「痛くない範囲で動かして」が回復を遅らせることがある

「痛くない範囲で」が、回復の邪魔をすることもある

痛みを無視して動かせばいい、という話ではありません。ただ、痛みを全部「危険」と決めつけて避け続けると、身体はどんどん動き方を忘れてしまうことがあります。

痛いから全部ダメ、ではありません。大事なのは、その痛みが強くなるのか、すぐ戻るのか、あとに残るのかを見ることです。

「痛くない範囲で動かしてください」

この言葉、整骨院や整体、リハビリ、運動指導の現場で本当によく使われます。

もちろん、悪い言葉ではありません。無理をさせたくない。痛みを悪化させたくない。患者さんを守りたい。そういう気持ちで言っていることがほとんどだと思います。

ただ、便利な言葉ほど雑に使われます。

少し辛口に言うと、「痛くない範囲で」とだけ言って終わるのは、説明としてかなり足りないです。

まなぶ先生
まなぶ先生

痛いなら動かさない方が安全じゃないんですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

安全な場合もあります。ただ、痛みを全部避けると、必要な動きまで失ってしまうことがあります。

「痛い=悪い」と思い込みすぎると、動きが小さくなる

痛みが出ると、多くの人は「悪くなったのでは」と不安になります。

そこに施術者から「痛くない範囲で」と言われると、患者さんはさらに慎重になります。少しでも痛い動きは避ける。怖いから動かさない。気づけば、身体の使い方がどんどん小さくなっていきます。

もちろん、痛みを我慢して無理に動かす必要はありません。

でも、痛みが少し出ただけで全部中止にしていると、身体は「そこは使わない方がいい」と学習していきます。

痛みを避けること自体は悪くありません。ただ、避け続けることで「使えない身体」を作ってしまうなら、それは回復から少し遠ざかっています。

見るのは、痛いか痛くないかだけではない

痛みを見るときに大事なのは、「痛いかどうか」だけではありません。

もう少し細かく見ると、判断しやすくなります。

どれくらい動かすと痛いか 少し動かしただけで痛いのか、大きく動かした時だけ痛いのかを見ます。
どれくらい強く痛いか 軽い違和感なのか、鋭い痛みなのか、我慢できない痛みなのかを確認します。
どれくらい痛みが残るか 動きをやめたらすぐ引くのか、しばらく残るのか、翌日まで悪化するのかを見ます。
動かす量

少し動かしただけで痛いのか、大きく動かした時だけ痛いのかを見ます。

痛みの強さ

軽い違和感なのか、鋭い痛みなのか、我慢できない痛みなのかを確認します。

あとに残るか

動きをやめたらすぐ引くのか、しばらく残るのか、翌日まで悪化するのかを見ます。

たとえば、少し動かしただけで強く痛む。痛みがどんどん増える。動いた後もしばらく残る。翌日に明らかに悪化する。

こういう場合は、無理に動かすより、まず状態を見直した方がいいです。

一方で、少し違和感はあるけれど、動きをやめるとすぐ落ち着く。翌日も悪化しない。こういう痛みは、必ずしも「壊している痛み」とは限りません。

まなぶ先生
まなぶ先生

痛みが出た瞬間にアウト、ではないんですね。

瀬谷崎
瀬谷崎

そうです。痛みの強さだけでなく、出方と残り方を見ると判断しやすくなります。

避けた方がいい痛みと、怖がりすぎなくていい痛み

ここは患者さんにも、施術者にも大事なところです。

痛みはすべて同じではありません。

避けた方がいい痛み

少し動かしただけで強く痛む、痛みがどんどん増える、動作後もしばらく痛みが残る、翌日に明らかに悪化する。このような場合は、無理に進めず状態を確認した方がいいです。

怖がりすぎなくていい痛み

軽い違和感や痛みはあるが、動きをやめるとすぐ落ち着く。後に残らない。翌日も悪化しない。この場合は、少しずつ身体を動かす経験を積んだ方がいいこともあります。

もちろん、自己判断で無理をしていいという意味ではありません。

大事なのは、「痛いから全部ダメ」と決めつけないことです。逆に、「痛くても根性で動かせ」でもありません。

この間の判断を、ちゃんと見ていく必要があります。

動かさないことを、身体が覚えてしまう

痛みを避け続けると、身体は「その部位を使わない動き」を覚えていきます。

腰が痛いから腰を動かさない。肩が痛いから肩を使わない。膝が痛いから膝をかばう。

最初は痛みを避けるための工夫でも、それが続くと、かばう動きが当たり前になってしまいます。

こういう状態は、学習性不使用と呼ばれることがあります。簡単に言えば、身体が「使わないこと」を覚えてしまう状態です。

まなぶ先生
まなぶ先生

痛みが怖くて避けていた動きが、そのまま癖になることもあるんですね。

瀬谷崎
瀬谷崎

あります。だからこそ、休ませる時期と、少しずつ動かす時期を分けて考えたいんです。

身体の部位は、使うことで感覚が戻りやすくなります。逆に、使わない状態が長く続くと、その部位をうまく動かす感覚が鈍くなることがあります。

痛みが長引く人ほど、「どこに力を入れたらいいか分からない」「どう動かせばいいか分からない」という状態になっていることがあります。

痛みは、組織が壊れているサインとは限らない

ここも誤解されやすいところです。

昔から、「痛みがある=どこかが傷ついている」と考えられがちです。もちろん、実際に損傷が関係している痛みもあります。

ただ、痛みはそれだけではありません。

国際疼痛学会(IASP)は、痛みを「実際の組織損傷、または組織損傷が起こりうる状態に関連する、あるいはそれに似た不快な感覚・情動体験」としています。

少し難しい言い方ですが、要するに、痛みは感覚だけでなく、不安や警戒、過去の経験なども関係するということです。

ここを誤解しない

痛みを軽く見ていい、という意味ではありません。ただ、「痛い=必ず悪化」と決めつけると、必要な動きまで避けてしまいます。痛みの意味を丁寧に見極めることが大切です。

言葉を、もう少し丁寧にする

施術者側が「痛くない範囲で」と言いたくなる気持ちは分かります。

でも、それだけだと患者さんは判断できません。

本当は、もう少し具体的に伝えた方がいいです。

声かけの例

動かした時に少し痛みが出るかもしれません。ただ、その痛みがどんどん強くならず、動きをやめたら落ち着き、帰宅後や翌日に悪化しないようであれば、身体が悪くなっているサインとは限りません。不安になりすぎず、少しずつ動かしていきましょう。

この説明があるだけで、患者さんの受け取り方は変わります。

痛みが出た瞬間に「また悪くした」と思うのではなく、「これは様子を見ていい痛みなのか、避けるべき痛みなのか」と整理しやすくなります。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、痛みをただ我慢させることはしません。逆に、痛みを必要以上に怖がらせることもしません。

大切なのは、今の痛みがどの段階なのか、どの動きで反応するのか、どの程度までなら許容できるのかを見極めることです。

そのために、問診と検査を行い、患者さんに分かる言葉で説明します。

とんとんの基本姿勢

「動かす」「休ませる」を感覚だけで決めない。痛みの出方、残り方、生活への影響を見ながら、その人に必要な運動と施術を考えます。

こんな方は一度ご相談ください

  • 痛みが怖くて、動かすことを避けるようになっている
  • 動くたびに「悪化したのでは」と不安になる
  • 腰痛、肩の痛み、膝の痛みなどが長引いている
  • 痛くない動きばかり選んで、身体の使い方が小さくなっている
  • 運動した方がいいのか、休んだ方がいいのか分からない
医療機関の受診について

強い痛みが急に出た、しびれや脱力が強い、排尿・排便の異常がある、発熱や外傷を伴う、安静にしていても強い痛みが続くなどの場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。

参考

「痛いから動かさない」で止まらない

痛みがあると、動くのが怖くなります。それは自然な反応です。

ただ、怖いから全部避ける、痛くない動きだけを選ぶ、という状態が長く続くと、身体はさらに動きにくくなることがあります。

大切なのは、痛みの強さ、出るタイミング、残り方を見ながら、避けるべき痛みと、少しずつ慣らしていく痛みを分けて考えることです。

瀬谷崎
瀬谷崎

痛みは怖がりすぎても、無視しすぎてもよくありません。今の身体にとって、どこまで動かしていいのかを一緒に見ていきましょう。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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