股関節の付け根が歩くと痛い、立ち姿勢の癖をどう考えるか。症例をスタッフで検討

歩くたびに痛む股関節の付け根、なぜ立ち方から見たのか

1つの症例を、担当した杉生真悟先生(とんとん整骨院 南浦和店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。歩くとき、立っているとき、階段の上り下り。体重を支える場面に限って出ていた股関節の付け根の痛みに対して、痛む場所ではなく立ち姿勢の癖に負担のもとを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、約2か月前から股関節の付け根の痛みが続いていた女性。整形外科や整体に通われていた経過があり、歩行時・立位・階段の上り下りで痛みが出ていた、という症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:歩行や階段で出る股関節の付け根の痛み、立ち姿勢の癖に着目
今回検討する症例(担当:杉生先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=歩行時・立位姿勢・階段の上り下りで出る、股関節の付け根の痛み(女性)。背景=約2か月前から続き、整形外科や整体に通われていた経過がある。所見=歩行時に股関節が外側にねじれる癖と、立位で骨盤が前に押し出されたスウェイバック姿勢。太ももの裏(ハムストリングス)と外側(大腿筋膜張筋)の筋緊張、腸腰筋・殿筋群の筋力低下。とらえ方=立ち姿勢と歩き方の癖により、股関節の前側へ負担が集まり続けていたと考えた。対応=股関節周囲のリラクゼーションと可動域の改善、腸腰筋・殿筋群の筋力強化。経過=3回目には歩行時や階段昇降時の痛みが大きく軽減し、わずかな違和感が残る程度に。6回目には股関節まわりの違和感も落ち着き、月1回の再発予防のメンテナンスへ移行。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

痛む場所は付け根、負担のもとは立ち方か

痛む場所だけを見ると手がかりの少ない症例です。杉生先生がどこから絞り込んだのか、その根拠を確かめます。

杉生先生杉生先生

この方の痛みは、歩く・立つ・階段という、体重を支える場面に限って出ていました。立ち姿勢を評価すると、骨盤が前に押し出されて上半身が後ろに乗る、いわゆるスウェイバックと呼ばれる立ち方がみられました。この立ち方では、股関節の前側が伸ばされたまま体重を受け続けます。さらに歩行時には股関節が外側にねじれる癖もあり、付け根への負担が一歩ごとに積み重なっていたと考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

付け根の痛みと聞くと、股関節そのものの問題も気になります。痛む場所は同じなのに、関節由来か姿勢由来かは、どうやって見分けを進めたのですか。

杉生先生杉生先生

まず、急いで医療機関で確かめるべき所見がないかを確認した上で、動きと姿勢の評価を進めました。体重を支える場面に限って出るという出かたと、張っている筋肉と働いていない筋肉の組み合わせが、スウェイバックの立ち方ときれいに一致していたことが根拠です。もし体重をかけられないほどの痛みや、安静にしていても続く痛みがあれば、医療機関での評価を優先する状況だったと思います。

張っている筋肉と、働いていない筋肉はセットで見る

所見に挙がった筋肉は4つ。張りと弱さがセットで出ているところに、この症例の読みどころがあります。

教子先生教子先生

太ももの裏と外側が張っていて、腸腰筋とお尻の筋肉が弱い。この組み合わせはスウェイバックの立ち方とどうつながるのですか。それと、付け根の痛みで確かめておくべきサイン、転倒や打撲のあとの痛み、体重をかけられないほどの痛み、夜間や安静時の痛み、発熱や腫れは外せていましたか。

杉生先生杉生先生

サインはいずれもありませんでした。整形外科に通われていた経過も伺った上で進めています。つながりとしては、スウェイバックは骨盤を前に押し出して後ろ側の筋肉に寄りかかる立ち方なので、太ももの裏と外側は張って支え続ける一方、本来体を支えるはずの腸腰筋やお尻の筋肉には出番がなくなります。使われない筋肉は弱くなり、ますます寄りかかる立ち方が定着する、という循環です。

瀬谷崎瀬谷崎

張りだけをゆるめても、立ち方が変わらなければまた張ってきますし、弱い筋肉だけを鍛えても、張りが動きを邪魔したままでは働きにくい。だからゆるめることと鍛えることを並行する必要があるんですよね。張りは原因というより、立ち方の結果でもあるという見方だと思います。

ゆるめる、鍛える、立ち方を変える。経過が示したこと

介入は手技と筋力強化の並行でした。経過の変化から、見立ての妥当性を確かめます。

まなぶ先生まなぶ先生

3回目には歩行や階段の痛みが大きく軽減しています。早い変化に見えますが、何が効いたと見ていますか。

杉生先生杉生先生

どれか1つというより、張っていた筋肉がゆるんで股関節の動きに余裕が出たことで、体重を受ける位置が変わったことが大きいと考えています。ただ、張りは立ち方の結果でもあるので、そこで終えずに腸腰筋とお尻の筋力強化を続けました。6回目には股関節まわりの違和感も落ち着き、いまは月1回の再発予防のメンテナンスで、立ち方の癖が戻っていないかを確かめています。

瀬谷崎瀬谷崎

付け根の痛みは、痛む場所だけを見ると情報が少ないんですが、どの場面で出るかという事実が方向を示してくれた症例だと思います。体重を支える場面に限って出る、なら支え方を見る。筋肉の張りと弱さのセットがそれを裏づけて、経過も同じ方向を支持した。もちろん経過には個人差があるので、変化が出ないときは評価に立ち返る前提で見ていきたいですね。

考察:立ち姿勢の癖からとらえる、股関節の付け根の痛み

所見という事実(体重を支える場面に限って出る痛み・骨盤が前に押し出されたスウェイバック姿勢・張っている筋肉と働いていない筋肉のセット)と、経過という結果(3回目に歩行や階段の痛みが大きく軽減し、6回目には違和感も落ち着いたこと)。この両方が、「痛む場所でなく、立ち姿勢と歩き方の癖に負担のもとを見た」という見立ての妥当性を支えています。股関節の付け根は、毎日の一歩ごとに体重を受け止める場所です。だからこそ、どんな立ち方・歩き方で受け止めているかが負担の量を左右します。ゆるめることと鍛えることを並行し、立ち方の癖まで含めて経過をみる。この症例では、その進め方が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

読みもの

症例カンファレンス

症状コラム

施術・検査ガイド

とんとんブログ

電話
タップで電話がかかります
LINE
24時間予約受付中
東武練馬店
ときわ台店
下板橋店
南浦和店