長引く神経症状で、神経の中に何が起きているのか。浮腫・神経内圧・線維化と周りとのすべり
施術・検査ガイド
そのしびれ、神経の中では何が起きているのか
末梢神経の障害では、神経の中で血流の低下や浮腫(ふしゅ/むくみ)、神経内の圧の上昇が起こりうると報告されています。症状が長引く場面では、どこで挟まれているかという神経の外の話だけでなく、神経の中で進んでいる変化にも目を向けると、評価や施術の選び方が変わってきます。
長引く神経症状を考えるときの、神経の中の病理(血流低下・浮腫・神経内圧の上昇・線維化)と、神経の周りで起きるすべりにくさを、それぞれ分けて解説します。神経モビライゼーション(神経モビ)という手技そのものの根拠や手順は、別記事にまとめています。
結論:神経の中では血流低下・浮腫・神経内圧の上昇・線維化が起こりうる。一方ですべりにくさは神経の中ではなく、周りの組織との間で起きる。この2つを分けて見ると、負荷のかけ方に理由が生まれます。
神経の症状というと、どこで挟まれているか(絞扼/こうやく)、どの筋や組織が関わっているか、という神経の外の話に目が向きがちです。ただ、症状が長く続いている場面では、神経そのものの中でも変化が進んでいることがあります。神経の中で起きうることと、神経の周りで起きうることは、性質が違います。
神経は、束と膜と血管でできている
末梢神経は、1本のケーブルのような単純な構造ではありません。神経線維が神経内膜に包まれ、それが束(神経束)になって神経周膜に包まれ、さらに全体が外神経膜に覆われています。その内側には、神経を養う神経内血管が走っています。
この入れ子の構造があるからこそ、神経は「中で圧が上がる」「中で血流が下がる」という、外から見えにくい変化を起こします。
神経の中で起きうる4つの変化
基礎研究では、神経が持続的に圧迫されると、神経の中でいくつかの変化が連鎖しうることが示されています。断定はできませんが、症状が長引く背景を考える手がかりになります。
| 血流低下(虚血) | 持続的な圧迫で、神経の中の血流が下がりうると報告されています(Lundborg & Rydevik. 1973)。神経に酸素と栄養を運ぶ経路が細くなるイメージです。 |
|---|---|
| 神経内浮腫 | 血流の障害に続いて、神経の中に水分がたまり、内腔の拡大や間質の浮腫が生じうるとされます。膜に包まれているぶん、逃げ場がありません。 |
| 神経内圧の上昇 | 浮腫がたまると神経の中の圧が上がり、その圧がさらに神経内の循環を妨げうると報告されています(Rydevik, et al. 1981)。血流低下と浮腫が互いを強め合う形です。 |
| 線維化・瘢痕化 | 圧迫や浮腫が長く続くと、線維化や瘢痕(はんこん)化が進みうるとされます(Sunderland. 1978)。慢性化した神経症状で考えておきたい変化です。 |
血流が下がる、むくむ、圧が上がる、そしてまた血流が下がる。この循環が続いた先に、線維化という後戻りしにくい変化が控えている、という順番で見ておくと、症状が強い時期に強い負荷をかけない理由がつながります。
すべりにくさは、神経の中ではなく周りで起きる
ここは取り違えやすいところです。神経のすべり(滑走性)が落ちるのは、神経の中の問題ではなく、主に神経と周辺組織との間で起きます。神経の周りの癒着や、神経が接している組織との機械的な関係(メカニカルインターフェース/神経が滑る相手側の環境)の問題です。
神経障害を考えるときは、神経周囲とのすべりの障害も合わせて考えたい、という視点は以前から示されています(Butler. 2000)。動きにくさや、動作で誘発される症状には、この神経の外の要因が関わっている可能性があります。
| 観点 | 神経の中(神経内病理) | 神経の外(周辺組織との関係) |
|---|---|---|
| 起きること | 血流低下・浮腫・神経内圧の上昇・線維化 | 癒着によるすべりにくさ、周囲環境からの圧迫 |
| 手がかり | 神経学的所見(筋力・感覚・反射)、症状の持続と経過 | 動作や肢位で症状が変わるか、周囲の筋や組織の状態 |
| 負荷の考え方 | 血流や内圧に配慮し、強い伸張は避ける | すべる相手側の環境を整えることも含めて考える |
評価と施術にどう活かすか
神経症状をみるときは、神経の中の病理と、周辺組織とのすべりの障害を分けて考えます。神経の中では血流低下・浮腫・内圧の上昇が、神経の外では周辺組織との癒着やすべりの障害が関与しうるからです。評価では、神経学的所見と、周辺組織との機械的な関係の両方を合わせて確認したいところです。
- 神経学的所見(筋力・感覚・反射)で、神経そのものの状態を確認する
- 動作や肢位で症状が変わるかを見て、周辺組織との関係を確認する
- 症状が強い時期は、神経内の血流や内圧に配慮し、強い伸張を避ける
- 長引いている症例では、線維化が進んでいる可能性も想定して経過を見る
- 神経の外(周囲の環境)を整えることも、すべりの改善につながりうる
神経の中で血流が下がっているかもしれない場面で、いきなり強く引き伸ばす刺激を入れると、かえって負担になりうる。この考え方が、症状が強い時期に張力の小さいスライダーから始める理由につながります。
神経モビライゼーションの根拠と、スライダー・テンショナーの違いは神経モビライゼーションは何を根拠に効くのか。神経内の血流と、すべらせる・張力の研究に、しびれへの介入を神経の内と外で組み立てる考え方はしびれへの介入は神経を動かしすぎない。圧迫・血流・滑走性で組み立てるにまとめています。

この記事の内容を1枚にしたもの。神経の中の病理と、周辺組織とのすべりの障害を分けて見る。
Lundborg & Rydevik. 1973 / Rydevik, et al. 1981 / Sunderland. 1978 / Butler. 2000 より引用・改変。
関連症状:こんな訴えと合わせて見る
- しびれや痛みが、数か月単位で続いている
- ストレッチをすると、しびれが強くなる感じがある
- 腰から足にかけて、しびれや痛みが広がる
- 手や腕のしびれが、夜間や特定の姿勢で強くなる
- 神経由来の症状かどうかを切り分けたい
力が入りにくい、両手足に広がるしびれがある、排尿・排便の異常がある、安静にしていても強まる痛みやしびれがある場合は、まず医療機関での確認が必要になることがあります。
神経の中と、神経の周り。分けて見る
末梢神経の障害では、神経の中で血流の低下・浮腫・内圧の上昇が起こりうると報告されており、それが長く続けば線維化や瘢痕化が進む可能性もあります。一方で、すべりにくさは神経の中ではなく、主に周辺組織との間で生じます。同じ「神経の症状」でも、起きている場所が違えば、確認するものも負荷のかけ方も変わります。
症状が長引いているときほど、神経の中で何が進んでいるのかという視点が効いてきます。強く伸ばせば動きが戻る、という単純な話ではないからです。
とんとん整骨院では、症状の出ている場所だけでなく、神経の中の状態と神経の周りの環境の両方から、身体の状態を多角的に見極めることを大切にしています。













