仙腸関節障害の疼痛誘発テストとは?クラスターテストと仙腸関節スコアの見方
施術・検査ガイド
仙腸関節障害は、ひとつの検査で決めない
疼痛誘発テストとスコアの使い方
仙腸関節障害の評価では、単独テストだけに頼らないことが大切です。疼痛誘発テストはクラスターテストとして組み合わせ、問診で拾える仙腸関節スコアも合わせて整理します。
この記事は、仙腸関節障害に対する疼痛誘発テストと仙腸関節スコアについて、院内資料をもとに整理したものです。仙腸関節まわりの痛みは、腰椎疾患や股関節周囲の問題と症状が重なることがあるため、問診、疼痛部位、触診、誘発テストを合わせて評価していきます。
結論:仙腸関節障害は、単独テストではなく、クラスターテストと仙腸関節スコアを組み合わせて評価するのが実用的です。
仙腸関節障害では、腰痛や臀部痛、鼠径部痛、座位での痛みなどがみられることがあります。ただし、これらの症状は腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、股関節周囲の問題とも重なるため、症状だけで判断するのは難しい領域です。
そのため、仙腸関節障害を評価する際は、疼痛誘発テストを複数組み合わせ、さらに問診段階で拾える仙腸関節スコアを使って、全体像を整理していきます。
仙腸関節障害で見るポイント
仙腸関節は、骨盤の後方で仙骨と腸骨をつなぐ関節です。動きは大きくありませんが、荷重や歩行、座位、立ち上がりなどで負担がかかる部位です。
評価では、痛みの場所、誘発される動作、座位での増悪、PSIS周囲の圧痛、鼠径部痛の有無などを確認します。特に仙腸関節スコアは、ヒアリング段階で拾える項目の配点が高く、評価をスムーズに進めるための手がかりになります。
- PSIS周辺を指で示せる痛みがある
- 鼠径部痛を伴う
- 椅子座位で痛みが増悪する
- PSIS周囲や仙結節靭帯に圧痛がある
- 仙腸関節shearテストなどで痛みが誘発される
疼痛誘発テストは単独で決めない
仙腸関節障害の評価では、Compression test、Distraction test、Thigh Thrust test、Sacral Thrust test、Gaenslen testなどが用いられます。ただし、それぞれ単独で見ると、検査精度は十分に高いとは言えません。

| Compression test | 感度:69% 特異度:69% 陽性尤度比:2.20 / 陰性尤度比:0.46 |
|---|---|
| Distraction test | 感度:60% 特異度:81% 陽性尤度比:3.20 / 陰性尤度比:0.49 |
| Thigh Thrust test | 感度:88% 特異度:69% 陽性尤度比:2.80 / 陰性尤度比:0.18 |
| Sacral Thrust test | 感度:63% 特異度:75% 陽性尤度比:2.50 / 陰性尤度比:0.50 |
| Gaenslen test | 感度:53% 特異度:71% 陽性尤度比:1.84 / 陰性尤度比:0.66 |
単独テストで「これが陽性だから仙腸関節」と考えるのは危険です。むしろ、複数の疼痛誘発テストで同じ方向の反応が出るかを見る方が、評価としては現実的です。
クラスターテストで精度を上げる
疼痛誘発テストは、複数を組み合わせることで検査精度が上がるとされています。資料では、5つのテストのうち3つで陽性の場合、感度94%、特異度78%、陽性尤度比4.00、AUC0.84とされています。
Compression、Distraction、Thigh Thrust、Sacral Thrust、Gaenslenの5つのうち、3つ以上が陽性であれば、仙腸関節障害を疑う材料として扱いやすくなります。
また、Gaenslenテストを除いた4つのテストで2つ以上陽性の場合でも、同程度の検査精度があるとされています。つまり、仙腸関節障害では「どれか1つのテスト」ではなく、複数のテストが同じ方向を示すかどうかが重要です。
仙腸関節障害の疼痛誘発テストは、単独評価ではなく、クラスターテストとして組み合わせることで使いやすくなります。
仙腸関節スコアを問診で活かす
仙腸関節スコアは、疼痛誘発テストだけでなく、問診や触診で得られる情報を点数化して評価する方法です。特にOne finger testや鼠径部痛は配点が高く、ヒアリング段階で重要な手がかりになります。

| One finger test PSISを示す |
スコア:3点 患者さんが痛む場所としてPSIS周辺を一点で示せるかを確認します。 |
|---|---|
| 鼠径部痛 | スコア:2点 仙腸関節障害では、臀部だけでなく鼠径部に痛みが出ることがあります。 |
| 椅子座位時の疼痛増悪 | スコア:1点 座位で痛みが増えるかを確認します。 |
| 仙腸関節shearテスト | スコア:1点 仙腸関節への負荷で痛みが誘発されるかを確認します。 |
| PSISの圧痛 | スコア:1点 PSIS周囲の圧痛を確認します。 |
| STLの圧痛 | スコア:1点 仙結節靭帯周囲の圧痛を確認します。 |
仙腸関節障害と腰椎疾患(LDH、LSS)との鑑別に使う場合は、4点以上を陽性とする報告があります。仙腸関節障害と腰臀部痛を有する他疾患との鑑別では、5点以上を陽性とする報告があります。
評価の流れとしてどう使うか
実際の評価では、まず問診で痛みの場所や増悪動作を確認し、仙腸関節スコアに関わる項目を拾います。そのうえで、疼痛誘発テストを複数行い、反応が一致するかを確認します。
- 問診でPSIS周辺の痛み、鼠径部痛、座位での増悪を確認する
- PSISや仙結節靭帯の圧痛を確認する
- 疼痛誘発テストを複数行い、同じように症状が再現されるかを見る
- 腰椎疾患や股関節由来の所見と矛盾しないか確認する
- 単独テストではなく、全体の所見として仙腸関節の関与を考える
仙腸関節障害は「複数所見」で評価する
仙腸関節障害の疼痛誘発テストは、単独で見ると検査精度が高いとは言い切れません。だからこそ、複数のテストを組み合わせたクラスターテストとして評価することが重要です。
また、仙腸関節スコアは、問診段階で拾える項目の配点が高く、評価をスムーズに進めるための重要な判断材料になります。
とんとん整骨院では、痛みの場所だけでなく、問診、圧痛、疼痛誘発テスト、腰椎や股関節との関連を合わせて確認し、身体の状態を多角的に見極めることを大切にしています。













