足首が硬い人に、ふくらはぎストレッチだけでは足りないことがある

背屈制限の正体は、ひとつではない

足首が硬いと言われると、ふくらはぎを伸ばしたくなります。でも、足関節の背屈制限は、筋肉の硬さだけで起こるわけではありません。

足関節背屈制限は、下腿三頭筋だけで判断しない。距骨の滑り、長母趾屈筋、後脛骨筋、前脛骨筋、脂肪体、前方インピンジメントなど、複数の要素を分けて見る必要があります。

しゃがむと踵が浮く。

ランジで膝が前に出ない。

階段を降りる時に足首の前が詰まる。

足首が硬いから、ふくらはぎを伸ばしましょう。

こういう流れはよくあります。

もちろん、下腿三頭筋やアキレス腱の緊張が背屈制限に関わることはあります。

ただし、すべての背屈制限を「ふくらはぎが硬い」で片づけると、改善しないケースにぶつかります。

まなぶ先生
まなぶ先生

足首が硬い人には、とりあえずふくらはぎのストレッチでいいと思っていました。

瀬谷崎
瀬谷崎

効く人もいます。ただ、筋性制限なのか、関節の滑りなのか、痛みで止まっているのかを分けないと、ずっと同じストレッチを続けるだけになりやすいです。

足関節背屈は、歩行やしゃがみ込みに必要な動き

足関節背屈とは、足首を反らす動きです。

歩行、階段、しゃがみ込み、ランジ、ジャンプの着地など、多くの動作で必要になります。

背屈が足りないと、身体はどこかで代償します。

踵が浮く、膝が内側に入る、足部が過剰に回内する、股関節や腰で逃がす。

その結果、足首だけでなく、膝や股関節、腰の痛みにつながることもあります。

評価の入口

背屈制限を見る時は、非荷重での可動域だけでなく、荷重位で膝を前に出す動きも確認します。実際の動作で困っている制限は、荷重位で出ることが多いからです。

下腿三頭筋の緊張だけなら、ストレッチが効きやすい

背屈制限の代表的な要因は、下腿三頭筋やアキレス腱の硬さです。

この場合は、膝を伸ばした状態と曲げた状態で背屈を比べると、腓腹筋とヒラメ筋の関与を分けやすくなります。

膝を曲げると背屈が増えるなら、腓腹筋の影響を考えます。

膝を曲げてもあまり変わらないなら、ヒラメ筋、関節性制限、疼痛性制限なども見ます。

筋性制限を疑う場面

ふくらはぎの張り感が強く、背屈終末で後方が伸ばされる感覚がある。ストレッチ後に一時的な変化が出やすい。

筋だけではなさそうな場面

足首前方の詰まり、ピンポイントの痛み、捻挫後の違和感、荷重位だけで強い制限が出る場合は別要因も見る。

ストレッチが悪いわけではありません。

ただ、効かない制限に対して同じストレッチだけを続けるのは、あまりよい戦略ではありません。

距骨が前に残ると、背屈で詰まりやすい

足関節背屈では、距骨が脛骨と腓骨の間に入り込むように動きます。

その時、距骨の後方滑りが十分に起こらないと、前方で詰まり感や痛みが出ることがあります。

いわゆる「足首の前が詰まる」という訴えです。

このタイプでは、ふくらはぎを伸ばしても前方の詰まりが残ることがあります。

前方の詰まり

背屈終末で足関節前方に痛みや詰まりが出る場合、筋性制限だけでなく、距骨の位置関係、前方関節包、靭帯、脂肪体、骨性インピンジメントなども考えます。

距骨の前方滑りのマルアライメントがある場合、関節の動き方そのものを見直す必要があります。

「硬いから伸ばす」だけではなく、「どこで詰まっているのか」を確認します。

長母趾屈筋や後脛骨筋も、背屈を邪魔することがある

足関節背屈は、距腿関節だけの問題ではありません。

足部・足趾・遠位脛腓関節の動きも関わります。

たとえば長母趾屈筋の緊張が強いと、距骨後方滑りを妨げる可能性があります。

また、後脛骨筋の緊張が強い場合、遠位脛腓関節の離開がうまく起こらず、距骨が入り込みにくくなることがあります。

  • 母趾の動きや足趾の使い方に左右差がある
  • 足部の内側アーチや後足部の動きが硬い
  • 内果後方や屈筋支帯周辺に張り感がある
  • 荷重位で背屈すると足部が過剰に逃げる
  • 足首だけでなく、足趾や後足部まで含めると動きが変わる

背屈制限を見る時は、足首だけを見ているようで、実際には足部全体を見ています。

母趾、足趾、後足部、脛腓関節の動きが、距骨の動きに影響するからです。

前脛骨筋と脂肪体の問題で、痛みによる制限が出ることもある

背屈制限は、硬さだけではありません。

痛みで止まっている制限もあります。

前脛骨筋の機能がうまく働かず、前方の脂肪体を引き上げる働きが低下すると、背屈時に前方でインピンジメント様の痛みが出ることがあります。

この場合、患者さんは「硬い」というより「詰まる」「挟まる」「前が痛い」と表現することがあります。

疼痛性制限

痛みで止まっている背屈制限に対して、強く押し込むストレッチを続けると、かえって防御性収縮や不安が強まることがあります。痛みの出方を確認して介入を選びます。

足首が硬い時の見立ての順番

背屈制限は、ひとつの原因で決まるとは限りません。

そのため、最初から「ストレッチ不足」と決めず、いくつかの視点で見ます。

  1. 非荷重と荷重を比べるベッド上では動くのに、立つと詰まるのか。どちらでも硬いのかを確認します。
  2. 膝伸展位と膝屈曲位を比べる腓腹筋、ヒラメ筋、関節性制限を分ける手がかりになります。
  3. 痛む場所を確認するふくらはぎ後方の伸張感か、足関節前方の詰まりか、内果後方の張りかを分けます。
  4. 足部と母趾の動きを見る長母趾屈筋、後脛骨筋、後足部、足趾の使い方が背屈に影響していないか確認します。
  5. 動作で再確認するしゃがみ込み、ランジ、階段、歩行など、困っている動作で変化を確認します。

評価の目的は、原因をひとつに決めつけることではありません。

どの要素が強そうかを見て、介入の優先順位を決めることです。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、足首の硬さを「ストレッチ不足」で終わらせないことを大切にしています。

背屈が足りない時には、ふくらはぎの緊張だけでなく、距骨の動き、足部の使い方、痛みの場所、過去の捻挫、歩行やしゃがみ込みの動作まで確認します。

必要な場合は、手技、運動療法、セルフケア、靴やインソールの検討などを組み合わせます。

大切なのは、「足首を柔らかくする」ことそのものではありません。

痛みなく、安定して、必要な動作ができるようになることです。

こんな足首の硬さは一度ご相談ください

  • ふくらはぎを伸ばしても足首の硬さが変わらない
  • しゃがむと踵が浮く、または足首の前が詰まる
  • 捻挫後から足首の動きが戻りきらない
  • 階段やランジで足首の前に痛みが出る
  • 歩くと膝や股関節まで負担が出る
  • 左右で足首の動きに大きな差がある

硬い場所を伸ばす前に、止まっている場所を見る

足首が硬い時、ふくらはぎを伸ばすことは有効な場合があります。

ただし、それだけでは変わらない制限もあります。

距骨の滑りが悪いのか。

長母趾屈筋や後脛骨筋が邪魔しているのか。

前方の脂肪体や関節包、靭帯が詰まっているのか。

痛みで身体が止めているのか。

そこを分けて見ないと、同じストレッチを続けても結果が変わりにくいことがあります。

足首の背屈制限は、シンプルに見えて意外と奥が深いです。

だからこそ、硬さの正体を丁寧に見たいところです。

瀬谷崎
瀬谷崎

足首が硬い、で終わらせずに、どこで止まっているのかを見たいですね。ふくらはぎなのか、距骨なのか、足趾や後足部なのか。そこが見えると介入も変わります。

参考

  • Hoch MC, et al. Weight-Bearing Ankle Dorsiflexion Range of Motion: Can Side-to-Side Symmetry Be Assumed? Journal of Athletic Training. 2015.
    PMC
  • Bennell KL, et al. Reliability and validity of a weight-bearing measure of ankle dorsiflexion range of motion. Australian Journal of Physiotherapy. 1998.
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  • DiGiovanni CW, et al. Subtalar Joint Position During Gastrocnemius Stretching and Ankle Dorsiflexion Range of Motion. Journal of Athletic Training. 2006.
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  • Vaseenon T, et al. Ankle impingement syndromes: an imaging review. Insights into Imaging. 2017.
    PMC
  • Lavery KP, et al. Ankle impingement. Journal of Orthopaedic Surgery and Research. 2016.
    PMC
瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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