外傷後の痛みが長引く時に。CRPSを見落とさないための初期サイン
瀬谷崎コラム
治りが遅いだけで片づけない痛みがある
捻挫や骨折のあと、痛みが不自然に強く続く。腫れ、皮膚の色、汗、温度、動かしにくさまで変わっているなら、ただの治り遅れとして見ない方がいいことがあります。
外傷後や固定後に、痛みが損傷の程度に釣り合わず続く場合、CRPSを念頭に置く必要があります。早く気づき、抱え込まず、必要な医療につなぐことが大切です。
足首を捻った。手首を骨折した。指をけがした。しばらく固定をした。
そのあと、痛みや腫れが残ること自体は珍しくありません。
ただし、経過として明らかに不自然な痛みがあります。
軽く触れただけで強く痛い。腫れが引かない。皮膚の色が左右で違う。汗のかき方が違う。関節がどんどん動かしにくくなる。
こうした所見が重なる場合、複合性局所疼痛症候群、いわゆるCRPSを考える必要があります。

まなぶ先生

瀬谷崎
CRPSとは何か
CRPSは、外傷や手術、不動化などをきっかけに、痛み、感覚異常、腫れ、皮膚温や皮膚色の変化、発汗異常、可動域制限などが起こる病態です。
特徴的なのは、痛みが損傷の程度に釣り合わないことです。
つまり、「このケガならこれくらい痛くても普通」という範囲を超えて、強い痛みや過敏さ、機能障害が続くことがあります。
ただし、CRPSは患者さんの気のせいでも、単なるメンタルの問題でもありません。
神経系、炎症、自律神経、運動の変化、脳の痛み処理などが複雑に関わると考えられています。
CRPSは「痛みが長引いている人」というだけでは判断できません。痛みの強さに加えて、感覚、血管運動、発汗・浮腫、運動・皮膚変化を合わせて見ます。
見るべき4つのカテゴリー
CRPSの判断では、Budapest Criteriaという基準がよく用いられます。
細かい診断は医師が行う領域ですが、整骨院や臨床現場でも「何を見ればいいのか」は知っておく必要があります。
| カテゴリー | 見ること | 臨床での意味 |
|---|---|---|
| 感覚 | アロディニア、痛覚過敏、触れただけで強い痛み | 通常の外傷後痛を超えた過敏さを疑う |
| 血管運動 | 皮膚温の左右差、皮膚色の変化、色の左右差 | 自律神経・血管調整の変化を考える |
| 発汗・浮腫 | 腫れ、発汗の変化、汗の左右差 | ただの腫脹ではなく左右差や経過を見る |
| 運動・栄養 | 可動域低下、脱力、震え、皮膚・爪・毛の変化 | 痛みだけでなく機能と組織変化も見る |
ここで大切なのは、1つの症状だけで決めないことです。
痛いだけ、腫れているだけ、色が違うだけではなく、複数のカテゴリーにまたがって異常が見られるかを確認します。
固定や不動化は、必要だがリスクにもなる
骨折や靭帯損傷では、固定が必要な場面があります。
固定そのものが悪いわけではありません。
ただし、必要以上に長い固定、不必要な不動化、痛みへの過度な恐怖による使わなさは、回復を遅らせる要因になることがあります。
CRPSでは、外傷後や手術後、固定後に症状が出ることがあります。
だからこそ、固定するなら目的と期間を明確にし、動かしてよい場所は早期から安全に動かすことが大切です。
組織を守るために必要な固定は行います。ただし、何を守るための固定なのかを明確にします。
怖いから動かさない、痛いから全部使わない状態が長引くと、過敏さや可動域制限が強くなることがあります。
アロディニアは、見逃したくないサイン
CRPSでは、アロディニアが見られることがあります。
アロディニアとは、本来なら痛みを感じない刺激で痛みを感じる状態です。
服が触れるだけで痛い、風が当たるだけで痛い、軽く触れただけで強く痛い。
こうした訴えを「大げさ」「気にしすぎ」と扱うと、重要なサインを見落とします。

まなぶ先生

瀬谷崎
手指では皮膚や軟部組織の緊張も見る
手指の外傷後やCRPS様の状態では、皮膚や皮下組織の緊張が強くなり、動かしにくさにつながることがあります。
手指には、クリーランド靭帯、グレイソン靭帯、腱周囲の皮膚線維束など、皮膚や神経・血管の位置、指の屈伸時の伸張性に関わる構造があります。
このあたりの滑走性や皮膚の伸びが悪くなると、指を動かすこと自体が怖くなり、さらに不動化が進むことがあります。
もちろん、強く伸ばせばよいという話ではありません。
痛みを悪化させない範囲で、皮膚、腱、関節、神経の動きを少しずつ取り戻す視点が必要です。
CRPSが疑われる場合、強い手技や無理なストレッチは逆効果になることがあります。痛みの反応を見ながら、低刺激で段階的に進める必要があります。
整骨院だけで抱え込まないサイン
CRPSが疑われる場合、整骨院だけで抱え込むべきではありません。
早期に適切な医療につながることで、痛みの慢性化や機能障害を抑えられる可能性があります。
特に次のような所見がある場合は、医療機関での確認を検討します。
- 外傷の程度に比べて、痛みが明らかに強く続く
- 軽い接触や衣服の刺激で強い痛みがある
- 腫れ、皮膚色、皮膚温、発汗に左右差がある
- 関節可動域が急に落ち、使うことへの恐怖が強い
- 皮膚、爪、毛の変化が出ている
- 痛みの範囲が広がっている、または説明しにくい広がり方をする
- 固定後から症状が不自然に悪化している
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、外傷後の痛みを「まだ治っていないだけ」と安易に扱わないようにしています。
痛みの強さ、腫れ、皮膚色、温度、発汗、可動域、触れた時の反応を確認します。
必要な固定は行いますが、必要以上の不動化になっていないかも見ます。
また、CRPSが疑われる場合は、医療機関での確認が必要な可能性をお伝えします。
患者さんの痛みを否定しない。
でも、怖がらせすぎない。
そして、整骨院でできることと、医療機関につなぐべきことを分ける。
ここを大切にしています。
こんな外傷後の痛みは一度ご相談ください
- 捻挫や骨折後の痛みが、思ったより長く強く続いている
- 固定を外した後から、痛みや腫れが強くなった
- 皮膚の色や温度が左右で違う
- 軽く触れただけで強く痛い
- 指や足首を動かすのが怖く、どんどん固まっている
- 「治りが遅いだけ」と言われたが、不自然さを感じている
早く気づくことが、いちばん大事になる
CRPSは、すべての外傷後痛に当てはまるわけではありません。
でも、知らなければ見逃します。
痛みが強い。
触れるだけで痛い。
腫れや皮膚色、温度、汗の変化がある。
動かせない状態が続いている。
こうした所見が重なる時は、単なる治り遅れではなく、CRPSの可能性も考えます。
大切なのは、患者さんの訴えを否定せず、必要な評価をして、必要なら早く医療につなぐことです。

瀬谷崎
参考
- Harden RN, et al. Complex Regional Pain Syndrome: Practical Diagnostic and Treatment Guidelines, 5th Edition.
PMC - Harden RN, et al. Validation of proposed diagnostic criteria for Complex Regional Pain Syndrome.
PMC - Goebel A. Complex regional pain syndrome in adults.
PMC - Guo TZ, et al. Complex Regional Pain Syndrome-Like Changes Following Surgery and Immobilization.
PMC - National Institute of Neurological Disorders and Stroke. Complex Regional Pain Syndrome.
NINDS












