中殿筋を鍛えたいのに、前もも外側ばかり効いてしまう時の「壁エクササイズ」

中殿筋に効かせたいのに、大腿筋膜張筋ばかり使ってしまう時

股関節を横に上げる運動は、中殿筋のトレーニングとしてよく使われます。ただし、人によっては前側の大腿筋膜張筋に力が入りすぎて、狙いたい中殿筋後部に入りにくいことがあります。

ポイントは、足で壁を押しながら外転することです。股関節を伸展方向に保ちやすくなり、大腿筋膜張筋の代償を抑えながら中殿筋後部を狙いやすくなります。

中殿筋は、股関節や骨盤の安定に関わる大切な筋肉です。

歩く時、片脚で立つ時、階段を上る時など、骨盤が横に崩れないように働きます。

そのため、股関節痛、膝の痛み、腰痛、歩行時の不安定感などを考える時に、中殿筋の機能を確認することがあります。

ただ、中殿筋を鍛えようとして股関節を外転させても、狙った場所にうまく入らない人がいます。

よくあるのが、股関節の前外側にある大腿筋膜張筋に力が入りすぎるパターンです。

まなぶ先生
まなぶ先生

横向きで脚を上げる運動って、中殿筋の定番ですよね。それでも代償が出るんですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

出ます。動きは合っていても、どの筋肉でやっているかは別です。そこを少し工夫したいんです。

なぜ大腿筋膜張筋に入りやすいのか

大腿筋膜張筋は、股関節の外転に関わる筋肉です。

同時に、股関節の屈曲や内旋にも関わります。

そのため、側臥位で脚を上げる時に、股関節が少し前に逃げたり、骨盤が崩れたりすると、大腿筋膜張筋が働きやすくなります。

患者さんとしては「ちゃんと脚を上げている」つもりでも、狙いたい中殿筋後部ではなく、前外側の張り感ばかり出ることがあります。

よくある代償

脚が前に出る、股関節が屈曲する、骨盤が後ろに倒れる、腰を反って脚を上げる。このあたりが出ると、中殿筋後部を狙ったつもりでも大腿筋膜張筋や腰部で代償しやすくなります。

そこで使いやすいのが、壁です。

足の裏で壁を押し続けることで、股関節を伸展方向に保ちやすくなります。

結果として、前側に逃げる動きを抑え、中殿筋後部に収縮を入れやすくする狙いがあります。

壁を使った中殿筋後部エクササイズのやり方

やり方はシンプルです。

ただし、シンプルな運動ほど、セットポジションが大切です。

  1. 壁際で横向きに寝ます。鍛えたい側の脚が上になるようにします。
  2. 上側の足の裏、またはかかとを壁につけます。
  3. 足で壁を後ろに押すように、軽く力を入れます。
  4. 壁を押す力を保ったまま、脚をゆっくり上へ持ち上げます。
  5. 脚は壁を擦るような軌道で上げ下げします。
  6. 股関節の前側や腰に強く力が入る場合は、回数や角度を下げます。
効かせたい場所

お尻の横からやや後ろ側に収縮感が出るのが目安です。股関節の前外側ばかり張る、腰が反る、痛みが出る場合はフォームを見直します。

臨床では「効いている場所」を確認する

エクササイズ指導で大切なのは、動作の見た目だけではありません。

患者さんがどこに効いていると感じているかも確認します。

もちろん、感覚だけで筋活動を完全に判断することはできません。

ただ、狙っている筋肉とまったく違う場所に張りや痛みが出ているなら、そのまま続けるより調整した方がいいです。

  • 脚が前に逃げていないか
  • 骨盤が後ろに倒れていないか
  • 腰を反って持ち上げていないか
  • 股関節の前外側ばかり張っていないか
  • お尻の横から後ろ側に収縮感があるか

大腿筋膜張筋を完全に使わない、という話ではありません。

身体は複数の筋肉で動きます。

ただ、今回の目的が中殿筋後部を狙うことなら、大腿筋膜張筋の過剰な代償を減らす工夫は意味があります。

自宅で行いやすいが、全員に合うわけではない

壁を使う方法は、自宅でも行いやすいのが利点です。

特別な器具がなくてもできるので、セルフエクササイズとして指導しやすいです。

一方で、股関節に痛みがある方、腰痛が強い方、しびれが出る方、術後や外傷後の方などは、自己判断で無理に行わない方がいい場合もあります。

中止の目安

運動中に鋭い痛みが出る、しびれが強くなる、運動後も痛みが残る、翌日に明らかに悪化する場合は中止し、状態に合わせた評価を受けてください。

エクササイズは、正しく行えば役に立ちます。

でも、形だけ真似しても、狙いと違う場所に負担がかかることがあります。

「何を鍛えたいのか」「どの代償を減らしたいのか」をはっきりさせることが大切です。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、運動をただ出すだけではなく、目的とフォームを確認することを大切にしています。

中殿筋を鍛えると言っても、患者さんによって必要な運動は違います。

股関節の状態、腰や膝との関係、歩行や片脚立ちでの安定性、痛みの出方を見ながら、どの運動をどの段階で行うかを考えます。

今回の壁エクササイズも、選択肢の一つです。

合う人にはとても使いやすいですが、すべての人に同じように出すものではありません。

狙いを決めると、エクササイズは変わる

中殿筋の運動は、ただ脚を横に上げればいいわけではありません。

どの線維を狙うのか。

どの代償を減らしたいのか。

患者さんがどこに効いていると感じているのか。

ここを見ながら、フォームを少し変えます。

壁を押しながら行う方法は、そのための小さな工夫です。

運動療法は、派手なメニューより、こういう地味な調整が効くことがあります。

瀬谷崎
瀬谷崎

同じ脚上げでも、どこで上げているかで意味が変わります。運動は形だけでなく、狙いと代償まで見たいですね。

参考

  • McBeth JM, et al. Hip Muscle Activity During 3 Side-Lying Hip-Strengthening Exercises in Distance Runners.
    PMC
  • Boren K, et al. Electromyographic Analysis of Gluteus Maximus, Gluteus Medius, and Tensor Fascia Latae During Therapeutic Exercises With and Without Elastic Resistance.
    PMC
  • Effects of Log-Rolling Position on Hip-Abductor Muscle Activation During Side-Lying Hip-Abduction Exercise in Participants With Gluteus Medius Weakness.
    PMC

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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