「患者さんに難しい話をしてはいけない」は本当か。整骨院で信頼を作る説明と専門性
瀬谷崎コラム
分かりやすさのつもりで、間違って伝えていないか
慢性疼痛の患者教育では、難しい言葉を避けることも大切です。ただ、簡単にしすぎた説明が、かえって誤解を生むこともあります。
慢性疼痛への介入では、運動療法と痛みの患者教育をセットで行うことが多いと思います。
痛みの仕組みを伝える。
動くことへの怖さを減らす。
過度な安静や回避を減らす。
そのうえで、患者さんが生活の中で少しずつ活動を戻せるようにする。
この流れ自体は、とても大切です。
ただし、ここで注意したいことがあります。
難しい言葉を使わないように意識しすぎた結果、語弊のある説明になっていないかという点です。

まなぶ先生

瀬谷崎
簡単な説明と、雑な説明は違う
専門用語だらけの説明は、患者さんに届きにくいことがあります。
だから、言葉を選ぶことは大切です。
ただ、「分かりやすくする」と「中身を薄める」は違います。
痛みは気のせいです。
脳が勘違いしているだけです。
気にしなければ治ります。
こういう言い方は、一見シンプルです。
でも、患者さんにとっては否定されたように聞こえることもあります。
痛みの複雑さを省略しすぎると、患者教育のつもりが、患者さんを傷つける説明になることがあります。
雑になりやすい説明:痛みは脳の勘違いなので、怖がらずに動きましょう。
丁寧にしたい説明:痛みには身体の状態だけでなく、睡眠、ストレス、警戒心、これまでの経験なども関わります。だから、身体を守りながら少しずつ動ける範囲を広げていきましょう。
患者さんは、難しい話を理解できないわけではない
患者さんに専門的な話をすると、混乱させてしまうのではないか。
そう考えて、かなり簡略化して説明することがあります。
もちろん、相手の状態や理解度に合わせる必要はあります。
でも、患者さんは大人です。
生活の中で仕事をし、家族を支え、さまざまな判断をしています。
こちらが丁寧に順序立てて話せば、難しい内容でも理解してくれることは少なくありません。
大事なのは、難しい話を避けることではなく、難しい話をどう届けるかです。
専門性を隠すのではなく、患者さんが受け取れる形に変換する。ここを雑にすると、分かりやすさのつもりが不正確な説明になります。
信頼関係は、優しさだけでは作れない
患者さんと信頼関係を作るには、共感や傾聴が必要です。
話を遮らない。
不安を否定しない。
沈黙を急いで埋めない。
こういう姿勢はとても大切です。
ただ、それだけでは足りません。
患者さんは、自分の身体を預ける相手を見ています。
この人は分かっているのか。
質問に答えられるのか。
説明に筋が通っているのか。
必要な判断をしてくれるのか。
そういう専門性も、信頼関係の大きな土台です。
- 自信のある対応
- 余裕のある話し方
- 共感と傾聴
- 沈黙を急いで埋めない姿勢
- 専門的な知識
- 短期的・長期的に結果を出すための介入スキル
- 約束を守る誠実さ
- 清潔感のある身だしなみ
この中で、意外と欠けやすいのが専門的な知識だと思っています。
優しいけれど説明が浅い。
共感はしてくれるけれど、質問に答えられない。
感じは良いけれど、判断が曖昧。
それでは、患者さんは安心しきれません。
自信がない説明は、患者さんに伝わる
患者さんは、こちらが思っている以上に施術者の不安を見ています。
声が小さい。
語尾が曖昧。
目が合わない。
早口になる。
やたら喋ってしまう。
質問に明確に答えない。
こういう反応は、患者さんに不安を渡します。
もちろん、分からないことを分かったふりする必要はありません。
でも、分かっていることまで曖昧に伝えてしまうのはもったいないです。
知識があるなら、落ち着いて伝える。
分からないことは、分からないと伝える。
必要なら調べる、確認する、医療機関へつなぐ。
この方が、むしろ信頼されると思います。
専門性をやさしく届ける
患者教育で目指したいのは、専門性を消すことではありません。
専門性を、患者さんが使える形にすることです。
痛みの仕組みを説明するなら、恐怖を減らすために説明する。
運動療法を提案するなら、押しつけではなく、患者さんが実践できる形にする。
専門用語を使うなら、その意味を丁寧に補足する。
難しい内容を避けるのではなく、患者さんと一緒に理解できるところまで降ろしていく。
それが、本来の分かりやすさだと思います。
分かりやすさは、正確さを捨てることではありません。正確さを保ったまま、患者さんが持ち帰れる形にすることです。
患者さんを子ども扱いしない
患者さんに難しい話は伝わらない。
だから、とにかく簡単にする。
この姿勢が強くなりすぎると、患者さんを少し子ども扱いしてしまうことがあります。
もちろん、専門家側が難しい言葉で自己満足するのは違います。
でも、患者さんの理解する力を低く見積もりすぎるのも違います。
患者さんは、自分の身体について知りたいと思っています。
なぜ痛いのか。
何が怖くて、何は怖がらなくていいのか。
何をすれば良いのか。
どこまで動いていいのか。
そこに対して、こちらが専門性を持って、誠実に、分かる形で伝える。
それが信頼関係を作る説明だと思います。

瀬谷崎












