棘上筋と棘下筋の停止部はどこまで広がる?腱板を面で見るために

腱板は、教科書の線よりも少し複雑に見る

棘上筋は大結節上面、棘下筋は大結節中面。そう覚えることは大事です。ただ、肩の評価では、その単純な区分だけでは見落とすものがあります。

棘上筋と棘下筋の停止部は、きれいに線で分かれるというより、面として重なりながら広がっています。だから腱板損傷や肩の痛みを考える時も、教科書的な名前だけで決めつけない方が安全です。

肩の評価を勉強していると、腱板の停止部はかなり早い段階で出てきます。

棘上筋は大結節の上面。

棘下筋は大結節の中面。

小円筋は大結節の下面。

こういう整理は、最初に全体像をつかむにはとても便利です。

ただ、臨床で腱板損傷や肩の痛みを考える時に、この整理だけで話を進めると、少し単純化しすぎることがあります。

少し辛口に言うと、「棘上筋テストが陽性だから棘上筋だけ」と考えるのは、肩をきれいに分けすぎです。

まなぶ先生
まなぶ先生

停止部って、教科書の表みたいにきっちり分かれているわけではないんですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

表で覚えるのは大事です。ただ、実際の停止部はもっと面として広がっていて、棘上筋と棘下筋もかなり近い関係で見た方がいいです。

教科書的な理解は、入り口としては必要

まず誤解しないでほしいのは、教科書的な理解が不要という話ではないことです。

棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋。

それぞれの起始、停止、支配神経、主な作用を覚えることは、評価や説明の土台になります。

問題は、その表をそのまま臨床の現実だと思い込みすぎることです。

棘上筋と棘下筋の停止部に関するまとめ

棘上筋と棘下筋の停止部を、教科書的な区分だけでなく、面として捉え直す時の参考図です。

近年の解剖学的な研究では、棘上筋は大結節上面の前方に付着し、一部では小結節側まで伸びることが報告されています。

また、棘下筋も従来の「大結節中面」というイメージより、上面の後方まで付着するように捉えられています。

つまり、棘上筋と棘下筋は、上面と中面できれいに分けられるというより、腱板全体の中で連続性を持って見た方が自然です。

停止部を「点」ではなく「面」で見る

肩の腱板を考える時、停止部を点で覚えると分かりやすいです。

ただ、実際の腱は骨に対して、幅を持って付着しています。

この付着部、いわゆるフットプリントを面として見ると、腱板損傷の見え方も少し変わります。

ここが大事

棘上筋と棘下筋の停止部は、臨床で扱いやすいように名前で分けられています。ただ、腱板は連続した構造でもあるため、損傷や痛みをひとつの筋名だけに閉じ込めないことが大切です。

たとえば、画像上で「棘上筋腱損傷」と言われた場合でも、実際には棘上筋と棘下筋の境界付近や、腱板の連続した領域に問題があることがあります。

逆に、臨床検査で棘上筋っぽい反応が出たとしても、それだけで棘上筋単独の問題と決めるのは早いです。

肩は、解剖学の名前よりも、実際にどの線維がどの方向で負荷を受けているかを考えた方が見えやすくなる場面があります。

作用も、単純にひとつでは言い切れない

教科書では、棘上筋は肩関節外転、棘下筋は外旋として説明されることが多いです。

これも、理解の入り口としては重要です。

ただ、停止部や線維の走行を細かく見ると、作用も単純な一語では表しにくくなります。

腱板は、肩を動かす筋でもありますが、同時に上腕骨頭を関節窩に安定させる役割も担っています。

そのため、ある筋が「外転だけ」「外旋だけ」と働くというより、他の腱板筋や三角筋、肩甲骨の動きと合わせて機能していると考えた方が臨床的です。

まなぶ先生
まなぶ先生

停止部が違って見えると、作用の考え方も変わるんですね。

瀬谷崎
瀬谷崎

変わる可能性があります。ただ、そこからすぐ「だからこの手技で治る」と飛ばないことです。解剖は推論の材料であって、断定の道具ではありません。

腱板損傷も、名前だけで場所を決めない

腱板損傷では、「棘上筋腱損傷」という言葉がよく出ます。

もちろん、棘上筋腱は腱板損傷で重要な部位です。

ただ、停止部の解剖を踏まえると、損傷の場所や広がりを筋名だけで単純に決めるのは危ういです。

見方 単純化しすぎると 臨床での視点
棘上筋腱損傷 棘上筋だけの問題と考えやすい 棘下筋との境界や腱板全体の連続性も見る
棘下筋の停止部 中面だけに付くと考えやすい 大結節上面後方までの付着を考慮する
徒手検査 陽性なら特定の筋だけと決めやすい 痛み、筋力、可動域、画像、生活動作を合わせて見る
作用の説明 外転、外旋だけで説明しやすい 骨頭の安定化や共同収縮も考える

このあたりは、患者さんへの説明でも大切です。

「棘上筋が切れています」と言われると、患者さんはその筋肉だけが悪いように受け取ることがあります。

でも実際には、腱板全体の機能、肩甲骨の動き、痛みによる防御、筋力低下、生活での負荷などが関係します。

筋名は便利ですが、便利な言葉ほど強くなりすぎます。

評価では、解剖を使いながら疑い続ける

解剖学は、臨床推論の強い味方です。

ただし、解剖学の知識だけで病態を確定できるわけではありません。

停止部がこうだから、この痛みはこの筋である。

この検査が陽性だから、この腱が損傷している。

そう言い切るには、少し慎重さが必要です。

評価で見たいこと

肩の痛みでは、痛む方向、筋力低下の有無、夜間痛、可動域制限、外傷歴、画像所見、生活での使い方、医療機関での確認が必要な可能性を合わせて見ます。

棘上筋と棘下筋の停止部の見直しは、臨床を難しくするための話ではありません。

むしろ、肩の評価を雑に単純化しないための補助線です。

「この筋だけ」「この腱だけ」と決めつけず、腱板という連続した構造として見る。

その方が、患者さんへの説明も少し誠実になります。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、肩の痛みをひとつの筋名だけで片づけないことを大切にしています。

棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋。

もちろん、それぞれの筋は見ます。

ただ、それだけではなく、肩甲骨の動き、上腕骨頭の位置、痛みが出る動作、生活での負荷、神経症状の有無なども合わせて考えます。

必要に応じて、医療機関での画像検査や診察が必要になる可能性もお伝えします。

とんとんの基本姿勢

解剖学は大切です。ただし、解剖学だけで痛みを決めない。検査、症状、生活背景を合わせて、肩の状態を総合的に見ます。

こんな肩の痛みは一度ご相談ください

  • 肩を上げる時に痛みや引っかかりがある
  • 腱板損傷と言われたが、何をすればいいか分からない
  • 棘上筋、棘下筋などの説明を受けたが、症状との関係が分からない
  • 夜間痛や力の入りにくさが続いている
  • 肩の痛みが長引き、運動や仕事に支障が出ている
医療機関の確認が必要なこともあります

外傷後に肩が上がらない、急な強い痛みがある、明らかな筋力低下がある、夜間痛が強い、しびれや広範な神経症状を伴う場合などは、医療機関での確認が必要になることがあります。

筋名より、構造のつながりを見る

棘上筋は大結節上面、棘下筋は大結節中面。

この整理は大切です。

ただ、実際の肩では、腱板はもっと連続した構造として働いています。

停止部の広がりを知ると、筋名だけで痛みや損傷を決めることの危うさが見えてきます。

解剖学は、断定するためではなく、疑い方を増やすために使いたいです。

肩の評価では、教科書の表を土台にしつつ、目の前の症状に合わせて考え直す。

そこが臨床では大事だと思っています。

瀬谷崎
瀬谷崎

解剖は暗記で終わらせると固くなります。停止部の広がりを知ると、肩の評価も少し柔らかく考えられるようになります。

参考

  • Mochizuki T, et al. Humeral insertion of the supraspinatus and infraspinatus. New anatomical findings regarding the footprint of the rotator cuff.
    CiNii Research
  • Revisiting the rotator cuff footprint.
    PMC
  • Location and Initiation of Degenerative Rotator Cuff Tears: An Analysis of Three Hundred and Sixty Shoulders.
    PMC
  • Humeral attachment of the supraspinatus and infraspinatus tendons: an anatomic study.
    PubMed
瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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