手根管症候群はCTS-6で総合的にみる。ファレンやチネルを単独で過信しない検査の考え方
ひとつの検査名で決めず、6つの所見を合わせてみる
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)の評価では、ファレンテストやチネル徴候の結果だけを単独で過信しません。現在すすめられている考え方のひとつにCTS-6(シーティーエス・シックス)があり、しびれの範囲、夜間の症状、いくつかの検査、感覚や筋力を合わせて、手首で起きている神経の障害かどうかを総合的にみていきます。
手根管症候群でみていく6つの所見、正中神経(せいちゅうしんけい)領域のしびれ、夜間の症状、ファレンテスト、チネル徴候、2点識別覚(にてんしきべつかく)、母指球筋(ぼしきゅうきん)の萎縮や母指の外転の筋力低下を、CTS-6という枠組みで合わせてみる考え方を整理します。ひとつの検査の陽性や陰性だけで終わらせず、所見が同じ方向を向いているかを確認します。
結論:手根管症候群の評価では、正中神経領域のしびれ、夜間の症状、ファレンテスト、チネル徴候、2点識別覚、母指球筋の萎縮や母指外転の筋力低下という6つの所見を、CTS-6という枠組みで合わせてみます。ひとつの検査の陽性や陰性だけで決めません。
手根管症候群を、ひとつの検査名だけで決めない
手根管症候群は、手首にある手根管(しゅこんかん)というトンネルの中で正中神経が圧迫され、母指(親指)、示指(人差し指)、中指、環指(薬指)の母指側にしびれや痛みが出やすい状態です。夜間や明け方に強くなり、手を振るとやわらぐ、という訴えもよく聞かれます。
このとき、ファレンテストやチネル徴候といった検査がよく使われます。ただ、これらは陽性でも陰性でも、それだけで手根管症候群と決めたり外したりできるほどの確かさはありません。ひとつの検査の結果だけに頼ると、判断がぶれやすくなります。そこで、いくつかの所見を合わせてみる考え方が役に立ちます。
CTS-6とは。6つの所見を合わせてみる枠組み
CTS-6(シーティーエス・シックス)は、手根管症候群かどうかを考えるときに合わせてみたい6つの所見をまとめた枠組みです。ひとつの検査名で決めるのではなく、複数の手がかりが同じ方向を向いているかをみることで、判断のぶれを減らすねらいがあります。
合わせてみる6つは、次のとおりです。これらが正中神経の障害という同じ方向を指しているほど、手根管症候群の可能性を考えやすくなります。
- 正中神経領域(母指から環指の母指側)のしびれ
- 夜間や明け方に強くなる症状
- ファレンテストでの症状の再現
- チネル徴候(手首をたたいたときの放散)
- 2点識別覚(にてんしきべつかく)の低下
- 母指球筋の萎縮、母指を外へ開く筋力の低下
CTS-6はあくまで評価を組み立てるための手がかりです。最終的な診断や治療の必要性は、医療機関での評価のうえで判断されます。所見が強いときや神経の症状が進んでいるときは、医療機関への受診をご案内します。
正中神経領域のしびれと、夜間の症状をみる
まず、しびれの範囲を確認します。手根管症候群では、母指、示指、中指、環指の母指側という正中神経の領域に出やすいのが特徴です。小指側が中心であれば、尺骨神経(しゃっこつしんけい)の障害や首からの神経の症状を考えます。
次に、夜間や明け方に強くなるか、手を振るとやわらぐか、という時間帯の特徴を確認します。寝ているあいだに手首が曲がった姿勢が続くことで症状が強まり、目が覚めて手を振るとやわらぐ、という訴えは手根管症候群でよくみられます。しびれの範囲と夜間の特徴がそろうと、ほかの所見の意味も読み取りやすくなります。
ファレンテストとチネル徴候は、単独で過信しない
ファレンテストは手首を曲げた姿勢を保って症状が再現されるか、チネル徴候は手首の正中神経の上をたたいて指先へ放散するかをみる検査です。どちらも手根管症候群の手がかりになりますが、陽性でも陰性でも、それだけで結論づけられるものではありません。
陽性でも症状の範囲や時間帯と合っていなければ意味が弱まり、陰性でもほかの所見がそろっていれば手根管症候群を否定しきれません。ファレンテストとチネル徴候は、ほかの所見と合わせてはじめて読みやすくなります。個々の検査のやり方や読み方は、別記事「ファレンテストとチネル徴候。手根管症候群を検査で確かめる」で詳しく整理しています。
2点識別覚で、感覚の細かさの低下をみる
2点識別覚(にてんしきべつかく)は、皮膚に当てた2つの点が離れていると分かるか、1つに感じるかをみる検査で、指先の感覚の細かさをあらわします。手根管症候群が進むと、正中神経の領域で2点を見分けられる間隔が広がっていきます。
しびれという訴えだけでなく、感覚の細かさの低下という客観的な変化が加わると、神経の障害が進んでいる可能性を考えやすくなります。左右で比べる、ほかの指と比べる、といった形で確認します。
母指球筋の萎縮と、母指外転の筋力低下をみる
母指球筋(ぼしきゅうきん)は、親指のつけ根のふくらみをつくる筋肉です。手根管症候群が進むと、このふくらみがやせて見えることがあります。左右を見比べて、平らになっていないかを確認します。
あわせて、母指を手のひらの面から垂直に持ち上げる動き(母指の外転)の筋力をみます。短母指外転筋(たんぼしがいてんきん)は正中神経の支配を受けるため、ここの筋力低下は神経の障害が筋肉にまで及んでいるサインになりえます。萎縮や筋力低下がみられるときは、進んだ状態として、医療機関での評価をより早く検討します。
母指球筋のやせや母指を開く筋力の低下、手の細かい動作のやりにくさがはっきりしてきたときは、神経の障害が進んでいる可能性があります。自己判断で様子を見続けず、医療機関への受診をご検討ください。
ほかの神経の障害と見分け、紹介の判断を入れる
手のしびれは手根管症候群だけで起こるものではありません。小指側が中心なら肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)や尺骨神経の障害、首を動かすと腕から手に広がるなら頚椎(けいつい)からの神経の症状も候補になります。CTS-6の所見が正中神経の領域に一致しているかをみることで、これらと見分けやすくなります。
肘から小指側の症状が中心のときは、別記事「肘部管症候群を評価する。尺骨神経の絞扼と肘屈曲テスト、頚椎・ギヨン管の鑑別」も参考になります。検査所見が強いとき、筋力低下や萎縮があるとき、症状が進んでいるときは、経過を追うだけにせず、医療機関での評価や紹介の判断を早めに入れます。
CTS-6は、所見が同じ方向を向いているかで読む
手根管症候群の評価では、ファレンテストやチネル徴候といったひとつの検査の陽性や陰性だけで決めません。正中神経領域のしびれ、夜間の症状、2つの検査、2点識別覚、母指球筋の状態という6つの所見を、CTS-6という枠組みで合わせてみます。これらが同じ方向を指しているほど、手首で起きている正中神経の障害として考えやすくなります。
大切なのは、検査の結果と、患者さんがふだん感じている症状が一致しているかを確認することです。所見がそろわないときや、神経の障害が進んでいるときは、医療機関での評価を組み合わせて判断していきます。
手根管症候群は、ファレンテストやチネル徴候を単独で過信せず、正中神経領域のしびれ、夜間の症状、2点識別覚、母指球筋の萎縮や母指外転の筋力低下を合わせたCTS-6の枠組みでみます。所見が同じ方向を向いているかを確認し、進んでいるときは医療機関での評価につなげます。














