肩関節(前方)脱臼と反復性脱臼を評価する。Bankart(バンカート)病変と再脱臼リスク、apprehension(アプリヘンション)
セラピスト向け
肩の脱臼を、再発リスクから考える
肩関節は可動性が大きいぶん脱臼しやすく、外転外旋での前方脱臼が多くを占めます。初回脱臼でBankart(バンカート)病変などを生じ、とくに若年では再脱臼率が高く反復性脱臼へ移行します。整復と確定診断は医師の領域で、私たちは整復後のリハビリと、再発リスクを踏まえた肢位・筋制御の管理が要点になります。
肩が外れる・外れそうという訴えを、臨床では脱臼の病態・評価・鑑別・リハビリに分けて見ていきます。急性脱臼の整復は医師に委ね、私たちは前後の管理を担います。
病態:前方脱臼と再発のメカニズム
肩関節(肩甲上腕関節)は骨性の安定が小さく、関節唇・関節包・靭帯と筋で安定を保ちます。外転・外旋が強制されると上腕骨頭が前方へ外れる前方脱臼が起こりやすく、その際に前下方の関節唇が剥がれるBankart(バンカート)病変や、骨頭後外側のへこみ(ヒル・サックス)を生じます。
これらの構造的破綻が残ると再脱臼しやすく、とくに若年・スポーツ選手では再発率が高いことが知られます。再発を重ねると、より小さな力で外れるようになります。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎疫学と自然経過(期待値の設定)
前方脱臼が大多数で、若年男性・コンタクトスポーツに多くみられます。若年での初回脱臼後の再発率は高く、反復性に移行しやすい一方、年齢が上がると再発率は下がります(その分、腱板損傷の合併に注意)。
「若年は再発しやすく手術が選択肢になりうる。年齢が高い初回脱臼は腱板損傷の合併に注意」という見通しを持っておくと、適切に医療へつなげられます。
評価:不安定と合併を探る
- 受傷機転:外転外旋の強制、転倒・コンタクト
- アプリヘンションテスト/リロケーション:外転外旋での不安感の再現
- 全般的弛緩性(サルカス徴候など)、方向(前方が多い)
- 合併:高齢では腱板損傷、神経(腋窩神経)症状
- 再発の頻度・誘発肢位、日常・競技への影響
急性脱臼そのものの整復・確定は医師が行います。私たちは、整復後の不安定の程度や誘発肢位、合併の所見を評価し、リハビリと管理につなげます。
鑑別(外せないもの)
- 亜脱臼・動揺性肩関節(多方向不安定)
- 腱板損傷(とくに高齢の脱臼後)
- 上腕骨近位・大結節骨折(脱臼骨折)
- 腋窩神経損傷(三角筋の筋力・知覚)
- SLAP(スラップ)損傷、肩鎖関節損傷
介入:再発予防を設計する
- 急性期:整復は医師。整復後は固定肢位・期間を医療の指示に従い管理
- リハ:腱板・肩甲帯の安定化、段階的な可動と筋力
- 肢位管理:外転外旋など外れやすい肢位の制御、競技動作の調整
- 再発予防:固有受容・動的安定性のトレーニング
- 反復性・若年・高活動は手術(バンカート修復など)の適応評価を医師へ
急性脱臼の整復と確定診断は医師の領域で、無理な自己整復は神経・血管・骨折のリスクがあり危険です。脱臼が疑われれば、まず医療機関へ。整復後も、若年・反復性・高活動例では手術が選択肢になるため、リハビリと並行して医師と方針を共有します。脱臼後の腋窩神経症状(三角筋部の知覚・筋力低下)にも注意します。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎「外れた」だけでなく「再発リスク」で考える
肩関節脱臼は、整復後の再発リスクを年齢・活動性・不安定の程度から捉えることが要点です。整復と確定は医師に委ね、私たちはリハビリと肢位管理を担います。反復性・高活動は手術評価を医師へつなぎます。




