股関節の可動域はどこまで股関節なのか?骨盤と腰椎の動きを分けて見る
瀬谷崎コラム
股関節の可動域は、股関節だけで決まらない
股関節屈曲125度という数字は、臨床でよく目にします。ただ、その角度には骨盤の傾きや腰椎の動きが混ざっていることがあります。見かけの可動域を、そのまま股関節単独の動きと考えないことが大切です。
股関節が硬いように見えても、制限の主役が股関節とは限りません。股関節単独の動き、骨盤後傾、腰椎の屈曲を分けて見る必要があります。
股関節の可動域を見る時、「屈曲は125度くらい」と習った方は多いと思います。
患者さんにも、「股関節が硬いですね」「屈曲が制限されています」と説明する場面があります。
ただ、ここで少し立ち止まりたいところがあります。
その角度は、本当に股関節だけの動きでしょうか。
股関節を曲げる時、骨盤は後ろに倒れ、腰椎も丸くなります。
つまり、見かけ上の股関節屈曲角度には、股関節そのものの動きだけでなく、骨盤と腰椎の動きが混ざります。
少し辛口に言うと、ゴニオメーターで角度を測っただけで「股関節が硬い」と決めるのは、かなり雑です。


まなぶ先生

瀬谷崎
参考可動域と、実際の股関節単独の動き
一般的な参考可動域では、股関節屈曲は125度前後とされることがあります。
これは臨床で使いやすい目安です。
ただし、研究では、新鮮遺体を用いて股関節単独の屈曲を見た場合、平均で90度台にとどまるという報告があります。
この差は何を意味するのか。
簡単に言えば、臨床で見ている股関節屈曲には、骨盤や腰椎の動きが含まれている可能性があるということです。
股関節を深く曲げるほど、骨盤は後傾しやすくなります。
さらに腰椎も屈曲し、全体として脚が大きく上がって見えます。
股関節屈曲125度という数字は便利です。ただ、その数字を「股関節単独の動き」として扱うと、評価を見誤ることがあります。
骨盤と腰椎が混ざると、制限の場所を間違える
股関節屈曲が小さく見える時、すぐに股関節そのものの制限と考えたくなります。
でも、実際にはいくつかの可能性があります。
股関節の関節包や筋肉が制限している。
骨盤が後傾しにくい。
腰椎がうまく丸まらない。
反対に、股関節単独の動きは少ないけれど、骨盤と腰椎の代償で大きく曲がって見えている。
こうしたことが起こります。
見かけ上の股関節屈曲制限が、股関節によるものなのか、骨盤や腰椎によるものなのかを分けて考える必要があります。
たとえば、仰向けで膝を胸に近づける動きでは、骨盤が後傾しやすくなります。
その骨盤の動きを止めずに角度だけを見ると、「よく曲がる股関節」に見えることがあります。
逆に、骨盤の動きが少ない人では、股関節そのもの以上に制限が強く見えることもあります。
臨床では、どこが動いているかを見る
股関節の可動域を評価する時は、角度だけでなく、動きの内訳を見ます。
股関節がどこまで曲がっているのか。
骨盤はいつから後傾し始めるのか。
腰椎はどれくらい丸くなるのか。
左右差はあるのか。
痛みや詰まり感はどのタイミングで出るのか。
こうした情報を合わせると、見かけの角度だけでは分からないことが見えてきます。
| 見ていること | 確認したいポイント | 臨床での意味 |
|---|---|---|
| 股関節単独の屈曲 | 骨盤の動きを抑えた時にどこまで曲がるか | 関節包、筋、関節形態などの制限を考える |
| 骨盤後傾 | 屈曲の途中から骨盤が後ろに倒れるか | 見かけの可動域を増やしている可能性を見る |
| 腰椎屈曲 | 腰が丸まって動きを補っていないか | 腰椎・骨盤の代償を考える |
| 症状の出方 | 痛み、詰まり感、不安感がどこで出るか | 股関節由来か、周辺の影響かを整理する |
角度は便利です。
でも、角度だけでは動きの質は分かりません。
股関節を見ているつもりで、実は腰椎と骨盤の動きを見ていることもあります。
痛みや詰まり感も、股関節だけで決めない
股関節を曲げた時に、前側が詰まる。
鼠径部が痛い。
深くしゃがみにくい。
こうした訴えがあると、股関節そのものの問題を考えます。
FAI、関節唇、関節包、腸腰筋、骨性の形態などはもちろん評価の対象です。
ただし、骨盤や腰椎の動きが少ないことで、股関節前方に負担が集中していることもあります。
反対に、腰椎や骨盤が過剰に動くことで、股関節の制限が隠れていることもあります。
股関節の動きに制限があるように見えますが、骨盤や腰の動きも関係している可能性があります。股関節単独の硬さなのか、腰椎・骨盤の動き方なのかを分けて確認していきます。
この説明があるだけで、患者さんは「股関節が悪い」と決めつけずに済みます。
そして施術者側も、介入の方向を間違えにくくなります。

まなぶ先生

瀬谷崎
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、股関節の可動域を角度だけで判断しないようにしています。
股関節そのものが動いているのか。
骨盤が後傾していないか。
腰椎が丸まっていないか。
痛みや詰まり感はどこで出るのか。
日常生活のどの動作で困っているのか。
こうした情報を合わせて、股関節、骨盤、腰椎のどこに介入すべきかを考えます。
見かけの可動域だけで「股関節が硬い」と決めない。股関節単独の動きと、腰椎・骨盤の動きを分けて評価します。
こんな股関節の悩みは一度ご相談ください
- 股関節が硬いと言われたが、何が硬いのか分からない
- 深くしゃがむと股関節の前側が詰まる
- ストレッチしても股関節の可動域が変わりにくい
- 股関節の痛みと腰の動きの関係が気になる
- 股関節、骨盤、腰椎を分けて評価してほしい
強い痛みが急に出た、歩行が困難、外傷を伴う、発熱がある、安静時や夜間にも強い痛みが続く場合などは、まず医療機関での確認が必要になることがあります。
角度より、どこが動いているか
股関節屈曲125度という数字は、ひとつの目安です。
ただ、その数字には骨盤や腰椎の動きが含まれている可能性があります。
股関節単独の動きは、見かけより小さいことがあります。
だから、可動域を見る時は、角度だけではなく、どこが動いているかを見ます。
股関節が硬いのか。
骨盤が動かないのか。
腰椎で代償しているのか。
その整理ができると、施術や運動指導の方向性も変わってきます。

瀬谷崎
参考
- Influence of pelvic rotation on hip flexion.
ScienceDirect - Hip range of motion and movement patterns in people with hip-related pain.
PMC - American Academy of Orthopaedic Surgeons. Joint Motion Method of Measuring and Recording.
Internet Archive - Measurement of hip range of flexion-extension and straight-leg raising.
PubMed













