マッサージで楽になることはある。でも「硬いから痛い」とは限らない

気持ちよさと治療効果を、分けて扱う

マッサージやリラクゼーションで楽になることはあります。ただし、その変化を「硬い筋肉が原因だった」とすぐ結びつけると、患者さんに誤った身体の見方を渡してしまうことがあります。

リラクゼーションは悪者ではありません。でも、何が変わったのか、何を説明しているのか、どこまでが一時的な鎮痛なのかを分けて考える必要があります。

身体が疲れている時に、マッサージを受けて楽になる。

硬いところを押されて気持ちいい。

会話しながらリラックスして、痛みが軽くなる。

こうした経験がある方は多いと思います。

僕自身も、リラクゼーションを受けるのは好きです。

だから、リラクゼーションやマッサージ的な刺激そのものを否定したいわけではありません。

むしろ、痛みが強い人に対して、何度も痛みを誘発する検査をして不安を強めるくらいなら、安心してリラックスできる時間の方が助けになる場面もあると思っています。

まなぶ先生
まなぶ先生

リラクゼーションで楽になるなら、それも治療として考えていいんですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

楽になること自体は大事です。ただ、その理由をどう説明するかは分けたいです。気持ちよくて楽になったことと、硬い筋肉が原因だったことは同じではありません。

リラクゼーションで痛みが軽くなることはある

痛みがある時、身体は緊張しやすくなります。

安静にしていても、健常な状態より筋緊張が高くなっている人もいます。

その緊張自体が、さらに痛みを増やす要因になることもあります。

そう考えると、身体が安心できる環境を作り、呼吸が落ち着き、筋緊張が少し下がることには意味があります。

徒手的な刺激だけでなく、呼吸法や漸進的筋弛緩法のように、自分で緊張をゆるめる方法も選択肢になります。

痛みを軽くする手段は、組織を直接変えることだけではありません。安心感、注意の向き、期待、筋緊張の低下も痛みに関わります。

腰痛に対するマッサージについても、短期的な痛みの軽減が示される研究はあります。

ただし、効果の質や持続性には限界があり、単独で何でも解決する介入として扱うのは慎重であるべきです。

「楽になった」は大事です。

でも、「なぜ楽になったのか」は別に考えたいところです。

「硬いから痛い」と教えすぎない

リラクゼーションで痛みが軽くなると、施術者側も患者さん側も、分かりやすい説明を求めたくなります。

そこでよく出てくるのが、「筋肉が硬かったから痛かったんですね」という説明です。

この説明は、分かりやすいです。

ただ、少し危ういです。

マッサージ後に楽になったとしても、それが「硬い筋肉が痛みの原因だった」と証明しているわけではありません。

リラックスしたから楽になったのかもしれない。

安心感で痛みの警戒が下がったのかもしれない。

注意が痛みから外れたのかもしれない。

内因性の鎮痛が働いたのかもしれない。

施術者との会話や環境が影響したのかもしれない。

説明の注意

「硬いから痛い」と教えすぎると、患者さんが自分の身体をいつも硬さで監視するようになることがあります。これは回復にとって必ずしもプラスではありません。

身体の硬さを感じること自体が悪いわけではありません。

ただ、「硬い場所を見つけたら悪い場所」「押して痛いなら原因」と捉えすぎると、患者さんの不安を増やします。

筋短縮なら、リラクゼーションだけでは変わりにくい

可動域制限の要因として、筋短縮が関わることはあります。

その場合、リラクゼーションやマッサージのような徒手的刺激だけでは十分に変わらないことがあります。

本当に筋の伸張性が問題なら、ストレッチや運動、可動域を使う練習が必要になることがあります。

一方で、可動域制限のように見えても、痛みへの警戒、防御収縮、関節性の制限、神経症状、代償動作が関わっていることもあります。

見えている状態 考えられる要素 介入の考え方
筋肉が硬く感じる 緊張、防御、疲労、触覚への過敏さ リラクゼーションや呼吸、負荷調整を考える
可動域が狭い 筋短縮、関節性制限、痛み、代償動作 制限の正体を見て、必要ならストレッチや運動を使う
押すと痛い 圧痛、感作、過敏性、局所の炎症 痛い場所だけを原因と決めつけない
施術後に違和感が出る 刺激量過多、防御収縮、感作、生活負荷 刺激量と目的を見直す

大事なのは、「硬いから揉む」「伸びないから強く伸ばす」という単純な発想にしないことです。

その制限は何なのか。

その痛みは何に反応しているのか。

施術後に何が変わったのか。

そこを分けて見たいです。

強い刺激を求めすぎるリスク

「もっと強く押してください」

「痛いくらいが効いている気がします」

こう言われることもあります。

強い刺激で一時的に楽になることはあります。

ただ、強刺激にはデメリットもあります。

  • 軟部組織を痛める可能性がある
  • 痛み刺激によって筋緊張が上がることがある
  • 血圧や自律神経への影響を考える必要がある
  • 感作がある人では症状を強める可能性がある
  • 「強く押さないと効かない」という認識を作ることがある
  • 本来必要な運動や生活調整から注意がそれることがある
強さの判断

患者さんが強い刺激を希望していても、その希望をそのまま採用すれば安全とは限りません。目的、病態、刺激後の反応を見ながら強度を決める必要があります。

もちろん、適切な強度の徒手刺激に意味がある場面はあります。

ただし、「強いほど効く」「痛いほど良い」という学習を患者さんに渡してしまうのは避けたいです。

患者さんが望むものを無視しない

一方で、患者さんがリラクゼーション的な施術を望むこと自体も無視できません。

気持ちよく受けられる。

安心できる。

話を聞いてもらえる。

身体が軽くなる。

こうした価値は、臨床の外側にあるようで、実は痛みの経験には深く関わります。

だから、リラクゼーションを求める患者さんに対して、「それは意味がありません」と切るのも違います。

まなぶ先生
まなぶ先生

臨床として必要なことと、患者さんが望むことがズレる時はどうしますか?

瀬谷崎
瀬谷崎

どちらかを完全に捨てるより、目的を分けて説明します。今日はリラックスを目的にするのか、可動域や動作の改善を目的にするのか。そこを曖昧にしないことですね。

ビジネスとしては、患者さんが望むものを提供することも大切です。

でも、医療や臨床の文脈では、望まれていることが常に最適とは限りません。

ここが難しいところです。

だからこそ、何を目的にその施術をするのかを、施術者側が曖昧にしないことが必要です。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、基本的にリラクゼーションを主目的にした施術は行っていません。

ただし、リラクゼーションの価値を否定しているわけではありません。

痛みが強い人にとって、安心して身体を預けられること。

緊張が少し落ちること。

会話の中で不安が軽くなること。

そうした要素が回復に関わることはあります。

大切なのは、評価をした上で、目的を持って使うことです。

「分からないから揉む」ではなく、「今は安心感や緊張の低下が必要だから、この刺激を使う」と説明できること。

ここを大事にしています。

とんとんの基本姿勢

気持ちよさを否定しない。でも、気持ちよさだけで病態を説明しない。ここを分けて扱います。

こんな時は一度ご相談ください

  • マッサージを受けると楽になるが、すぐ戻る
  • 強く押されないと効かない気がしている
  • 施術後にかえって腰や肩に違和感が出る
  • 身体が硬いから痛いと言われ、不安になっている
  • ストレッチやマッサージを続けても動作が変わらない
医療機関の受診について

急な強い痛み、発熱、原因不明の体重減少、夜間痛や安静時痛、しびれや脱力、外傷後の強い痛みなどがある場合は、リラクゼーションで様子を見る前に医療機関での確認が必要になることがあります。

楽になることと、原因が分かることは別

リラクゼーションやマッサージで楽になることはあります。

その価値を否定する必要はありません。

でも、楽になったからといって、硬い筋肉が痛みの原因だったとは限りません。

強く押されて気持ちいいからといって、強い刺激ほど良いわけでもありません。

臨床では、気持ちよさ、安心感、鎮痛、可動域、動作、生活での変化を分けて見る必要があります。

楽になった。

でも、それをどう解釈するか。

そこまで丁寧に扱うことが、患者さんに誤った身体の見方を渡さないために大切だと思っています。

瀬谷崎
瀬谷崎

リラクゼーションは好きです。でも、臨床で使うなら説明が大事です。気持ちよかったから良い、だけで終わらせず、その変化をどう回復につなげるかを見たいですね。

参考

  • Furlan AD, et al. Massage for low-back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2015.
    PubMed
  • Chou R, et al. Nonpharmacologic Therapies for Low Back Pain: A Systematic Review for an American College of Physicians Clinical Practice Guideline. Ann Intern Med. 2017.
    PubMed
  • American College of Physicians. Clinical Practice Guideline: Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain. Ann Intern Med. 2017.
    PubMed
  • Yin P, et al. Adverse Events of Massage Therapy in Pain-Related Conditions: A Systematic Review. Evid Based Complement Alternat Med. 2014.
    PMC
  • Crawford C, et al. The Impact of Massage Therapy on Function in Pain Populations: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Pain Med. 2016.
    PMC
  • National Center for Complementary and Integrative Health. Massage Therapy: What You Need To Know.
    NCCIH

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