痛くないのに指摘される猫背、姿勢の崩れをどう整えるか。症例をスタッフで検討

痛みのない猫背、なぜ「肩甲骨を支える力と胸の前」に着目したのか

1つの症例を、担当した川口流世先生(とんとん整骨院 下板橋店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。痛みはないけれど、周りから指摘される猫背。姿勢そのものでなく、肩甲骨を支える力と胸の前の硬さに出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、ご友人やお子さんから姿勢を指摘されたことをきっかけに来院された60代の女性。動作による痛みはなく、肩まわりにこりを感じる程度で、猫背を整えたいというご希望でした。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:痛みのない猫背、肩甲骨を支える力と胸の前に着目
今回検討する症例(担当:川口先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=周りから指摘される猫背・肩まわりのこり(60代・女性/動作による痛みはなし)。背景=ご友人やお子さんから姿勢を指摘されたことがきっかけ。姿勢を整えたいという希望。所見=背中側で肩甲骨を支える筋肉(僧帽筋下部・前鋸筋)の働きの低下、胸の前(小胸筋)の硬さ、背中(胸椎)の伸展可動域の低下。とらえ方=支える力の低下と胸の前の硬さ、背中の動きにくさが、背中が丸まりやすい姿勢につながっていたと考えた。対応=小胸筋・広背筋・僧帽筋へのアプローチ、肩甲骨モビライゼーション、胸椎の伸展可動域を出すモビライゼーション、僧帽筋トレーニング。経過=歩幅が広がり姿勢が良くなった実感。周囲から姿勢を褒められることが増え、良い状態を保ちやすくなった。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

痛みのない猫背、原因は肩甲骨を支える力か

主訴は痛みではなく、指摘される猫背。けれど川口先生は、姿勢そのものより、肩甲骨を支える力と胸の前の硬さに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

川口先生川口先生

主訴は痛みではなく、周りから指摘される猫背でした。所見をとると、背中側で肩甲骨を支える筋肉の働きが落ちていて、胸の前が硬く、背中の反る動きも出にくくなっていました。姿勢そのものより、それを支える力と胸の前の硬さに出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

猫背というと、骨や年齢の問題で、もう変わらないようにも思えます。それでも整えられると考えたのはなぜですか。

川口先生川口先生

姿勢は、骨の形そのものより、肩甲骨を背中で支える力と、胸の前や背中の柔らかさで保たれていると言われています。支える力が落ちて胸の前が硬いと、背中が丸まった姿勢が保たれやすい。逆に言えば、支える力と柔らかさを取り戻せば、姿勢は変えていける。所見もその方向を示していました。

痛みがないからこそ、見落としていないか

痛みがない方ですが、だからこそ確かめておくべきことがあります。そこを確認します。

教子先生教子先生

痛みがないのは安心材料ですが、念のため確認させてください。背中や首の強い痛み・しびれ、急に背中が曲がってきた・身長が縮んだ感じ、動かすと強く痛むといった、医療機関で確かめるべきサインは外せていましたか。

川口先生川口先生

そこは確認しました。強い痛みやしびれ、急に曲がってきた・縮んだといった変化はなく、動作による痛みもありませんでした。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめたうえで、姿勢の土台に絞って進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

痛みが出てからでなく、痛くない段階で支える力と柔らかさを整えておくのは、予防的にも良い入り方だと思います。猫背そのものを悪者にするのでなく、なぜ丸まりやすいのかを支える力と柔軟性から見て、無理なく続けられる形にしていく。その方向が妥当ですね。

姿勢の土台を整える介入と、見た目の変化

その場で姿勢を正すだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

胸の前や背中のほうから整えていったんですね。

川口先生川口先生

はい。硬くなっていた胸の前や背中をゆるめて、肩甲骨が動きやすいようにし、背中側で支える筋肉を使えるようにしました。セルフケアも一緒に続けてもらって、歩幅が広がり、姿勢が良くなった実感が出てきて、周りから姿勢を褒められることも増えていきました。

瀬谷崎瀬谷崎

猫背の出どころを、姿勢そのものでなく、肩甲骨を支える力と胸の前の柔らかさに戻して整えにいっているのが要点ですね。支える力が使えれば、丸まりにくい姿勢を保ちやすくなる。見た目の変化もその方向を支持しています。ただ姿勢は習慣で戻りやすいので、支える力づくりは続ける前提で見ていきたいところです。

考察:肩甲骨を支える力と胸の前からとらえる、痛みのない猫背

所見という事実(肩甲骨を支える筋肉の働きの低下・胸の前の硬さ・背中の伸展可動域の低下)と、経過という結果(歩幅が広がり姿勢が良くなった実感、周囲から姿勢を褒められることが増えたこと)。この両方が、「姿勢そのものでなく、肩甲骨を支える力と胸の前に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。痛みのない猫背でも、肩甲骨を支える力が落ちて胸の前が硬いと、丸まった姿勢が保たれやすい。その場で正すだけで終わらせず、支える力と柔らかさを整える。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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