職場で後輩の自信を削る先輩とは、どう距離を取ればいいのか
セラピスト向け
その先輩の言葉で、自信を失いすぎなくていい
明らかなパワハラではないけれど、なぜか疲れる。職場には、指導に見えて後輩の自信を少しずつ削る関わり方があります。大事なのは、全部を自分の未熟さとして受け取らないことです。
先輩の言葉がいつも正しいとは限りません。患者さんのための指導なのか、先輩自身の承認欲求や自己防衛なのか。そこを分けて見るだけで、心の削られ方はかなり変わります。
治療院や整骨院で働いていると、先輩との距離感に悩むことがあります。
怒鳴られるわけではない。明確に悪口を言われるわけでもない。だけど、話した後にどっと疲れる。練習のたびに自信がなくなる。指導のようで、どこかマウントを取られている感じがする。
こういう関わり方は、名前をつけにくいぶん厄介です。
少し辛口に言うと、「指導しているふう」で自分の不安や承認欲求を後輩にぶつけている先輩は、どの職場にも一定数います。

まなぶ先生

瀬谷崎
現場にほぼ来ない患者さんを演じるロープレ
新人の練習として、問診や説明のロールプレイをすること自体は大切です。
ただ、そこで極端に気難しい患者さん、ほとんど出会わないようなクレーム対応、やたら詰めてくる設定ばかりを演じる先輩がいます。
もちろん、難しいケースを想定する練習も必要です。ただ、まだ基本の説明も固まっていない新人に、いきなり高難度の状況ばかりぶつけると、育成というより心を折る練習になります。
ロープレの目的は、先輩の対応力を見せつけることではありません。後輩が現場で使える成功体験を少しずつ積むことです。
もし練習後に「やっぱり自分は向いていない」とばかり感じるなら、そのロープレの設計が悪い可能性があります。
新人が未熟なのは当然です。未熟な人に合わせて段階を作るのが、指導する側の仕事です。
難しい患者さんを押しつけてくる先輩
職場によっては、難しい患者さんや対応に工夫が必要な方を、なぜか後輩に回してくる先輩がいます。
表向きには「経験になるから」「コミュニケーションの練習になるから」と言う。でも実際は、自分が担当してうまくいかなかった時に傷つきたくないだけ、ということもあります。
ここを全部「自分が試されている」と受け取ると、後輩側はかなりしんどくなります。
本当に育成のためなら、事前に背景を共有し、対応後に一緒に振り返るはずです。ただ投げて終わりなら、それは教育というよりリスクの押しつけかもしれません。
難しい患者さんを担当すること自体が悪いわけではありません。むしろ、成長につながることもあります。
ただし、その経験にはサポートが必要です。丸投げされた結果だけで、自分の能力を低く見積もりすぎないでください。
「分かる人には分かる」で押してくる感覚マウント
施術の現場では、手の感覚を大切にする場面があります。
筋緊張の変化、圧への反応、動きの軽さ、患者さんの表情。こうした細かい変化を見ようとすることは大切です。
ただ、ときどき「この数ミリのズレが分かるでしょ」「触れば溶ける感じがあるでしょ」と、分からない前提を許さない先輩がいます。
これが厄介なのは、後輩が「分かりません」と言いづらくなることです。

まなぶ先生

瀬谷崎
感覚は、言語化と確認があって初めて育ちます。
「分かる人には分かる」で終わる指導は、後輩を育てているようで、実は先輩自身の特別感を守っているだけかもしれません。
浅い知識でマウントを取ってくる先輩
知識を共有することは、本来とても良いことです。
見逃したくない疾患、医療機関へつなぐ目安、論文やガイドラインの読み方。こうした話を職場でできるのは、むしろ健全です。
ただ、知識が「患者さんのため」ではなく「自分が上に立つため」に使われると、空気が変わります。
やたらクイズ形式で詰める。抄録だけ読んで分かった気になる。動物実験の結果をそのまま人間に当てはめる。基礎知識を大げさに出して、後輩の無知を演出する。
浅い知識マウントは腹が立ちますが、真っ向からぶつかると消耗します。患者さんの安全に関わる内容でなければ、必要以上に自分の心を使わない方がいい場面もあります。
もちろん、間違った知識が患者さんへの説明や施術方針に影響するなら、放置できないこともあります。
ただ、毎回すべてに反論していると、自分の仕事に集中できなくなります。実害の有無で分ける視点は大事です。
後輩側が心を守るためにできること
こういう先輩に出会った時、まず大事なのは「自分が全部悪い」と思いすぎないことです。
指導を受ける立場だと、どうしても先輩の言葉が正解に見えます。特に新卒や若手の時期は、自分の判断にまだ自信がありません。
でも、先輩も人間です。自信のなさ、承認欲求、失敗への恐怖、忙しさ、知識不足を抱えています。それが指導の形で出てしまうことがあります。
- その指導は、患者さんの利益につながっているか
- 後輩が次に何をすればいいか、具体的になっているか
- ただ不安や劣等感だけを残していないか
- 先輩自身の自慢や自己防衛が中心になっていないか
- 信頼できる別の人にも相談できる内容か
このあたりを見ていくと、受け止めるべき指導と、距離を置いた方がいい言葉が少し分かれてきます。
後輩を育てるふりをして、自分のすごさを確認しているだけの指導はあります。そういう言葉まで真面目に全部飲み込む必要はありません。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、患者さんへの説明だけでなく、スタッフ同士の伝え方も大切にしています。
臨床の指導は、相手をへこませるためではありません。次に何を見ればいいか、どこを直せばいいか、患者さんにどう還元するかを一緒に整理するためのものです。
厳しいことを言う場面がゼロになるわけではありません。ただ、厳しさには目的が必要です。目的のない厳しさは、ただの自己満足になりやすいです。
指導の質は、言った側の気持ちよさではなく、言われた側が次の行動に移れるかで見た方がいいです。後輩が萎縮するだけなら、それは教育としてかなり弱いです。
先輩側も、自分の指導を見直した方がいい
若手に向けた話に見えますが、中堅や院長側にも刺さる話です。
自分は育てているつもりでも、後輩から見ると「試されている」「恥をかかされている」「ただマウントを取られている」と感じていることがあります。
特に、経験がある人ほど、自分の言い方が強くなっていることに気づきにくいです。
| 見直したい指導 | 起こりやすい問題 | 整えたい方向 |
|---|---|---|
| 高難度ロープレばかりする | 後輩が成功体験を積めない | 基本から段階を作る |
| 難しい患者さんを丸投げする | 不安と責任だけが残る | 事前共有と振り返りをセットにする |
| 感覚を分かる前提で話す | 後輩が分かったふりをする | 言語化して確認できる形にする |
| 知識で詰める | 学ぶより萎縮が強くなる | 次に調べる視点を渡す |
起こりやすい問題:後輩が成功体験を積めない。
整えたい方向:基本から段階を作る。
起こりやすい問題:不安と責任だけが残る。
整えたい方向:事前共有と振り返りをセットにする。
起こりやすい問題:後輩が分かったふりをする。
整えたい方向:言語化して確認できる形にする。
起こりやすい問題:学ぶより萎縮が強くなる。
整えたい方向:次に調べる視点を渡す。
指導は、相手を自分の下に置くためのものではありません。
患者さんのために、後輩が少しずつ自分で考えられるようにする。そのために先輩の経験を使うものです。
若手は、目の前の仕事に戻っていい
職場の先輩に振り回されると、自分の価値まで揺らぎます。
でも、先輩の機嫌や承認欲求まで背負う必要はありません。
学ぶべきことは学ぶ。おかしいと思うことは、心の中で距離を置く。必要なら信頼できる人に相談する。そして、最終的には目の前の患者さんと、自分の課題に戻る。
それでいいと思います。
距離を置くことも、仕事を続けるための技術
良い先輩からは、たくさん学べます。
でも、すべての先輩の言葉を同じ重さで受け取る必要はありません。指導に見えるマウント、育成に見える丸投げ、感覚の共有に見える同調圧力。そういうものは、若手の自信を静かに削ります。
大切なのは、反抗することではなく、見極めることです。自分の心を守りながら、患者さんに向き合う力を育てていく。そのためには、心理的な距離を取ることも必要です。

瀬谷崎













