足首を反らすと前がつまって痛い。原因かもしれない「距骨前脂肪体」の挟み込み

足首を反らすと、前がつまって突き当たる。その感じ、なぜ起きるのでしょう

しゃがむ、階段を上る、足首をぐっと反らす。そのときに足の前面がつまる、突き当たる、痛い。こうした足首前面の詰まり感を、骨どうしが当たっているからとだけ考えていないでしょうか。足首の前には距骨前脂肪体(きょこつぜんしぼうたい)という組織があり、これが関節に挟まって詰まり感を出すことがあります。

足首の前がつまる、と聞くと、骨が当たっている、あるいは昔の捻挫のせい、と思うかもしれません。

もちろん、それらが関わることもあります。

ただ、足首を反らした(背屈した)ときに前がつまるとき、足首の前にある距骨前脂肪体という組織が挟み込まれていることは、珍しくありません。

この記事では、距骨前脂肪体がどんな組織で、なぜ足首の前の詰まり感に関わるのか、そして整骨院ではどう向き合うのかを整理します。

距骨前脂肪体は、すねの筋肉と連動して動く

距骨前脂肪体は、足首の前面、すねの骨と足の骨が出会う関節のすぐ前にある脂肪組織です。

この脂肪体は、すねの前にある前脛骨筋(ぜんけいこつきん)という筋肉とつながっています。足首を反らすと前脛骨筋がはたらいて縮み、それに連動して脂肪体が手前に引き上げられます。すると関節の前に空間ができて、骨がスムーズに入り込み、足首が深く反れる、という仕組みです。

「脂肪」と聞くとただのすき間うめのように思えますが、関節まわりの脂肪体は痛みを感じるセンサーが豊富な組織として知られています。つまり、ここは詰まりや痛みを感じやすい場所でもあります。

まなぶ先生まなぶ先生

足首の前がつまる患者さん、つい骨や捻挫の影響に目がいきます。距骨前脂肪体って、実際どのくらい詰まり感に関わるんですか。

教子先生教子先生

脂肪体は基本クッションでしょう。つまるのは骨どうしが当たっているからで、硬いところを動かして広げれば早いんじゃない。

瀬谷崎瀬谷崎

そこが落とし穴なんです。距骨前脂肪体は前脛骨筋と連動して引き上がる組織で、その動きがうまくいかないと関節に挟まり込みます。痛みのセンサーも多い。骨の衝突とだけ決めてしまうと、変えられるかもしれない部分を見落とすことがあるんですよ。

なぜ、足首の前がつまって痛むのか

距骨前脂肪体が関わる詰まり感には、いくつか特徴があります。

足首を深く反らした終わりのところで前がつまる、足首の前面を押すと痛い、しゃがみ込みや階段で前が突き当たる、といったケースです。

背景にあることが多いのが、前脛骨筋がうまくはたらいていない状態です。前脛骨筋が縮んで脂肪体を引き上げてくれないまま足首が反らされると、脂肪体が引き上がらないまま関節に挟まり込み(インピンジメント=挟み込み)、詰まりや痛みとして感じられます。

最初に分けたいこと

足首の前の詰まりを「骨が当たっているだけ」と考えると、前脛骨筋のはたらきや脂肪体の動きという、変えられるかもしれない要素が見えなくなります。骨の形の問題と、いま詰まり感を出している組織の状態は、分けて考えたいところです。

「硬いから伸ばす」だけでは、届かないことがある

足首がつまると、ふくらはぎや足首を伸ばすストレッチをまず思い浮かべるかもしれません。

ただ、距骨前脂肪体の詰まりは、前脛骨筋がはたらいて脂肪体を引き上げられるかどうかが鍵になります。伸ばすことよりも、反らす動きの中で筋肉と脂肪体が連動して動けるか、という視点が大切になることがあります。

まなぶ先生まなぶ先生

つまるなら、とにかく足首を反らす方向にぐいぐい伸ばしてもらえばいいんでしょうか。

教子先生教子先生

硬くてつまるんだから、痛くても反らす方向に押し込んで広げれば、そのうち動くようになるでしょう。

瀬谷崎瀬谷崎

痛いのを我慢して押し込むのは勧めません。挟まっている脂肪体をさらに押し込むと、過敏になって詰まり感が増えることがあります。むしろ、前脛骨筋を働かせて足首を反らす動きを、痛みの出ない範囲で繰り返す。順番を間違えると逆効果になるんです。

整骨院では、どう向き合うのか

距骨前脂肪体に対しては、足首の前の組織が引き上がりやすい状態をつくってから、反らす動きを促していく、というアプローチがあります。

足首の前のバンド状の組織(伸筋支帯/しんきんしたい)ごと、前面の組織をやさしく手前に引き上げた状態で、痛みが出ない範囲で足首を反らしてもらう。詰まり感が軽くなるようなら、その動きを数回繰り返し、最後に確認する、という流れです。変化には個人差があり、痛みが強いときには行いません。下の動画で、施術での動かし方のイメージがご覧いただけます。

足首の前の組織を引き上げてから反らす、施術での動かし方の様子(施術者向けの実演)。ご自身では無理に行わないでください。

まなぶ先生まなぶ先生

患者さんから「家で自分でやってもいいですか」とよく聞かれます。どう答えるのがいいですか。

教子先生教子先生

痛いところを自分で引っ張ってもらえば、来院しない日もケアできていいんじゃない。

瀬谷崎瀬谷崎

自己流で強く引っ張ったり押し込んだりは勧めません。過敏なときに刺激すると悪化することがあります。家でできるのは、痛みの出ない範囲で足首を反らす運動や、すねの前の筋肉を意識して使うこと。強い痛み、腫れ、足首が急に動かせないといったサインがあるときは、無理せず相談してほしいです。

こんなときは早めに相談を

足首に強い腫れや熱感がある/体重をかけられない・急に動かせない/捻挫のあとから詰まりや痛みが続いている。こうしたときは、自己対処を続けず、医療機関や専門家にご相談ください。症状の感じ方や経過には個人差があります。

足首の前の詰まりは、前脛骨筋のはたらきから見直せる

足首の前がつまるとき、原因を骨の衝突だけに求めると、変えられるかもしれない要素を見落とすことがあります。

足首の前にある距骨前脂肪体は、前脛骨筋と連動して動き、うまく引き上がらないと挟まり込む組織です。ここに目を向けるだけでも、足首の詰まり感との向き合い方は変わってきます。

気になる詰まりや痛みがあれば、どの動きで・どこが・どんなふうにつまるのかを手がかりに、一度ご相談ください。

瀬谷崎瀬谷崎

足首の前の詰まりは、骨が当たっているだけ、と終わらせない方がいいです。距骨前脂肪体が前脛骨筋と連動して引き上がるか、どの角度でつまるか、腫れや熱はないか。そこを確かめてから、向き合い方の順番を組み立てたいですね。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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