関節固定は慎重に。指の拘縮を作らないために見るべきこと
守るための固定が、動きを奪うこともある
固定は、損傷部位を守るために必要な処置です。ただし、目的や期間、角度、動かしてよい範囲を見ないまま続けると、拘縮という別の問題につながることがあります。

掌側板損傷や骨折後の固定では、患部を守ることと、関節の動きを失わせないことの両方が大切です。ここでは、固定の目的、拘縮リスク、動かしてよい範囲、経過確認、患者さんへの説明で押さえたい点をまとめました。
結論:固定は「するか、しないか」ではなく、何を守るために、どの角度で、どの範囲を、どれくらい固定するかを考えることが大切です。拘縮を防ぐには、固定中から経過確認と安全な範囲での運動計画が必要になります。
固定は必要。でも慎重に扱う
骨折や靱帯損傷では、固定が必要になる場面があります。動かしてはいけない時期に無理に動かせば、痛みが増えたり、損傷部位の安定性が損なわれたりすることがあります。
一方で、固定を長く続けすぎたり、固定する範囲が広すぎたり、経過確認が不十分だったりすると、関節の動きが戻りにくくなることがあります。特に指のPIP関節は、少しの固定でも硬さが残りやすい部位です。
「怪我を作るのは患者さん、拘縮を作るのは治療家」
少し厳しい言葉ですが、固定やリハビリを担当する側が忘れてはいけない視点です。固定の目的だけでなく、固定後に起こり得る拘縮まで見ておく必要があります。
Chapter 1掌側板損傷で考えたいこと
掌側板は、指のPIP関節が過伸展しすぎないように支える組織です。ボールが指に当たる、指が反り返る、転倒して手をつくなどの場面で損傷することがあります。骨片を伴う場合は、掌側板裂離骨折として扱われることもあります。
このような外傷では、痛みや腫れを抑え、関節を守るために固定やテーピングが使われることがあります。ただし、どの角度で固定するか、どの範囲まで動かしてよいか、いつから運動を進めるかは、損傷の程度や安定性によって変わります。
固定を勝手に外すことをすすめる記事ではありません。医師や手外科、担当者の指示を確認したうえで、固定中に何を観察し、どのタイミングで動きを確認するかを考える記事です。
Chapter 2拘縮は「あとで頑張れば戻る」とは限らない
拘縮は、関節や周囲の軟部組織が硬くなり、可動域が制限された状態です。指の関節では、腫れ、痛み、固定、使わない期間が重なることで、屈曲や伸展が戻りにくくなることがあります。
実際に、掌側板の骨折後に約2週間固定したことで、その後に完全屈曲ができなくなる例もあります。短いように見える期間でも、指の関節では大きな影響が残ることがあります。
固定後に「痛みは落ち着いたけど、曲がらない」が残ると、日常動作の困りごとが長引きます。外傷を治す視点と、動きを残す視点はセットで考えます。
Chapter 3固定中に確認したいポイント
固定をしている時こそ、ただ待つのではなく、経過を見ます。腫れ、痛み、皮膚の状態、しびれ、色調、固定具の圧迫、隣接関節の動きなどを確認します。
固定されていない関節まで固まっていないか、動かしてよい範囲を患者さんが理解しているかも大切です。説明があいまいだと、患者さんは怖くて全部を動かさなくなることがあります。
| 見るポイント | 確認したいこと | 目的 |
|---|---|---|
| 固定の目的 | 何を守るための固定か、どの動きを制限したいのか | 固定しすぎを防ぐ |
| 固定の角度と範囲 | DIP関節(遠位指節間関節)、PIP関節(近位指節間関節)、MP関節(中手指節関節)のどこまで固定しているか | 不要な関節拘縮を避ける |
| 腫れと皮膚 | 圧迫、発赤、しびれ、色調変化、むくみがないか | 固定具によるトラブルを拾う |
| 動かしてよい範囲 | 安全に動かせる関節や運動が説明されているか | 使わなさすぎを防ぐ |
Chapter 4患者さんへの説明で差が出る
患者さんは「固定されている=全部動かしてはいけない」と受け取ることがあります。反対に、「痛みが引いたからもう大丈夫」と自己判断で外してしまうこともあります。
だからこそ、固定の目的、してはいけない動き、動かしてよい範囲、確認してほしい異常サインを具体的に伝える必要があります。
- 固定を外してよいかは自己判断しない
- 痛みや腫れ、しびれ、色の変化が強くなったら相談する
- 固定されていない関節は、指示された範囲で動かす
- 固定の期間や再評価の予定を確認する
- 「動かさない」と「守りながら動かす」を分けて理解する
骨折や脱臼、強い腫れ、変形、しびれ、循環障害が疑われる場合は、整骨院だけで判断せず医療機関での確認が必要です。固定の変更や運動開始も、損傷の安定性を確認したうえで行います。
固定管理は「守る」と「動かす」のバランス
固定は患部を守るために必要です。ただ、守ることだけに意識が向きすぎると、関節の動きを失うリスクが見えにくくなります。
大切なのは、固定の目的を明確にし、必要な範囲を守りながら、動かしてよい部位を確認し続けることです。拘縮は起きてから戻すより、起こさないように管理する方がずっと大切です。
拘縮を作らないために、固定後の経過まで見る
外傷を受けるのは患者さんですが、固定の仕方や経過管理によって、拘縮のリスクは変わります。だからこそ、施術者側は「固定したら終わり」ではなく、その後の動きまで責任を持って見ていく必要があります。
固定を慎重に扱うとは、固定を怖がることではありません。必要な固定を行いながら、角度、範囲、期間、再評価、運動開始のタイミングを丁寧に確認することです。
参考
- 参考資料:髙原佑輔 指導統括「固定と拘縮に関する臨床メモ」
- The British Society for Surgery of the Hand:Volar plate injury
- American Family Physician:Common Finger Fractures and Dislocations
- AO Surgery Reference:Nonoperative treatment for volar plate avulsion














