院長になった途端にうまくいかない人の共通点

施術がうまいだけでは、院長は務まらない

院長になることは、ただ偉くなることではありません。プレイヤーとしての仕事から、チームを動かす仕事へ変わるということです。ここを勘違いすると、本人も周りも苦しくなります。

院長は、施術者の延長ではありません。責任を引き受け、部下を育て、組織の方向を見ながら動く別の役割です。個人の売上だけでは、リーダーとしての力は測れません。

治療院で働いていると、「いつか院長になりたい」と考える人は多いと思います。

指名が増える。売上が作れる。患者さんからの信頼もある。そうなると、次のステップとして院長を目指すのは自然です。

ただ、ここで一度考えたいことがあります。

施術者として優秀なことと、院長として機能することは同じではありません。

むしろ、プレイヤーとして優秀だった人ほど、院長になった時に苦しむことがあります。

まなぶ先生
まなぶ先生

売上が作れて、施術もうまい人なら、院長にも向いていそうですけどね。

瀬谷崎
瀬谷崎

入口としては強いです。でも、院長の仕事は「自分ができる」より「周りができるようにする」ことです。

院長はジョブチェンジだと思った方がいい

院長になると、見るものが変わります。

自分の予約、自分の売上、自分の患者さんだけを見ていればよかったところから、院全体を見る立場になります。

スタッフの成長、患者さんの流れ、売上、教育、クレーム、空気感、上司とのやり取り。

急に見るものが増えます。

少し辛口に言うと、「施術がうまいから院長もできるはず」はかなり雑です。職人とリーダーは、求められる筋肉が違います。

もちろん、施術力や患者さんへの対応力は大事です。

でも、それだけでは院は回りません。

院長になるなら、自分の成果だけでなく、チーム全体の成果を考える必要があります。

責任を決めない人は、上に立つほど苦しくなる

院長に必要なのは、まず責任感です。

これは、気合いの話ではありません。

目標を決める。決めたことに対して動く。うまくいかなかった時に、他人や環境のせいだけにしない。

こういう地味なことです。

責任を持つのが嫌で、あえて目標を曖昧にする人がいます。

「頑張ります」「良くしていきます」「できる範囲でやります」

言葉はきれいですが、何も決めていないことがあります。

院長の入口

院長は、曖昧なまま逃げにくい立場です。数字、教育、患者さんへの対応、院の空気。決めることから逃げると、周りが迷います。

責任を取るというのは、全部を一人で背負うことではありません。

ただ、自分の立場で何を決めるべきかを避けないことです。

自分を守るために、部下を使わない

院長がやってはいけないことのひとつが、自己保身です。

上から怒られたくない。自分の評価を下げたくない。責任を負いたくない。

その気持ち自体は、正直分かります。

でも、その不安を部下にそのまま流すと、信頼は一気に落ちます。

まなぶ先生
まなぶ先生

上から言われたことを、そのままスタッフに伝えるのはダメなんですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

伝える必要はあります。でも、怒りや不安までそのまま流す必要はありません。院長は防波堤でもあります。

上から厳しい指摘を受けた時に、自分の責任として一度受け止める。

その上で、スタッフに必要な改善点を整理して伝える。

これができると、部下は安心して挑戦しやすくなります。

逆に、院長が自分を守るために部下を責め始めると、現場はすぐ冷えます。

仕事を抱え込む人は、部下を育てにくい

「自分がいないと院が回らない」

これは、一見かっこよく聞こえます。

でも、院長としては少し危ない状態です。

自分にしかできない仕事が多すぎると、院はその人に依存します。本人も休めません。部下も育ちません。

院長の仕事

自分ができることを増やすだけではなく、自分ができることを他の人もできるようにする。ここが院長の大きな仕事です。

もちろん、最初は自分でやった方が早いです。

教えるより、自分で処理した方がきれいに終わります。

でも、それを続けると、ずっと自分でやることになります。

任せる。失敗を見守る。仕組みにする。フィードバックする。

ここに時間を使えるかどうかで、院長としての仕事は変わります。

部下を思い通りに動かそうとしすぎない

院長になると、スタッフの動きが気になります。

言葉づかい、掃除、施術の流れ、患者さんへの説明、カルテ、予約の取り方。

気になることは山ほど出ます。

ただ、全部を自分の思い通りにしようとすると、スタッフは息が詰まります。

厳しく言うこと自体が悪いわけではありません。問題は、それが部下の成長のためなのか、自分の不安を消すためなのかです。

細かく注意する前に、目的を整理した方がいいです。

患者さんのためなのか。院の質を上げるためなのか。本人の成長のためなのか。

それとも、自分が上から怒られたくないだけなのか。

ここは、部下にけっこう見抜かれます。

抽象的な指示の背景を読めるか

院長になると、上司や経営者からの指示も変わります。

全部を細かく説明されるわけではありません。

「院の空気を良くして」

「新人をもう少し見ておいて」

「数字の流れを確認して」

こういう抽象的な指示も増えます。

ここで「何をすればいいですか」と毎回止まると、院長としては少し弱いです。

抽象的な指示 読み取りたい背景 動き方の例
院の空気を良くして スタッフ間の会話、患者さん対応、朝礼の雰囲気に課題がある 個別に話を聞く、朝の共有を整える、悪い空気の原因を探る
新人を見ておいて 技術だけでなく、不安や孤立、患者対応も含めて見てほしい 練習時間を作る、フィードバックを短く入れる、困りごとを聞く
数字を確認して 売上だけでなく、予約率、継続率、キャンセル、提案の質を見たい 数字の変化と現場の行動を結びつけて報告する

言われたことだけをやる段階から、意図を読んで動く段階へ。

院長になるなら、この切り替えは避けられません。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、患者さんへの施術だけでなく、スタッフ同士の学び方や院の空気も大切にしています。

患者さんに良い説明をするためには、スタッフ自身が安心して学べる環境が必要です。

院長やリーダーは、その環境を作る側になります。

強く言うこともあります。数字を見ることもあります。改善を求めることもあります。

ただ、それが自己保身や感情の発散になってしまうと、現場はついてきません。

瀬谷崎の考え方

院長は、嫌われ役を演じればいいわけではありません。厳しいことを言っても、この人はちゃんと見てくれていると思われる土台が必要です。

院長を目指す人が見直したいこと

  • 自分の成果だけでなく、院全体の成果を見ているか
  • 目標を決めることから逃げていないか
  • 上からの不安や怒りを、そのまま部下に流していないか
  • 自分にしかできない仕事を増やしすぎていないか
  • 注意が、部下の成長ではなく自分の安心のためになっていないか
  • 抽象的な指示の背景を読もうとしているか
  • 厳しさの前に、信頼の土台を作れているか

院長の仕事は、できる人を増やすこと

院長になると、自分ができるだけでは足りません。

スタッフが育つこと。院の空気が良くなること。患者さんへの説明や施術の質が、個人差だけに頼らなくなること。

そのためには、責任を引き受け、任せ、守り、時には厳しいことを伝える必要があります。

プレイヤーとしての強さを、チームの強さに変えられるか。そこが院長の大きな分かれ道だと思います。

瀬谷崎
瀬谷崎

院長の価値は、自分がどれだけできるかだけではなく、周りがどれだけできるようになるかにも出ます。そこを忘れないでいたいですね。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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