あらゆる方向で痛む肩、原因は凍結肩か。症例をスタッフで検討

肩の痛み、なぜ「凍結肩」としてとらえたのか

1つの症例を、担当した杉生真悟先生(とんとん整骨院 南浦和店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。あらゆる方向で痛み、夜間にもうずく肩の痛み。発症のしかたと可動域から凍結肩(いわゆる五十肩)としてとらえた判断について、鑑別と段階に合わせた進め方を、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、右肩があらゆる方向で痛み、夜間にもうずく30代の女性。動かしにくさの強い肩の症例です。答えを急がず、事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:あらゆる方向で痛む肩、凍結肩としてとらえた例
今回検討する症例(担当:杉生先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=右肩の痛み(30代・女性)。所見=肩の屈曲120度・外転90度・伸展20度すべてで痛み、外旋・内旋でも痛み、髪を結ぶ動作や帯を結ぶ動作ができない、夜間痛、肩の前方への滑り、肩甲骨の外転と胸椎の後弯。発症のしかたや夜間痛、全方向の制限から凍結肩(いわゆる五十肩)としてとらえた。段階=炎症期→拘縮期→改善期。対応=就寝姿勢の指導、広背筋など肩の関連筋・筋膜への手技、肩甲胸郭関節のモビライゼーション、三角筋・小胸筋・棘下筋への手技、腱板(ローテーターカフ)のトレーニング、疼痛抑制の電気施術。経過=安静時痛と夜間痛が軽減し、着替えなどの瞬間的な痛みも減少。現在は時期に合わせてケアを継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

あらゆる方向で痛む肩、原因は凍結肩(五十肩)か

特定の動きだけでなく全方向で痛む。杉生先生はその出かたを手がかりにしました。その根拠を確かめます。

杉生先生杉生先生

主訴は右肩の痛みでしたが、どの方向に動かしても痛み、夜間にもうずいて、髪を結ぶ動作もできない状態でした。発症のしかたや夜間痛、可動域の制限から、いわゆる五十肩、凍結肩としてとらえました。

まなぶ先生まなぶ先生

ひとつの動きだけでなく、全方向で痛むのが手がかりだったんですか。

杉生先生杉生先生

そうです。特定の動きだけ痛むなら、その動きに関わる組織を考えます。でもこの方はあらゆる方向で痛み、夜間痛もあった。関節そのものが硬く縮む段階に入っている、という像が所見と一致したんです。だから無理に動かして広げにいくより、時期に合わせて進めようと考えました。

肩の痛みで見逃せない、腱板断裂や石灰性腱炎との鑑別

肩が広く痛むときは、ほかの原因も外しておく必要があります。教子先生がそこを確認しました。

教子先生教子先生

肩が広い範囲で痛むときは分けたいところですよね。腱板の断裂や石灰性腱炎、夜間痛の強いものは外せていましたか。

杉生先生杉生先生

そこは慎重にみました。急に力が入らなくなる、特定の動きだけ極端に弱い、突然の激痛といった所見はなく、全方向の制限と段階的な経過が凍結肩に合っていました。鑑別が必要なときは医療機関での画像評価もご検討いただく前提です。

瀬谷崎瀬谷崎

凍結肩は段階のある症状なので、今がどの時期かを見極めるのが大事ですよね。炎症が強い時期に無理に動かすと長引かせることがある。腱板や石灰のものを外したうえで、時期に合わせて進める。順序が妥当だと思います。

時期に合わせて進める介入と経過

痛い時期と、動かしていく時期で、やることを変える。それが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

痛い時期と、動かしていく時期で、やることを変えたんですね。

杉生先生杉生先生

はい。炎症が強い時期は就寝姿勢を工夫して夜間痛を抑え、電気施術も使って炎症を落ち着かせました。落ち着いてから肩甲骨の動きや腱板の働きを少しずつ取り戻しています。夜間痛や安静時痛が軽くなり、着替えなどの瞬間的な痛みも減ってきました。

瀬谷崎瀬谷崎

段階を読み違えないことが、この症状では何より大事ですよね。守る時期と進める時期を分けて、肩甲骨や腱板の働きを後から戻していく。経過もその方向を支持しています。ただ時期の進み方には個人差があるので、合わせて続けたいところです。

考察:段階でとらえる凍結肩(五十肩)の進め方

所見という事実(全方向での痛みと制限・夜間痛・段階的な経過)と、経過という結果(安静時痛や夜間痛の軽減、瞬間的な痛みの減少)。この両方が、「発症のしかたと可動域から凍結肩としてとらえ、時期に合わせて進める」という見立ての妥当性を支えています。腱板や石灰性腱炎を外したうえで、炎症の強い時期は守り、落ち着いてから動きを戻す。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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