股関節痛は痛む場所で仮説が変わる。鼠径部・殿部・外側部の考え方。

痛む場所を3つに分けるだけで、評価の優先順位が見える

股関節痛は、鼠径部・殿部・外側部に分けるだけでも仮説が立てやすくなります。ただし、痛む場所は答えではなく入口です。腰椎や神経由来の痛みも含めて考える必要があります。

股関節痛における代表的な疼痛部位

股関節痛は、鼠径部・殿部・外側部に分けると、優先して確認すべき組織や鑑別の方向性を整理しやすくなります。

疼痛部位は、診断名ではなく評価の入口です。「どこが痛いか」を整理したうえで、動作、可動域、圧痛、筋力、神経症状、腰椎由来の可能性を合わせて見ます。

患者さんが「股関節が痛い」と言っていても、実際に痛みを感じている場所は人によって違います。

鼠径部が痛い人もいれば、殿部が痛い人もいます。

大転子周囲の外側部を「股関節」と表現する人もいます。

この場所の違いを無視して、全員を同じ「股関節痛」として見ると、評価の順番が曖昧になります。

まずは、痛みの場所を大きく3つに分ける。

それだけでも、かなり臨床の入口は整理されます。

まなぶ先生
まなぶ先生

股関節痛って、まず股関節そのものを見ればいいと思っていました。

瀬谷崎
瀬谷崎

もちろん股関節は見ます。ただ、痛む場所によって優先順位は変わりますし、腰椎や神経由来の症状も混ざるので、最初に部位を整理したいですね。

股関節痛は3つの部位に分ける

股関節周囲の痛みは、まず鼠径部、殿部、外側部の3つに分けると考えやすくなります。

この分類は、原因を確定するためのものではありません。

どの組織を優先して確認するか、どの動作を再現テストとして使うか、腰椎や神経症状をどの程度疑うかを決めるための入口です。

鼠径部

考えやすい組織:関節唇、腸腰筋、内転筋群、大腿直筋、腸恥滑液包など。

殿部

考えやすい組織:ハムストリング、坐骨滑液包、大殿筋、梨状筋など。

外側部

考えやすい組織:中殿筋、大腿筋膜張筋、大転子滑液包など。

ただし、これは「鼠径部なら必ず関節唇」「外側部なら必ず中殿筋」という意味ではありません。

疼痛部位は仮説を立てるための手がかりであり、最終判断にはほかの所見が必要です。

鼠径部痛は股関節前方を優先して見る

鼠径部痛は、股関節痛の中でもかなり重要な部位です。

股関節前方の組織や関節内の問題が関わることがあり、歩行、立ち上がり、階段、股関節屈曲や内旋で痛みが出るかを確認します。

画像にあるように、鼠径部では関節唇、腸腰筋、内転筋群、大腿直筋、腸恥滑液包などを考えます。

  • 股関節屈曲や内旋で鼠径部痛が再現されるか
  • 立ち上がりや階段で痛みが出るか
  • 内転筋や腸腰筋の収縮・伸張で痛みが変わるか
  • 関節内症状を疑うクリック感や引っかかりがあるか
  • 腰椎運動で鼠径部痛が再現されないか
鼠径部痛の注意

鼠径部痛は股関節前方の問題を疑いやすい部位ですが、腰椎由来の関連痛や周辺組織の影響も考える必要があります。場所だけで決めないことが大切です。

殿部痛は股関節後方だけで終わらせない

殿部痛では、ハムストリング、坐骨滑液包、大殿筋、梨状筋などが候補になります。

座っていると痛い、股関節後方に違和感がある、深くしゃがむと痛い、ランニングで殿部から大腿後面に痛みが出る。

こうした訴えでは、股関節後方や坐骨周囲を確認したくなります。

ただし、殿部痛は腰椎由来の関連痛や神経障害性疼痛とも重なりやすい部位です。

局所で見ること

坐骨周囲の圧痛、ハムストリング起始部、梨状筋周囲、股関節後方の動き。

局所以外で見ること

腰椎伸展・回旋での再現性、しびれ、感覚異常、神経学的所見。

「殿部が痛いから梨状筋」と短絡的に考えると、腰椎や神経由来の痛みを見落とす可能性があります。

殿部痛こそ、局所と腰椎を並行して見る必要があります。

外側部痛は大転子周囲を整理する

股関節外側部の痛みでは、中殿筋、大腿筋膜張筋、大転子滑液包などを考えます。

横向きで寝ると痛い、片脚立ちで痛い、歩くと外側が痛い、階段で外側に負担を感じる。

こうした訴えでは、大転子周囲や外側支持機構の評価が必要になります。

  • 大転子周囲の圧痛があるか
  • 片脚立ちや歩行で外側部痛が出るか
  • 股関節外転筋の筋力や疼痛があるか
  • 横向きで寝ると症状が増えるか
  • 腰椎や骨盤の動きで痛みが変化するか

外側部痛も、局所だけで完結するとは限りません。

骨盤、腰椎、下肢アライメント、荷重のかかり方を含めて見ると、介入の選択肢が広がります。

腰椎・神経由来との鑑別を忘れない

股関節痛で特に注意したいのは、股関節周囲に痛みがあるからといって、股関節だけの問題とは限らないことです。

腰椎椎間関節の関連痛や、脊柱疾患に伴う神経障害性疼痛が、股関節周囲の痛みとして表れることがあります。

殿部から大腿後面にかけての痛みでは、神経症状の確認が必要です。

鼠径部痛でも、腰椎上位や周辺組織の影響を完全には切り離せません。

見落としやすいポイント

疼痛部位が股関節周囲でも、しびれ、感覚異常、筋力低下、腰椎運動での再現性、広い放散痛がある場合は、股関節だけでなく腰椎・神経由来の症状も疑います。

痛みの場所を3つに分けることは大切ですが、それは股関節だけを見るためではありません。

むしろ、股関節以外の可能性を整理するためにも役立ちます。

疼痛部位から評価の流れを作る

実際の評価では、まず患者さんに「どこが一番痛いか」を確認します。

そのうえで、鼠径部・殿部・外側部のどこに近いかを整理します。

次に、痛みが出る動作、再現される姿勢、関節可動域、筋の収縮や伸張、圧痛、神経症状、腰椎運動での変化を確認します。

この順番で見ると、評価が散らかりにくくなります。

疼痛部位は答えではなく、問いを立てるための入口です。場所を整理してから、動作と所見で仮説を絞っていきます。

股関節痛は、場所から入って全体で判断する

股関節痛では、鼠径部、殿部、外側部のどこに痛みがあるかを整理するだけでも、評価の入口がかなり明確になります。

鼠径部なら股関節前方や関節内。

殿部なら股関節後方や坐骨周囲、そして腰椎由来。

外側部なら中殿筋や大転子周囲。

このように仮説を立てることができます。

ただし、疼痛部位だけで原因は決まりません。

腰椎椎間関節の関連痛や、脊柱疾患による神経障害性疼痛が似た場所に出ることもあります。

だからこそ、痛む場所から入り、動作、可動域、筋力、神経症状、腰椎の反応を総合して判断する。

この積み重ねが、股関節痛を雑に扱わないための基本になります。

瀬谷崎
瀬谷崎

痛む場所を聞くのは基本ですが、基本ほど雑に扱われやすいです。鼠径部・殿部・外側部に分けて、そこから腰椎や神経症状まで広げて見たいですね。

股関節周囲の痛みは、痛む場所だけでなく、動作や腰椎・神経症状との関係も整理することが大切です。歩行や運動時の股関節周囲痛でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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