TFCC損傷を評価する。手関節尺側部痛の病態とフォベアサイン、尺骨突き上げの鑑別
セラピスト向け
手首の小指側、その尺側部痛を分ける
TFCC(三角線維軟骨複合体)は手関節尺側の安定機構で、損傷すると小指側の痛みや回旋・尺屈での痛み、クリックを生じます。外傷性と、加齢・尺骨突き上げによる変性とで対応が異なります。ECU腱炎や手根骨間靭帯損傷との鑑別、遠位橈尺関節(DRUJ)の不安定の評価が要点になります。
手首の小指側の痛みは、原因が複数あり紛らわしい部位です。臨床ではTFCC損傷を、病態・評価・鑑別・保存療法に分けて見ていきます。
病態:尺側の安定機構の破綻
TFCCは三角線維軟骨、半月様類似体、尺側側副靭帯、掌背側橈尺靭帯などからなり、手関節尺側の荷重伝達と遠位橈尺関節(DRUJ)の安定に関わります。転倒や捻り、ラケット・ゴルフなどで損傷する外傷性と、加齢や尺骨が橈骨より長い尺骨プラス変位(尺骨突き上げ)に伴う変性とがあります。
前腕の回内外やドアノブ・タオル絞りで尺側部痛が誘発され、DRUJの不安定があると荷重時の不安定感やクリックを伴います。外傷性か変性かで治療方針が変わるため、病歴と画像背景の把握が重要です。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎疫学と自然経過(期待値の設定)
外傷性は若年・スポーツや転倒を契機に生じ、変性は加齢で頻度が増します。安静と負荷管理で軽快する例がある一方、DRUJ不安定を伴う外傷性や尺骨突き上げが強い例は遷延しやすい傾向があります。
「負荷を抜くと軽快する例も多いが、不安定を伴う外傷性や尺骨突き上げは難治化しうる」という見通しを共有しておくと、適切な段階で画像評価や手術相談につなげられます。
評価:検査と経過を合わせて判断する
- フォベアサイン:尺骨頭と豆状骨の間のくぼみの圧痛
- TFCCストレス:尺屈+軸圧+回旋での疼痛・クリックの再現
- DRUJ不安定:掌背側の動揺の左右差
- ECUの評価:腱の圧痛、抵抗下の尺屈・背屈での痛み、亜脱臼
- 背景:尺骨プラス変位の有無(画像)、外傷歴
徒手所見は単独で確定できません。誘発の再現とフォベアサイン、DRUJの安定性、画像背景を組み合わせて判断します。
鑑別(外せないもの)
- 尺側手根伸筋(ECU)腱炎・腱亜脱臼:腱走行に沿う痛み
- 月状三角骨間靭帯損傷:手根骨間の不安定
- 尺骨突き上げ症候群:尺骨プラスによる尺側荷重障害
- 遠位橈尺関節症、ギヨン管症候群(尺骨神経)
- 手関節・尺骨遠位の骨折、豆状三角骨関節症
介入:保存療法を設計する
- 相対的安静と負荷管理:回旋・尺屈の負荷動作(絞る・ひねる)の見直し
- 装具:手関節やDRUJを支えるサポーター・テーピングで一時的に安定化
- 運動:前腕・手内在筋の安定化、DRUJを支える筋の協調
- 動作指導:荷重のかかる手のつき方・道具の使い方の調整
- 連携:不安定を伴う外傷性、尺骨突き上げ、難治例は整形外科(手の外科)へ
DRUJの明らかな不安定を伴う外傷性損傷や、尺骨突き上げが強い例は保存療法のみでは管理が難しく、手術(鏡視下デブリドマンや縫合、尺骨短縮術など)の適応評価が必要になります。徒手で無理に可動を広げず、不安定や難治の所見があれば手の外科につなぎます。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎尺側部痛を「ひとくくり」にしない
手関節尺側部痛は原因が多彩です。フォベアサインやDRUJの安定性、尺骨突き上げの背景を症状と結びつけ、外傷性か変性かを見極めて介入を組み立てます。不安定・難治は手の外科につなぎます。





