凍結肩の夜間痛で眠れない患者にできること。鑑別の見直しと不安への説明
セラピスト向け
眠れない肩には、施術以外の手も並べる
凍結肩の可動域は良くなってきているのに、夜間痛が強くて眠れない。施術の手応えと患者さんの満足がずれていくとき、何を足せるか。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に出た相談をもとに、鑑別の見直しから物理療法の設定、不安への説明までを並べます。
相談のもとになったのは、40代半ばの女性で、ここ最近の中では重症度の高い凍結肩の疑いというケースでした。来院までの経過が三段階に分かれます。
- 引っ越しで発症5月の連休中に引っ越しで重い荷物を持ち、その後じわじわ肩の違和感が出てきた。
- 整形外科で四十肩の診断レントゲン(エックス線)だけを撮って「四十肩」と診断され、痛み止めを処方されたものの改善せず。
- 他院を経てとんとんへ次にカイロプラクティックと別の整骨院に通い、そこでは肩をかなり強めに動かされていたようで、良くならないまま8月末に来院した。エムアールアイ(磁気共鳴画像)は撮っていない。
凍結肩の経過や時期ごとの対応は凍結肩は時期で対応が変わるで扱ったとおりです。この記事は、そのうえで夜間痛が生活を壊しているときに何を足すか、という各論になります。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎数値と圧痛所見を並べてみる
初診時は他動でおよそ30度から40度、自動でも80度あたりで痛みが出る状態でした。施術を続けるうちに、施術前の自動挙上が70度ほどまで上がるようになり、痛みも少し落ち着いてきました。
- 夜間痛はほとんど変わらず、2時間おきに目が覚めてしまう
- 仰向けでタオルを入れても、肘を曲げた姿勢で上腕二頭筋のあたりが痛くて腕をお腹の上に置けず、横向きでも辛い
- 圧痛は結節間溝にはっきりあり、腱板疎部や棘下筋、小円筋のあたりにも認める。上腕二頭筋は抵抗でも浅い収縮でも痛みが出る
- 大胸筋の左右差や棘突起の圧痛ははっきりせず、肩甲骨の可動性は痛みが強くて評価しづらい
所見が全体に痛みで覆われていて、タイプ分類まで詰めきれないのが難しいところです。
経過の途中でも、鑑別は挟み直す
凍結肩として施術が進んでいても、夜間痛が長引くときは、類似疾患の除外をもう一度確かめます。今回はドロップアームテストが未実施だったので、痛みの状態に応じて可能な範囲で腱板断裂の徴候を見直す、という方針になりました。
中高年の肩は凍結肩だけで見ないのが原則で、これは初診だけの話ではありません。痛みが強くて検査そのものが難しい人もいるので、そこは無理のない範囲で組み立てます。
物理療法と生活の工夫を足す
- 電気刺激は、筋収縮が起きない程度の弱い出力で20分ほど長めにかける。周波数の細かい違いより、出力を上げすぎないことのほうを優先する
- ハイボルテージを使うなら、患部を関節ごと挟むように貼り、刺激が強く入らない程度で長めに置く
- アイシングを痛みの強い時間帯、たとえば就寝直前の10分に合わせて試す。本人が気持ちよく眠りやすくなれば、それだけでも意味がある
- 三角巾やアームホルダーで上肢の重さを支え、就寝時の負担を減らす
- 鎮痛薬を使っている場合の用量や使い方は、処方元の医師に相談してもらう
- 手関節の背屈に抵抗をかける運動など、肩を大きく動かさない範囲で周辺の筋の緊張をゆるめる運動を試す
実際の相談では、ハイボルテージを頸部や脊柱起立筋に当てたところ、患者さんが響いて不快な感覚が出ると訴えたため、患部への電気はいったん間隔を空ける判断になりました。刺激への反応を見ながら加減する、という現場の手加減です。
どれか一つで劇的に変えるというより、眠れる夜を少しずつ増やすための組み合わせだと捉えています。物理療法の選び方は電気刺激の効き方を痛みの状態から読むの考え方と同じで、いま何を狙って使うかをはっきりさせて選びます。
不安への説明も、対処のうち
「今どの時期で、この先どうなっていくか」を共有できている患者さんは、夜間痛に振り回されにくくなります。施術の説明だけでなく、経過の説明に時間を使う価値があります。
この検討で印象的だったのは、説明とコミュニケーションが夜間痛対応の柱として扱われたことです。凍結肩の夜間痛は、経過とともに引いていくことが多いものです。
ただ、渦中の患者さんには先が見えず、眠れない夜が続くと、後遺症が残るのではないか、もっと良い手段があるのに出会えていないのではないか、といった不安へ思考が膨らみやすくなります。いずれ軽くなると見通しを言葉にして伝えること自体が、この不安をやわらげる介入になります。
もう一つ具体的に挙がったのが、自己確認の癖です。心配のあまり、日に何度も腕を上げて可動域や痛みを確かめてしまう患者さんがいます。この自己チェックが痛みを繰り返し誘発して、悪化の要因になり得る。確かめる回数を決めて、少しずつ控えてもらうよう丁寧に伝えます。
夜間痛対応は、鑑別・物理療法・説明の三本立て
凍結肩の夜間痛には、単独の決め手がありにくいものです。だからこそ、腱板側の除外を挟み直し、弱出力の電気刺激や固定・アイシングで夜の負担を減らし、経過の見通しと自己確認の抑制を言葉で伝える。三本立てで組むのが、検討の結論でした。
別の回では、夜間痛対策の枕やタオルが寝ている間にずれてしまう、という相談がありました。挙がった工夫は次の3つです。
- ずれても構わないので、気づいたら都度やり直してもらう。短い時間でも当たっていれば良しとする
- 上腕が伸展しないように、体を壁に寄せてタオルを壁との間にきっちり当てる。壁が支えになりずれにくい
- 低周波などで使うバンドで上半身と腕を軽く固定し、タオルと併用する。きつくせず、それで眠れるなら続ける
あわせて、夜間痛が続いているうちは拘縮期にまだ入っていないと判断し、可動域よりも夜間痛の有無で進行度を見るという考え方も確認されました。
瀬谷崎




