中枢性感作とは何か?痛みが広がる・強く感じる時に考えたいこと

中枢性感作とは何か?痛みが広がる・強く感じる時に考えたいこと

痛みが刺激の強さに釣り合わない。痛みの範囲が広い。軽く触れただけで痛い。そんな時は、組織の損傷だけでなく、神経系の過敏さも見ていく必要があります。

中枢性感作は、痛みを「気のせい」にする言葉ではありません。痛みの処理システムが敏感になり、刺激に対する反応が増幅されている可能性を考えるための視点です。

慢性的な痛みや、なかなか説明しにくい痛みを考える時に、中枢性感作という言葉が出てくることがあります。

ただ、この言葉は便利な反面、雑に使われやすい言葉でもあります。

「検査で異常がないから中枢性感作ですね」

「痛みが長いから中枢性感作ですね」

こういう使い方をすると、結局よく分からない痛みを別の言葉に置き換えただけになります。

中枢性感作は、患者さんを納得させるための魔法の言葉ではありません。

痛みがどう処理されているのかを考えるための、ひとつの臨床的な視点です。

まなぶ先生
まなぶ先生

中枢性感作って、要するに痛みに敏感になっている状態ですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

かなりざっくり言えばそうです。ただ、敏感という一言で終わらせず、どんな反応が出ているかを見たいですね。

中枢性感作は、痛みの増幅システムとして見る

中枢性感作は、脊髄後角など中枢神経系の反応性が高まり、痛みの入力が増幅されやすくなった状態として説明されます。

本来ならそこまで痛くない刺激が強く痛い。

痛くないはずの刺激が痛い。

痛みの範囲が広がる。

同じ刺激を繰り返すほど痛みが増える。

こうした現象がある時、組織の損傷だけでは説明しきれない痛みの処理が起きている可能性があります。

中枢性感作とアロディニアに関する神経機序の図

触覚や圧覚のような非侵害刺激が、痛みとして処理される背景には、神経系の反応性や抑制機構の変化が関わる可能性があります。

臨床で疑う時のサイン

中枢性感作を疑う時は、「痛みがあるかどうか」だけではなく、痛みの出方を見ます。

目の前の痛みが、刺激の強さや組織所見とどれくらい釣り合っているのか。

範囲は局所なのか、広がっているのか。

デルマトームや単一の組織だけで説明しやすいのか。

刺激に釣り合わない痛み
軽い刺激なのに強く痛む、少し動かしただけで大きく反応するなど。

広範囲の痛み
単一の筋肉、関節、神経根だけでは説明しにくい範囲に痛みが広がる。

アロディニア
触れる、服がこすれる、冷たい刺激が当たるなど、本来痛くない刺激で痛む。

痛覚過敏
本来痛い刺激に対して、通常より強く痛みを感じる。

ここを誤解しない

中枢性感作を疑うことは、組織の評価をやめることではありません。身体所見を見た上で、痛みの処理システムの変化も考えるということです。

脊髄後角で何が起きているのか

痛みの信号は、末梢から脊髄を通って脳へ伝わります。

脊髄後角は、その信号を処理する重要な場所です。

通常、触覚や圧覚を伝えるAβ線維の入力と、痛みを伝えるAδ線維やC線維の入力は、役割がある程度分かれています。

しかし、抑制の働きが弱くなったり、興奮性の伝達が強くなったりすると、本来なら痛みとして処理されない入力まで痛みの回路を興奮させやすくなると考えられています。

中枢性感作では、単に「痛みが長い」のではなく、痛みを処理する側の反応性が変わっている可能性を考えます。

この変化があると、軽い接触で痛い、痛みが広がる、痛みが残りやすい、という状態につながることがあります。

下行性疼痛抑制系の弱まりも関わる

痛みの処理は、下から上に伝わる信号だけではありません。

脳や脳幹から脊髄へ向かって、痛みを抑える働きもあります。

この下行性疼痛抑制系がうまく働きにくくなると、同じ刺激でも痛みが強く感じられる可能性があります。

睡眠不足、強い不安、ストレス、痛みに対する恐怖、過去の痛み経験なども、痛みの感じ方に影響します。

だから、痛みを身体だけで見るのも、心だけで見るのも違います。

身体も見る。神経も見る。生活も見る。

この整理が大切です。

患者さんへの説明で気をつけたいこと

中枢性感作の説明は、言い方を間違えると患者さんを傷つけます。

「神経が過敏になっているだけです」

「気にしすぎです」

「ストレスですね」

こういう説明は、痛みを軽く扱われたように聞こえることがあります。

実際には、痛みは本人にとって本当に起きている体験です。

ただ、痛みを感じるシステムが敏感になっている可能性がある、という説明が必要です。

説明の例

痛みが長く続くと、身体を守る警報装置が敏感になることがあります。壊れているというより、警報が鳴りやすくなっている状態かもしれません。だから、強く刺激するより、安心して動ける範囲を少しずつ増やしていきましょう。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、痛みが長引く方に対して、画像や組織所見だけで説明を終わらせないようにしています。

どこが痛いのか。

どんな刺激で痛むのか。

痛みが広がっているのか。

触れるだけで痛いのか。

睡眠や不安、生活への影響はどうか。

こうした点を確認した上で、施術、運動、セルフケア、生活上の工夫を考えます。

  • 痛みが長引いていて、刺激に対して過敏になっている
  • 触れる、冷える、服がこすれるだけで痛い
  • 痛みの範囲が広がっている
  • 痛みが怖くて動く範囲が小さくなっている
  • 検査では大きな異常がないと言われたが、痛みが続いている
医療機関の確認について

急な脱力、強いしびれ、歩行障害、排尿・排便の異常、発熱や外傷を伴う強い痛み、がんや感染が疑われる背景がある場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。

中枢性感作は、決めつけではなく仮説

中枢性感作は、痛みの増幅を考える上でとても重要な概念です。

アロディニア、痛覚過敏、広範囲の痛み、刺激に釣り合わない痛みを理解する助けになります。

ただし、「中枢性感作だから」で説明を終えてはいけません。

それはあくまで仮説です。

身体所見、神経所見、生活背景、患者さんの不安や回避行動を合わせて見て、必要なら考えを修正する。

この姿勢が、痛みを雑に扱わないために大切だと思っています。

瀬谷崎
瀬谷崎

中枢性感作は便利な言葉ですが、便利すぎる言葉は雑に使われます。痛みがなぜ増幅しているのか、目の前の人に合わせて考えたいですね。

参考

  • Woolf CJ. Central sensitization: implications for the diagnosis and treatment of pain.
    PMC
  • Woolf CJ. Central sensitization: a generator of pain hypersensitivity by central neural plasticity.
    PMC
  • International Association for the Study of Pain. Terminology.
    IASP
  • Costigan M, Scholz J, Woolf CJ. Neuropathic pain: a maladaptive response of the nervous system to damage.
    PMC

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