやすくなります。

一方で、反射だけが変化していて、筋力・感覚・症状分布がまったく一致しない場合は、検査条件や個人差も含めて慎重に見直します。

MMT 反射の変化と同じ神経高位に筋力低下があるかを確認します。痛みによる抑制との区別も必要です。
知覚検査 感覚低下やしびれの範囲が、反射所見と同じ神経領域に近いかを見ます。
誘発テスト SLR、スランプテスト、FNSなどで症状が再現されるか、反射所見と矛盾しないかを確認します。
病歴・経過 いつから、どのように症状が出たか。進行しているか、急性発症か、日常生活で何が困っているかを確認します。

腱反射は、他の検査結果とつながったときに読みやすくなります。反射、筋力、感覚、症状分布が同じ方向を向いているかを確認します。

検査条件もそろえる

腱反射は、検査のやり方で結果がぶれやすい検査でもあります。叩く位置がずれている、腱が適度に伸張されていない、患者さんに力が入っている、左右で叩く強さが違うと、反射の出方が変わります。

  • 患者さんがリラックスできているか
  • 腱を適度に伸張した状態で叩けているか
  • 左右で叩打位置と強さがそろっているか
  • 反射が出にくい場合、増強法を使うか検討したか
  • 検査結果に影響する緊張や痛みがないか
実施時の注意

反射が出にくい場合でも、すぐに異常と決めるのではなく、リラックス、肢位、叩打部位、増強法の有無を確認します。左右差を見るときは、できるだけ同じ条件で比較します。

関連症状:こんな所見と合わせて見る

  • 片側の手足に力が入りにくい
  • しびれや感覚低下が左右どちらかに偏っている
  • 歩きにくい、つまずきやすい、足が突っ張る
  • 腱反射に明らかな左右差がある
  • 病的反射やクローヌスが疑われる
  • MMTや知覚検査と反射所見が同じ方向を向いている
重要

急な脱力、歩行障害、排尿・排便の異常、広範囲の感覚障害、病的反射が疑われる所見がある場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。

深部腱反射は「差」と「組み合わせ」で読む

深部腱反射は、神経障害を確認するうえで基本となる検査です。しかし、反射の亢進や減弱だけで障害を断定することはできません。

大切なのは、左右差があるか、上下肢差があるか、病的反射を伴うか、MMTや知覚検査、症状分布と同じ方向を向いているかを確認することです。

とんとん整骨院では、反射だけを切り取って判断するのではなく、筋力、感覚、症状の経過、動作での変化を合わせて確認し、身体の状態を多角的に見極めることを大切にしています。

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髙原佑輔

反射は単独で白黒をつける検査ではありません。左右差や上下肢差があり、そこに病的反射や筋力・感覚の変化が重なるか。そこまで見ると、所見としてかなり使いやすくなります。

髙原佑輔
株式会社とんとん/とんとん整骨院。店舗統括・物理療法指導責任者。柔道整復師。

2014年より整形外科に勤務し、骨折・捻挫など多数の外傷症例を経験。勤務先で出会った患者の「私、ここの病院に30年通ってるの」という一言をきっかけに、「症状を抑え続ける」のではなく「通院に頼らない身体づくり」を追求するようになる。その後、大手整骨院グループの技術統括責任者を経て現職。現在は、とんとん整骨院グループを統括し、物理療法の品質管理・スタッフ指導を担うほか、noteでは物理療法やテーピングに関する技術情報の発信にも取り組んでいる。

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