腰痛の原因は腰以外にもある。仙腸関節・股関節・腰椎の切り分け
腰の訴えに、骨盤後方・鼠径部・荷重痛が混ざっていないか
腰が痛いと言われても、痛みの発生源が腰椎だけとは限りません。仙腸関節は骨盤後方や臀部、股関節は鼠径部や大腿前面・外側に痛みを出すことがあり、腰椎由来の下肢症状と重なって見えることがあります。
腰痛、臀部痛、鼠径部痛、下肢痛を、腰椎、仙腸関節、股関節のどこから考えるか確認します。単体疾患の詳説ではなく、問診と検査の順番を作るための親記事としてまとめます。
結論:腰痛を切り分ける時は、痛みの場所、荷重での変化、股関節可動域、仙腸関節誘発テスト、神経所見を合わせます。腰椎だけを疑わず、骨盤と股関節を同じ流れで確認します。
痛い場所を指で示してもらうところから始める
「腰が痛い」という言葉の範囲は広く、患者さんによって指している場所が違います。腰の中央、腰の片側、仙腸関節付近、臀部、鼠径部、大腿外側、膝周囲まで、すべて腰痛として表現されることがあります。
そのため、最初に痛む場所を指で示してもらいます。腰椎の棘突起周辺なのか、PSIS(上後腸骨棘)周辺の骨盤後方なのか、鼠径部なのか、臀部の深部なのかで、次に確認する検査が変わります。痛みの場所は診断名を決めるためではなく、検査の順番を決めるために使います。
腰椎由来は動作方向と神経症状を確認する
腰椎由来の痛みでは、前屈、後屈、回旋、長時間座位、立位、歩行などで症状が変わることがあります。椎間板性、椎間関節性、筋筋膜性、神経根症状、脊柱管狭窄症などで、悪化しやすい動作や楽になる姿勢が異なります。
下肢痛やしびれを伴う場合は、腰椎神経根症状も確認します。SLR、FNS、筋力、感覚、腱反射を組み合わせ、痛みの分布と神経学的所見が同じ方向を向いているかを見ます。腰の局所痛だけでなく、足に広がる症状があるかどうかが大きな分岐です。
前かがみや長時間座位で増えるかを確認します。
反る、ひねる動きで局所痛や下肢症状が出るかを見ます。
しびれ、感覚低下、筋力低下、腱反射の左右差を確認します。
歩くと悪化し、前かがみや座位で楽になるかを確認します。
仙腸関節は骨盤後方の片側痛を重視する
仙腸関節障害では、腰の真ん中よりも骨盤後方、PSIS周辺、臀部の片側に痛みが出ることがあります。立ち上がり、寝返り、片脚荷重、歩き始め、階段、車の乗り降りなどで痛みが出る場合は、腰椎だけでなく仙腸関節も候補に入れます。
ただし、仙腸関節はひとつの圧痛やひとつのテストだけで決めるものではありません。痛みの場所、荷重時痛、複数の疼痛誘発テスト、腰椎や股関節所見との整合性を見ます。妊娠・産後、転倒、長時間の片側荷重、スポーツ歴なども確認します。
PSIS周辺、骨盤後方、臀部の片側痛を確認します。
片脚立ち、歩き始め、階段、立ち上がりで痛むかを聞きます。
複数の仙腸関節テストで症状が再現されるかを見ます。
妊娠・産後、転倒、外傷、片側荷重の習慣を確認します。
股関節は鼠径部痛と可動域制限を外さない
股関節由来の痛みでは、鼠径部、臀部、大腿前面、大腿外側、膝周囲に症状が出ることがあります。腰痛として来院していても、実際には股関節の可動域制限や荷重時痛が強く関わっていることがあります。
特に、靴下を履く、爪を切る、車に乗り降りする、あぐらをかく、階段を上がる、片脚に体重をかけるといった動作で鼠径部痛が出る場合は、股関節を確認します。屈曲、内旋、外旋、伸展の可動域と、左右差を見ます。
股関節前面、鼠径部、太もも前側に痛みがあるかを確認します。
股関節屈曲、内旋、外旋、伸展の左右差を見ます。
片脚荷重、歩行、階段で股関節周囲が痛むかを聞きます。
靴下、爪切り、車の乗り降り、あぐらで困るかを確認します。
臀部痛は腰椎・仙腸関節・股関節が重なりやすい
臀部痛は、腰椎、仙腸関節、股関節、梨状筋周囲、末梢神経、筋筋膜性疼痛など、複数の要因が重なりやすい場所です。痛む場所が臀部だから仙腸関節、足に響くから腰椎、とすぐに分けるのではなく、誘発される動作を確認します。
腰を動かすと変わるのか、股関節を動かすと変わるのか、片脚荷重で変わるのか、長く座ると変わるのかを分けます。臀部から下肢へ広がる症状がある場合は、神経根症状と末梢神経症状の両方を考えます。
腰椎の動き、股関節可動域、仙腸関節誘発テスト、荷重、座位、下肢神経症状を並べて確認します。臀部痛は一つの場所に見えても、背景は一つとは限りません。
下肢痛がある時は神経症状を別枠で確認する
仙腸関節や股関節でも、下肢へ痛みが広がるように感じることがあります。一方で、腰椎神経根症状では、しびれ、感覚低下、筋力低下、腱反射の変化が伴うことがあります。下肢痛がある時は、関連痛なのか神経症状なのかを分けて確認します。
足首が上がりにくい、つま先立ちが弱い、膝が抜ける、触った感じが左右で違う、腱反射に差がある場合は、腰椎神経根症状の重みが増します。股関節や仙腸関節の所見があっても、神経症状が進行している場合は別枠で扱います。
- しびれや感覚低下があるか
- 足首や母趾が上がりにくくないか
- つま先立ち、踵歩き、階段で左右差がないか
- 膝蓋腱反射やアキレス腱反射に左右差がないか
- 排尿・排便の変化やサドル部の感覚低下がないか
所見を並べて、矛盾を探す
腰椎、仙腸関節、股関節の切り分けでは、所見がきれいに一つへまとまらないことがあります。腰椎の画像変化があっても股関節可動域制限が主因のこともあれば、仙腸関節周囲に痛みがあっても神経根症状が混ざっていることもあります。
大切なのは、所見同士が同じ方向を向いているか、矛盾しているかを確認することです。鼠径部痛が強いのに股関節を動かしても変わらない、骨盤後方痛があるのに仙腸関節誘発テストで再現しない、下肢しびれがあるのに神経所見がそろわない、といったズレは再確認のきっかけになります。
動作方向、下肢症状、神経学的所見がそろうかを確認します。
骨盤後方痛、荷重痛、誘発テストの再現性を見ます。
鼠径部痛、可動域制限、荷重時痛が同じ方向かを見ます。
外傷、発熱、夜間痛、体重減少、進行する脱力を確認します。
施術では反応の出方を部位別に追う
施術で経過を追う場合は、痛みの強さだけでなく、どの動作が変わったかを部位別に見ます。腰椎由来なら前屈、後屈、座位、歩行、神経症状の変化。仙腸関節なら立ち上がり、寝返り、片脚荷重、階段。股関節なら靴下動作、歩行、階段、可動域の変化を確認します。
その場で軽くなった感覚だけではなく、翌日以降の戻り方、生活動作での困りごと、痛みの範囲の変化を追います。反応が想定と違う場合は、腰椎、仙腸関節、股関節の仮説を入れ替えて再評価します。
強い外傷後の痛み、発熱、体重減少、安静時痛、夜間痛、進行する脱力、排尿・排便の変化、サドル部の感覚低下がある場合は、腰椎・仙腸関節・股関節の切り分けより先に医療機関での確認を優先します。
腰痛は腰椎だけでなく、骨盤と股関節まで含めて考える
腰痛や臀部痛、鼠径部痛、下肢痛では、腰椎、仙腸関節、股関節を同じ流れで確認します。痛みの場所、荷重での変化、股関節可動域、仙腸関節誘発テスト、神経所見を並べることで、どこを優先して扱うべきかが見えやすくなります。
腰椎だけに絞ると、骨盤後方痛や股関節由来の痛みを見落とすことがあります。逆に、仙腸関節や股関節の所見があっても、進行する神経症状や危険サインがあれば別の対応が必要です。切り分けは一度で終わらせず、反応を見ながら更新していきます。
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