踵膝試験とは?下肢の小脳性運動失調を確認する検査の見方

かかとがすねの上をまっすぐ滑れるか。
下肢の協調運動から小脳機能を見る

踵膝試験は、下肢の協調運動を確認する神経学的検査です。かかとを反対側の膝に乗せ、すねに沿って滑らせる動きの中で、軌道のブレ、行き過ぎ、震え、左右差を見ます。

この記事について

この記事は、小脳性の運動失調を確認する検査である踵膝試験について整理したものです。上肢を見る鼻指鼻試験に対して、踵膝試験は下肢の協調運動を見ます。かかとを膝に当て、すねの上を滑らせるシンプルな検査ですが、軌道のズレ、震え、左右差などから協調運動の乱れを評価する手がかりになります。

著者アイコン 髙原佑輔

踵膝試験は、下肢の小脳性運動失調を見る検査です。かかとがすねの上をまっすぐ滑れるか、途中でブレたり震えたりしないかを、左右で比べて見ることが大切です。

結論:踵膝試験は、かかとを膝からすねへ滑らせる動きから、下肢の小脳性運動失調や協調運動の乱れを確認する検査です。

踵膝試験は、あお向けに寝た患者さんに、片方のかかとを反対側の膝に乗せてもらい、そのまますねの前面に沿って足首の方向へ滑らせてもらう検査です。かかとを目標へ運ぶ、すねの上を正確になぞる、といった下肢の協調運動を確認します。

小脳の働きに問題があると、かかとが膝からズレる、すねの上で軌道が揺れる、行き過ぎる、動きがぎこちなくなる、といった反応が出ることがあります。上肢を見る鼻指鼻試験と対になる、下肢の協調運動検査です。

踵膝試験とは?

踵膝試験は、下肢の協調運動を確認する検査です。かかとが狙った目標へ正確に向かい、すねの上を安定してなぞれるかを見ます。神経学的検査の中では、小脳機能を確認する代表的な検査の一つです。踵脛試験と呼ばれることもあります。

検査名の通り、かかとを膝に当て、すねの上を滑らせます。動きの正確性、なめらかさ、震え、左右差を観察します。

主な目的 下肢の小脳性運動失調や、協調運動の乱れを確認します。
見る動き かかとを反対側の膝に乗せ、すねに沿って滑らせる動作です。正確性、なめらかさ、震え、左右差を確認します。
陽性として見る反応 かかとが膝からズレる、すねの上で軌道が揺れる、行き過ぎる、動きがぎこちないなどです。

踵膝試験は「かかとが膝に着いたかどうか」だけを見る検査ではありません。目標へ向かう軌道、すねの上のなぞり方、切り返し、左右差まで見ます。

下肢の協調運動と小脳の関係

小脳は、運動の正確さ、タイミング、力加減、協調性に関わります。小脳の働きに問題があると、筋力そのものが大きく落ちていなくても、かかとを狙った場所へ正確に運びにくくなることがあります。

踵膝試験で見られる代表的な所見が、目標を行き過ぎる、すねから外れる、軌道がブレる、目標に近づくほど震えが強くなる、といった反応です。これらは上肢の鼻指鼻試験で見る所見と共通します。

ディスメトリア
測定異常
目標に対して、かかとが行き過ぎたり、手前で止まったりする反応です。小脳性運動失調を考える代表的な所見です。
企図振戦 目標に近づくほど震えが目立つ反応です。安静時より、動作中に強く見えることがあります。
分解運動 本来なめらかに行う動作が、いくつかの動きに分かれるようにぎこちなくなる反応です。

踵膝試験のやり方

踵膝試験は、患者さんにあお向けで寝てもらって行うことが多い検査です。片方のかかとを反対側の膝に乗せ、すねに沿って足首まで滑らせてもらいます。

  1. 姿勢を整える患者さんにあお向けで寝てもらい、下肢に余計な力が入らない姿勢を作ります。痛みや可動域制限がないかも確認します。
  2. かかとを膝に乗せる片方のかかとを、反対側の膝の上に乗せてもらいます。目標である膝がわかりやすいように声をかけます。
  3. すねに沿って滑らせるかかとを膝から足首の方向へ、すねの前面に沿って滑らせてもらいます。軌道のブレやなめらかさを確認します。
  4. 左右で比較する片側ずつ実施し、左右差を確認します。どちらか一方だけズレる、震える、ぎこちない場合は所見として整理します。
  5. 繰り返して確認する何度か繰り返し、動作が安定しているか、反復で崩れないかを確認します。無理に速く行わせる必要はありません。
注意点

患者さんが検査内容を理解できているか、股関節や膝の痛み、可動域制限で動作が制限されていないかも確認します。検査のズレが、純粋な協調運動の問題なのかを見極めるためです。

陽性所見として見る反応

踵膝試験で陽性として見たいのは、かかとが目標に正確に向かわない、すねの上を安定してなぞれない反応です。単にゆっくり動くことだけで陽性とするのではなく、ズレ方や左右差、目標に近づくときの震えを確認します。

  • かかとが膝からズレて乗せられない
  • すねの上で軌道が左右に揺れる
  • 目標を行き過ぎる、または手前で止まる
  • 足首に近づくほど震えが強くなる
  • 動きがなめらかではなく、分解されるように見える
  • 左右で明らかに正確性や震え方が違う

踵膝試験で大切なのは、軌道のズレ、行き過ぎ、企図振戦、左右差をセットで見ることです。

ズレがある場合は左右差を見る

両側とも同じように不正確なのか、片側だけ目立つのかで意味が変わります。片側だけ明らかにズレる場合は、同側の小脳半球やその連絡路の関与を考える材料になります。上肢の鼻指鼻試験や、立位バランスを見るロンベルグ徴候と合わせて見ると、失調の広がりを整理しやすくなります。

速さよりも正確性を見る

患者さんに速く動かしてもらうと、健常でも多少のズレが出ることがあります。まずは正確にできるかを見て、そのうえで速度や反復で崩れるかを確認します。

小脳以外の影響も考える

踵膝試験でズレが出たからといって、すべてを小脳性運動失調と決めることはできません。筋力低下、感覚障害、痛み、可動域制限、理解の問題などでも動作が不正確になることがあります。

筋力低下 下肢を持ち上げ続ける力が弱いと、かかとを目標へ運びにくくなります。MMTや日常動作も合わせて確認します。
感覚障害 深部感覚や位置覚の低下があると、足の位置を正確に把握しにくくなります。知覚検査や位置覚も参考にします。
痛み・可動域制限 股関節や膝の痛み、可動域制限があると、動作がぎこちなく見えることがあります。
理解・注意 指示が伝わっていない、集中が続かない場合も、検査結果に影響します。
整理

踵膝試験は下肢の小脳性運動失調を疑う手がかりになりますが、単独で原因を決める検査ではありません。筋力、感覚、痛み、可動域、病歴と合わせて読みます。

急な運動失調は慎重に見る

踵膝試験で明らかなズレがあり、それが急に出た症状であれば注意が必要です。小脳や脳幹の血管障害など、中枢神経系の問題が背景にある可能性も考えます。

特に、めまい、ふらつき、ろれつが回りにくい、飲み込みにくい、片側の手足の脱力やしびれ、強い頭痛などを伴う場合は、早急に医療機関での確認が必要になることがあります。

重要

急に足の動きがズレる、歩けないほどふらつく、ろれつが回らない、片側の脱力やしびれがある、強い頭痛を伴う場合は、まず医療機関での確認が必要です。

関連症状:こんな訴えと合わせて見る

  • 足を狙った場所にうまく運べない
  • 階段や段差で足の置き場がぎこちない
  • 片側だけ足の動きがぎこちない
  • 歩行時のふらつきやバランス低下がある
  • めまい、ろれつの回りにくさ、飲み込みにくさがある
  • 急に協調運動が乱れたように感じる

踵膝試験は下肢の「なぞり方」を見る検査

踵膝試験は、下肢の小脳性運動失調や協調運動の乱れを確認するための検査です。かかとを膝からすねへ滑らせる動きの中で、軌道のズレ、行き過ぎ、震え、動きのぎこちなさを確認します。

ただし、ズレがあるからといって、すぐに小脳だけの問題と決めるわけではありません。筋力低下、感覚障害、痛み、可動域、指示理解なども結果に影響します。

とんとん整骨院では、動きのズレだけを切り取るのではなく、症状の経過、左右差、歩行時のふらつき、筋力、感覚、他の神経学的所見を合わせて確認し、必要な場合は医療機関での確認につなげることを大切にしています。

著者アイコン 髙原佑輔

踵膝試験は、やり方はシンプルですが、見ている内容は大事です。軌道のズレ、震え方、左右差、急に出た症状かどうかまで確認して、必要なら中枢神経系の評価につなげます。上肢の鼻指鼻試験と合わせると、失調の広がりを整理しやすくなります。

髙原佑輔
株式会社とんとん/とんとん整骨院。店舗統括・物理療法指導責任者。柔道整復師。

2014年より整形外科に勤務し、骨折・捻挫など多数の外傷症例を経験。勤務先で出会った患者の「私、ここの病院に30年通ってるの」という一言をきっかけに、「症状を抑え続ける」のではなく「通院に頼らない身体づくり」を追求するようになる。その後、大手整骨院グループの技術統括責任者を経て現職。現在は、とんとん整骨院グループを統括し、物理療法の品質管理・スタッフ指導を担うほか、noteでは物理療法やテーピングに関する技術情報の発信にも取り組んでいる。

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