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動診で出ない・画像に写らない。確かめにくい症状を検討したオンラインカンファレンス

確かめにくい症状こそ、検討する価値がある

動診で再現できない痛み。画像に写らないしびれ。押しても読みにくい感作の症状。その場で確かめにくいものをどう扱うかは、教科書だけでは身に付きにくい部分です。オンライングループカンファレンスで、メンバーの症例を検討しました。

検査が使えない場面で、評価をどう続けるか。その引き出しを増やすために、各地のメンバーと症例を持ち寄って検討を重ねています。

2026年6月、ANOアカデミーのオンライングループカンファレンスを行いました。各地のメンバーがオンラインで集まり、現場で迷った症例や疑問を持ち寄って検討する場です。

今回のテーマは、動診で症状が誘発されない患者さんの評価、神経モビライゼーションのスライダーとテンショナーの使い分け、画像では異常なしと言われた下肢のしびれの鑑別、中枢性感作が疑われる症例への運動療法。並べてみると、その場で確かめにくいものをどう扱うか、という共通点がありました。

伊藤聡史伊藤聡史

今回は、検査がそのまま使えない場面の相談が続きました。動診で症状が出ない患者さんをどう評価するか、という相談は特に反響が大きかったですね。

瀬谷崎瀬谷崎

再現痛を指標にする検査は、再現できてこそなんですよね。出ないなら出ないで、筋力と可動域から姿勢を予測するとか、指標を生活の中に移すとか、やれることはある。ただ、こういう場面の手順って、一人で診ていると案外固まらない気がします。

検査は、症状に合わせて持ち替える

神経モビライゼーションの検討では、スライダーとテンショナーの違いが話題になりました。目的が違うんですよね、という確認から入っています。スライダーは神経と筋肉の間の滑走性を良くしたいので、繰り返して滑らせればよく、キープする必要はあまりない。テンショナーは神経を全周にわたって伸ばし、神経自体の張力を回復させるものなので、繰り返すより、その状態をキープする時間が重要になる、という見立てでした。

この場では、急性期を過ぎたらテンショナー、慢性期にスライダー、という思い込みが逆だった、と認識を訂正し合う場面もありました。伸張ストレスをかけるテンショナーのほうが疼痛を誘発しやすく、SLR(エスエルアール・下肢伸展挙上テスト)も坐骨神経に伸張ストレスを加える点ではテンショナーに近い。だから頸部屈曲・膝伸展・足関節背屈で最大伸張位を作るテンショナーは、入れるタイミングを慎重にする、と話が進みました。

強い伸張で症状を誘発してしまうと、施術後にかえって悪化した例もある。だからこそ、症状を誘発しない範囲から始めて、膝は伸ばさず足関節背屈だけにするなど遠位の運動で負荷を調整する。検査ひとつでも、症状の強さに合わせて持ち替える必要がある、という確認になりました。

伊藤聡史伊藤聡史

画像では異常なしと言われた下肢のしびれの相談もありました。MRI(エムアールアイ・磁気共鳴画像)で異常がなくても、症状は現にある。社長は、ああいうときの評価をどう考えていますか。

瀬谷崎瀬谷崎

画像は大事な材料ですけど、画像と症状はいつも一致するわけではないので。ヘルニアがあっても、それが今の神経症状に関与しているかは、毎回疑ってかかる必要がありますし。動きの検査で、股関節由来か腰椎由来かを一つずつ切り分けていくのがいいと思っています。異常なしという言葉が出たあとも、評価を続けるほうが大事かなと。

画像の外側で、切り分けを進める

相談された症例は、50代男性、左の臀部から下腿後面にしびれと痛み。1年前のMRIではヘルニアがあったものの、前日撮り直した画像では所見が落ち着いており、医師からは原因不明と言われたといいます。後屈や立位で悪化し、前屈は問題ないが戻る動きで増悪、SLRではむしろ挙上すると軽くなる、という一見つかみにくい所見でした。下腿は外側寄りで、S1領域に近い分布です。

検討では、鑑別としてDGS(ディージーエス・ディープグルーテルシンドローム。梨状筋症候群を含むより広い概念)や脊柱管狭窄症、腰椎神経根の症状が挙がりました。切り分けの手順も具体的で、後屈は股関節と腰椎の両方が動くので、座位で股関節を圧迫固定して後屈し、症状が出れば腰椎由来、出なければ股関節由来と読む、という逆確認検査。腰椎の伸展を止めて股関節伸展だけを見る検査や、胸椎に着目した確認検査も候補に挙がりました。狭窄症を絞り込むには、次に自転車のように腰椎屈曲位で下肢を動かす場面で症状が出るかを確かめてみたい、と話が続きます。

伊藤聡史伊藤聡史

確認検査がその場で出せなくても、ANOテストは一旦進める、という話も印象的でした。情報を広く拾うために、まず飛ばして触ってみる、と。

瀬谷崎瀬谷崎

確認検査が陰性でも、腸腰筋や大腿筋膜張筋、大腿直筋、梨状筋あたりの圧痛やANOテストは見ておきたいんですよね。広く拾っておくと、次の一手が決めやすい。画像の外側でできることは、意外と多いんだと思います。

感作が疑わしければ、能動の割合を増やす

中枢性感作が疑われる症例への運動療法も検討しました。押す・揉むといった受動的な介入だけでは頭打ちになりやすく、運動療法や有酸素運動の割合を増やしていく。強度は軽くから、種目は非荷重や上肢からでも始められる。詳しい進め方は、この検討をもとにした中枢性感作がある患者への運動療法にもしています。

動診で症状が出ない患者さんの評価も、同じくその場で再現できない痛みの評価手順として書きました。カンファレンスで出た相談は、こうして手順に落として共有しています。

迷いを持ち寄ると、手順になる

今回のテーマはどれも、一人で診ていると「なんとなくこうしている」で済ませてしまいがちな場面です。スライダーとテンショナーの目的の違いも、後屈の股関節と腰椎の切り分けも、言葉にして突き合わせるとお互いの認識のずれが見えてきます。症例を持ち寄って言葉にすると、なんとなくが手順になり、次に同じ場面が来たときに迷う時間が減ります。

伊藤聡史伊藤聡史

確かめにくい症状ほど、検討の場に出す意味がありますね。自分の見方の癖は、自分では気付けないので。

瀬谷崎瀬谷崎

当たり前のことを当たり前にやる、と言うのは簡単ですけど、確かめにくい場面でそれを続けるのが一番難しい。だからこそ、こうやって持ち寄って確かめ合うんだと思います。実技練習会前回のカンファレンスも、やっていることは同じです。

患者さんのために、研鑽を続ける

その場で確かめられない症状は、これからも現場に出続けます。そのたびに評価を続け、指標を持ち替えて診ていけるように。ANOアカデミーでは、オンラインカンファレンスと実技練習会を通じて、現場の迷いを手順に変える研鑽を重ねていきます。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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