アロディニアとは何か?触れるだけで痛い状態をどう見るか
瀬谷崎コラム
アロディニアとは何か?触れるだけで痛い状態をどう見るか
軽く触れただけで痛い。冷たい刺激が痛い。服がこすれるだけでつらい。こうした反応は、単なる炎症や筋肉の硬さだけでは説明しにくいことがあります。
アロディニアは、通常なら痛くない刺激で痛みを感じる状態です。神経障害性疼痛や中枢性感作を疑う重要なヒントになりますが、それだけで病態を断定しないことも大切です。
痛みの評価で、とても大事なのに、少し分かりにくい言葉があります。
それがアロディニアです。
たとえば、皮膚を軽くなでただけで痛い。
冷たいものが触れると、普通の冷たさではなく痛みとして感じる。
服がこすれる、布団が当たる、風が当たるだけでつらい。
こういう状態があると、身体の中で痛みの処理がかなり変わっている可能性があります。

まなぶ先生

瀬谷崎
アロディニアと痛覚過敏は違う
IASPでは、アロディニアは「通常は痛みを引き起こさない刺激によって生じる痛み」と整理されています。
ここで大切なのは、「刺激そのものは本来痛くない」という点です。
軽いタッチ、衣服のこすれ、冷たい刺激、温かい刺激など、本来なら痛みにならない刺激が痛みとして感じられる。
これがアロディニアです。
どちらも「痛みに敏感」と表現されがちですが、中身は違います。
アロディニアは、痛くないはずの刺激が痛い。
痛覚過敏は、痛い刺激がより強く痛い。
この違いを曖昧にすると、患者さんの状態を雑にまとめてしまいます。
痛覚過敏には、損傷部位と周辺部位の話がある
痛覚過敏も、ひとつにまとめると見えにくくなります。
損傷した組織そのものに起きる痛覚過敏と、損傷部位の周囲に広がる痛覚過敏では、考え方が少し違います。
アロディニアと痛覚過敏は一緒に見られることがあります。
ただし、同じ現象ではありません。
刺激の種類と、痛みの出方を分けて確認することが大切です。
中枢性感作では、痛みの処理が変わる
アロディニアを考える上で外せないのが、中枢性感作です。
中枢性感作は、脊髄後角など中枢神経系の反応性が高まり、痛みの入力を増幅しやすくなった状態として説明されます。
ざっくり言うと、痛みのシステムが過敏になり、本来なら痛みとして処理されない刺激まで痛みとして処理されやすくなる、ということです。
触覚や圧覚のような非侵害刺激が痛みとして処理される背景には、神経系の可塑的な変化が関わる可能性があります。
本来、触覚や圧覚を伝えるAβ線維の入力は、痛みを伝える回路とは別の処理を受けます。
しかし、抑制の働きが弱くなったり、神経回路の反応性が変化したりすると、Aβ線維からの刺激でも痛みの回路が興奮しやすくなると考えられています。
これが、軽い接触で痛い、服が触れるだけで痛い、といった状態の説明の一部になります。
侵害刺激の強さに釣り合わない痛み、デルマトームに沿わない広範な痛み、軽い接触や冷刺激での痛みがある場合は、中枢性感作や神経障害性疼痛の要素を考えます。
ただし、中枢性感作という言葉を便利な逃げ道にしてはいけません。
よく分からない痛みを全部「中枢性感作ですね」で片づけるのは、骨盤の歪みで何でも説明するのと同じ危うさがあります。
身体所見、神経所見、経過、生活背景を合わせて、慎重に考える必要があります。
アロディニアは、情動面の影響も受ける
痛みは、単なる感覚ではありません。
痛みには、不快感、不安、恐怖、警戒、過去の経験などが関わります。
アロディニアでも、刺激そのものの強さだけでなく、脳内での痛みの意味づけや情動的な処理が関わる可能性があります。
たとえば、島皮質は痛みの感覚的側面や情動的側面に関わる領域として研究されています。
アロディニアを考える時も、皮膚や神経だけを見るのではなく、痛みに対する不安、恐怖、回避行動、睡眠、ストレスを合わせて見る必要があります。
アロディニアを「気持ちの問題」として片づけるのは違います。ただ、情動や認知が痛みの強さやつらさに関わることは、臨床で無視できません。
神経障害性疼痛は慢性化しやすい
神経障害性疼痛では、神経そのものの損傷や病変が関わります。
脱髄、異所性発火、自発痛、神経可塑性、アロディニアなどが重なると、原因となる組織の問題が落ち着いたあとも痛みが長く残ることがあります。
つまり、「もう組織は治っているはずなのに痛い」という状態が起こり得ます。
ここで、ただ揉む、伸ばす、動かすだけにこだわりすぎると、かえって症状をこじらせることがあります。
アロディニアが強い場合は、刺激量の調整、安心できる説明、睡眠や不安への配慮、必要に応じた医療機関での疼痛管理も含めて考える必要があります。
特にCRPSのように、強い痛み、腫れ、皮膚温や色の変化、発汗の変化、動かしにくさなどが重なる場合は、早めの医療機関での確認が重要です。
「痛いならもっと刺激を入れればいい」という方向に進まないことが大切です。
「しびれ」という言葉だけで断定しない
アロディニアや神経障害性疼痛では、ビリビリ、ジンジン、正座でしびれたような感じ、冷たく痛む感じなどの訴えが出ることがあります。
こうした表現は重要なヒントです。
ただし、患者さんが「しびれ」と言っているだけで、神経障害性疼痛と断定してはいけません。
患者さんの言う「しびれ」は、感覚が鈍い、痛い、重だるい、力が入りにくい、血流が悪い感じなど、さまざまな意味で使われます。
- 冷たい刺激で痛みが出るか
- 軽い接触や衣服のこすれで痛むか
- 感覚低下や左右差があるか
- 筋力低下や反射の変化があるか
- 症状の分布が神経の走行と合うか
- 痛みが広範囲で、刺激の強さと釣り合わないか
こうした所見を合わせて、神経障害性疼痛、中枢性感作、炎症性疼痛、血管性の問題、中枢神経の問題などを整理していきます。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、痛みやしびれの言葉をそのまま診断名に変換しないことを大切にしています。
軽く触れるだけで痛いのか。
冷たい刺激で痛いのか。
痛覚過敏なのか、アロディニアなのか。
神経障害性疼痛の要素があるのか、中枢性感作の要素があるのか。
患者さんの訴えを尊重しながら、身体所見、神経所見、生活背景を合わせて見ます。
アロディニアがある場合、刺激を増やせばよいとは限りません。痛みを悪化させない刺激量、安心できる説明、必要な医学的確認を組み合わせることが大切です。
触れるだけで痛い時ほど、雑に扱わない
アロディニアは、通常なら痛くない刺激で痛みを感じる状態です。
痛覚過敏とは違います。
神経障害性疼痛や中枢性感作で見られることがあり、冷刺激への痛みや軽い接触での痛みは鑑別の重要なヒントになります。
ただし、アロディニアがあるから全部同じ病態、というわけではありません。
言葉、刺激への反応、分布、神経所見、経過、不安や回避行動。
これらを合わせて見ることで、ようやく少しずつ見えてきます。
触れるだけで痛い人ほど、強く押す前に、まず丁寧に評価したいところです。

瀬谷崎
参考
- International Association for the Study of Pain. Terminology.
IASP - International Association for the Study of Pain. Allodynia and Hyperalgesia in Neuropathic Pain.
IASP - Woolf CJ. Central sensitization: implications for the diagnosis and treatment of pain.
PMC - Costigan M, Scholz J, Woolf CJ. Neuropathic pain: a maladaptive response of the nervous system to damage.
PMC - Finnerup NB, et al. Neuropathic pain: an updated grading system for research and clinical practice.
PMC












